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輸血・細胞治療部

輸血・細胞治療部

病院の輸血治療が安全・確実・迅速に行われるよう血液製剤や自己血の保管・管理に最善を尽くし、各科での自己血輸血、さらに骨髄移植・末梢血幹細胞移植・血管新生療法などの「細胞治療」を実施・関与する部門です。各科からの輸血の依頼に対し、24時間体制で必要な血液製剤を確保し、血液型検査や交差適合試験を実施し、迅速・的確に各病棟や手術室に払い出しています。自己血採血には、専用の採血室において専用機器や専用システムを用いて実施し、患者さんの安全の確保と血液の適切な採取・保存に努めています。「細胞治療」も近年大きく発展しており、本院輸血・細胞治療部でも1990年代より実施、現在では不可欠の治療手技として多くの臨床科からの依頼に応えています。さらに2016年には、「細胞プロセッシング室(Cell Processing Center : CPC)」の稼動を開始し、現在は臍帯血や血小板を用いた先端的細胞治療の細胞処理を行っています。そして、輸血後状態連絡票、輸血バッグ回収などで輸血後の患者さんの副作用把握、その予防と治療への協力に力を入れています。また輸血・細胞治療委員会を開催し適正輸血の検証と啓発を行っています。これらにより各科の診療に寄与できるよう努めています。

概 要

輸血・細胞治療部の特徴

◎ 輸血業務の充実

  • 輸血業務の充実
    ● 輸血治療(同種血・自己血)
    ● 造血幹細胞移植
    ● 幹細胞などによる組織新生療法(血管新生療法等)
    ● 臍帯血輸注療法
    ● その他の細胞治療(「輸血・細胞治療センター」を目指して)
  • 輸血製剤の一元管理の実現
  • 24時間輸血検査・払い出し実施体制の実現
  • オンラインオーダリング
  • 輸血副作用調査の充実(輸血後状態調査票等)
  • 輸血後血液バッグ・輸血セットの回収・保存の実現
  • 輸血管理料Ⅰ取得・輸血適正使用加算取得、貯血式自己血輸血管理体制加算取得
  • 骨髄移植財団による同種末梢血幹細胞採取施設認定取得
  • 細胞プロセッシング室(CPC)の管理・運営

輸血・細胞治療部の体制

  • 人員
    部長と専任副部長の医師2名、専任技師1名、技師3名、看護師1名の計7名。
    (24時間の輸血検査・払い出しのため、日当直は検査部と協同で実施)
日常業務 月曜日~金曜日 午前8時30分~午後5時15分
日直業務 土曜日、日曜日、祝日、12/29~1/3 午前8時30分~午後5時15分
宿直業務 毎日 午後5時15分~午前8時30分

設備・施設等の紹介

▼ 輸血治療

輸血・細胞治療部のもっとも重要な業務である輸血治療は近代医療においては不可欠な治療手技であり、患者さんの救命において非常に重要な治療行為の一つです。高知大学医学部附属病院では年間25,000単位を越える輸血(同種輸血・自己血輸血)が行われています。当部では輸血治療を適切かつ安全に実施するために最善を尽くし、臨床側の要求に最大限応えるため、24時間体制で輸血検査・血液製剤の払い出しを実施する体制を取っており、診療端末からのオンラインオーダー化も実現しています。年間800単位前後の自己血輸血の採血や保存管理を専用機器を用いて実施し、2012年現在で手術時の赤血球輸血の25%以上が自己血でまかなわれています。
適切な輸血治療に関しては機会がある毎に啓蒙に努めており、勉強会の開催なども行っています。また2001年には適正な輸血療法や副作用、輸血実施法などに関して詳細に記載した「高知大学医学部附属病院輸血療法マニュアル」を作成、2006年改訂第3版以降はすべての診療端末で参照できるようオンラインマニュアル化を実現しています。
輸血療法における質問を院内・外を問わず受け付け適切な助言ができるように努力しています。また、輸血後の副作用に関する調査にも力を入れており、「輸血後状態調査票」の設定、使用済み輸血バッグの回収と保存などを実施しています。これらのデータは「輸血・細胞治療委員会」において統計的検討とその成立機序や予防手技の検討に利用し、さらに安全な輸血の実現を図るように努めています。
さらに、「輸血・細胞治療委員会」の開催などにより、適正輸血の検証と啓発の活動を行っています。それらの結果、2011年3月には本院は輸血管理料Ⅰの認定を取得しました。 これは本院における輸血・細胞治療の質の高さ、ひいては医療全体の質の高さを示す指標であると言えます。

▼ 造血幹細胞移植

「細胞治療」の一環として、白血病など悪性腫瘍を始めとする各種疾病に対する造血幹細胞移植を推進しており、幹細胞の採取を実施あるいは実施の補助を積極的に行っています。特に末梢血幹細胞に関しては1995年以降年平均40回程度の採取を行い、専用の超低温冷凍庫により幹細胞の保存も行っています。
自家末梢血幹細胞移植に加え同種末梢血幹細胞移植の実施例も増加し、非常に有効な治療法が提供できているものと考えます。高知大学医学部附属病院は骨髄バンクの認定施設であり、骨髄バンクからの移植やバンクドナーとしての骨髄採取の実施が増加しています。輸血・細胞治療部では骨髄造血細胞の採取、濃縮や保存処理を実施・補助しており、幹細胞処理に関する臨床からの要望に最大限応えるよう努めています。
さらに2011年2月には骨髄バンクの「非血縁者末梢血幹細胞採取施設」に、四国で初めて認定されました。今後は臍帯血幹細胞などの採取及び移植例も増加することが期待されており、造血幹細胞移植はさらに発展を遂げつつあります。

▼ 幹細胞などによる組織新生療法

「細胞治療」 の一つとして、骨髄や末梢血に存在する多機能幹細胞や、血液細胞を用いて、血管を始めとする組織の構築に用いる治療法です。当部でも院内倫理委員会の認可のもと第二外科とともに幹細胞や末梢血単核細胞による下肢の静脈再生療法を実施しています。この治療法はさらに神経などの組織再生、末梢血や臍帯血の幹細胞の利用、心臓や脳の血管再生への応用など、大きく発展することが期待されています。

▼ その他の細胞治療

クリーンルームを備えた「細胞プロセッシング室(CPC)」が稼動し、細胞に処理を加え治療的に体に戻すことが可能となりました。すでに小児の神経疾患に対する臍帯血輸注療法や、多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)による組織新生療法などの細胞処理を実施しています。
今後も、これまで治療法のなかった多くの疾患について改善・治癒が期待できる臨床応用の検討と実現を目指します。このように、「細胞治療」は当部のもう一つの中心的業務として発展を続けています。 今後、先進的治療のための「輸血・細胞治療センター」設置を目指し、全診療科での治療への寄与を一層充実・発展させる所存です。