◆医学部外科学講座の谷岡信寿医師(現所属:幡多けんみん病院)、前田広道講師、宗景匡哉助教、上村直医師(現所属:高知赤十字病院)らの研究チームの論文が、英文国際雑誌「Artificial Organs」に掲載されました

2023年7月14日

人工膵臓を用いた消化器外科手術における周術期血糖管理に係る重要なデータを提示

 

 医学部外科学講座の谷岡信寿医師(現所属:幡多けんみん病院)、前田広道講師、宗景匡哉助教、上村直医師(現所属:高知赤十字病院)らの研究チームの論文が、2023年6月出版の英文国際雑誌「Artificial Organs」に掲載されました。

 本研究チームは、消化器外科手術を受ける患者における周術期(※1)血糖管理の最適な目標範囲を決定するために、Randomized Control Trial(※2)を実施しました。消化器外科手術を受ける患者128名を、厳格な血糖コントロール群(80~110 mg/dL)と中等度の血糖コントロール群(110~140 mg/dL)の2群に分け、周術期のデータを解析しました。血糖管理には、Closed-loop typeの人工膵臓(AP)を用いることで、血糖コントロール時の低血糖及び血糖変動の影響を軽減しました。2群を比較したところ、IL-6などの炎症性バイオマーカー(※3)、合併症率、手術死亡率及び入院期間について有意差を認めませんでした。このことから、消化器外科手術を受ける患者にAPを使用する場合、厳格な血糖コントロール群と中