地球環境変動研究

白鳳丸KH10-7船上レポート
(2010/12/14-2011/1/21)

白鳳丸KH10-7次航海が始まりました.高知大学からは池原実(准教授),香月興太(研究員),岡本周子(大学院生)の3名が参加しています.船から届いた航海の様子をお知らせしていきます。

調査海域の概要はこちら

<1月17日>・・・「航海無事終了,そして再び “Southern Ocean”」

32日間の南大洋航海を終えて,フリーマントル港に無事寄港しました.

ケルゲレン海台での怒濤の海洋物理系観測をほぼ予定通り実施した後に1週間弱かけて北上してきたのですが,その間,オーロラが見えたり(なんと,高知大組は誰も見ていない...),水平線に沈むきれいな夕焼けが見えたり,甲板で野球をしたりと,これまた低気圧の合間を縫って比較的穏やかな海況での帰途となりました.

帰途の間,我々は,コンラッド海台で採ったコアのサンプリングをほぼ完遂.3年前の教訓を生かした作戦が成功です.きっと素晴らしいデータが出ることでしょう.

我々コアチームは一足早く18日に白鳳丸から下船して,次の航海に乗船する東大の院生達と合流して,1泊2日の巡検に出かけました.

下の写真は,巡検の途中で立ち寄った「Cape Leewwin」で撮ったコアリングチームの面.Cape Leewwinは,オーストラリア大陸の南西端に突き出た半島にある岬で,実はここは南大洋(Southern Ocean)とインド洋の二つの大洋が出会う岬というのがウリだったのだ.そう言う意味では,航海を締めくくる上で最高の巡検ポイントとなりました.

私は,次に南大洋に行くのはいつになるだろうなあ,などと考えながら,しばらくSouthern Oceanを眺めていたのでした.Indian Oceanもちらっと見ましたけどね.(池原)

<1月7日(金)>・・・「海氷とブリザードに阻まれつつも」

気温,水温ともにマイナスの世界から,プラスの世界へ戻って来ました.

我々の第2の観測海域であったリュツォホルム湾沖は,なかなか厳しい条件での観測となりました.3年前の航海よりも約一ヶ月早い時期に来ることになったため,海氷がまだ融けておらず,結局,第一目標だった前回コアを採った地点までは南下出来ませんでした.おまけに,融けだした海氷がパッチ状昭和基地があるリュツォホルム湾沖の観測海域を離脱して,次の観測域であるケルゲレン海台を目指しています.に漂流しているので,南も北も氷に囲まれてしまうこともあり,観測地点を決めるのも一苦労.なにせ白鳳丸は砕氷船でも耐氷船でもないので,観測中に氷に囲まれてしまっては大変です.

また,風速20m/sを超えるブリザードになることも度々あって,船は大揺れ,甲板には雪が積もり,観測時間がどんどん無くなっていきます.ここで採るコアを修論で使う予定の岡本さん(M1)は自分で晴れ女と公言していたのですが,実際にはブリザード娘だったようです....そんな厳しい気象条件の中でも,なんとか1本だけピストンコアを採取することに成功しました.そのときのコアも海底から船上に引き上げて来たときには,コアラー(ステンレスパイプ)がぐにゃりと“く”の字に曲がって上がってきたのです.ダメだったか!?と思いつつ中のコアを頑張って回収したら,一応8mを超える長さのコアが確保できていました.最後の最後でなんとか最低限のレベルはクリアしたなあと,ホッとしてリュツォホルム湾沖を後にしました.(池原)

<1月3日(月)>・・・「南極海で迎える新年」

新年を南極海で迎えました.私にとっては白鳳丸船上で過ごす3 回目の年越しです.ちなみに3回とも南極海.

地球物理系の航走観測中のため大きな観測はなく、比較的のんびりとした大晦日と元旦となりました.大晦日の晩,船内テレビでは1年前の紅白歌合戦が船内時間に合わせて流れ,一応年末気分を醸し出します.船内各所には,しめ縄や鏡餅も.

この航海では,通称「3研」という第3研究室が研究者のたまり場兼宴会場になっているので,大晦日も酒とつまみを手にぶらぶらと皆が集まってきました.別会場では年越しマージャンも.で,酔っぱらい達がカウントダウンして新年を迎えました.年によっては, ブリッジが汽笛を鳴らしたり,テレトーク(船内通話)で研究室とブリッジとで「あけましておめでとうございます」のやり取りをしたり,いろんなパターンがありましたが,今回は特に無し.そう言う意味では静かな年越しです.

船上でも,元旦には正月らしくお雑煮やおせち料理が出ます.ビールと一升瓶も朝から出てきたので,朝からきちんと酒を飲んでほろ酔い気分で一日がスタート.

南緯60度を超え,海水が氷ってできた海氷がたくさん見られるようになってきました.つい数日前までこの辺りは海氷にびっしり覆われていたのです.夏になってそれらが溶けだして海が開いていくので,その開いた海に白鳳丸は進入していきます.今回はどこまで南下できるでしょうか....我々の狙っている地点はまだまだ海氷に覆われています.(池原)

<12月28日(火)> ・・・「暴風圏での観測成功」

 吠える40度(roaring forties)
 狂う50度(furious fifties)
 叫ぶ60度(shrieking sixties)

南緯40度から60度にかけての南大洋は,いわゆる「暴風圏」と呼ばれています.常に強い偏西風が吹いて巨大な低気圧が次から次へと東へ流れていく場所です.

今回の私たちの航海のターゲット海域の一つは,南緯53度付近にあるコンラッド海台で,ここはまさに暴風圏まっただ中.しかし,普段の行いが良かったとみえて,我々が当海域に入るタイミングで低気圧が東へ過ぎ去り,なんとか観測ができる海況となりました.

まずはコンラッド海台での最優先サイトで,ピストンコアとグラビティコアをゲットし,現在は反射法地震探査を行っています.この付近には,前回(3年前)の調査でマッドウェーブという特殊な海底地形が存在していることが判明しており,今回はそのマッドウェーブの分布と堆積プロセスを解明するのがもう一つの目的です.しかし,この海域でこれほど順調に観測ができるとは予想外. 貴重な試料とデータが次々と手に入ってきています.

そういえば,27日にはかなり立派な氷山と遭遇しました.

12月30日にはこの海域を離脱して,昭和基地のあるリュツォホルム湾の北に移動します.まだまだ海氷が広がっているので,どこまで南下できるかが勝負所です.(池原)

<12月27日(月)>

曇ってはいるものの朝から穏やかな波模様.「絶好のピストン日和だ」と思ったのも束の間、ピストン投下の時間当たりから雲行きが怪しくなり始め,ピストン回収時には雨になり,続くストリーマー・エアガン投下作業の時間には強風と共に雨が叩きつけてくる悲惨な環境に・・・.

ストリーマーの投入作業というのは,大体はウインチで繰り出すケーブルが変な動きをしないようにケーブルに手を添えておくだけという単純な作業です....が,これは高緯度域だと船内作業でもっとも過酷な労働と化します.

ストリーマーケーブルの特徴の一つはとにかく長いことです.投入が終わるまで大体1,2時間かかるわけですが,その間ずっと体を動かさずに濡れたケーブルに手を当てておくわけです.投入時の気温2度,天候強雨,風速14 m.凍えます,冷えます,痛みます.

と,こう書くと僕がいかにも寒さに耐えながら作業していたようですが,実は投入作業の3分の2程度の間,エアコンの効いた船内で別の作業をやっていました.船内作業をやっていたのは僕を含むわずか数名なのでなんだか後ろめたい気持ちにさせられます.

まあそれはさておき,ピストンコアは大!成功!でした.コア長1,052 cm,前回取れなかった氷期の堆積物もバッチリ取れてました.明日からの分割作業が楽しみ.この調子で最後まで行きたいものです.

とりあえず,鳥の写真を1枚添付します.
アホウドリ君です.
種名はわかりません(Royal? Wondering? Albatross).
鳥類図鑑を忘れてきたのが痛い。(香月)

<12月20日(月).>

白鳳丸は12月17日にモーリシャス・ポートルイスを出港し,一路南大洋を目指しています.天気は快晴,べた凪のインド洋を滑るように南下中.現在南緯34度.モーリシャスの気温が30度近くあったのですが,すでに20度位に下がってきています.

KH10-7次航海には,総勢22名の研究者と技術員が乗り込み, 大きく分けて4つの研究課題(海洋物理系,化学系,海洋地質系, 地球物理系)を達成するための観測調査を共同で行います.初めて研究船に乗る大学院生もいるし,他の分野の観測方法を知らない人 もいるので,19日午後にはセミナーを行い,今回の航海で行う主な観測の概要をレクチャーしながら観測準備を進めています. このように,自分の専門ではない海洋観測を実地で覚えていくところが,白鳳丸航海の良いところです.

我々コアリングチームは,まずグラビティコアラーを組み上げ,採泥の準備を行いました.22日に最初の採泥地点に到着します. (池原)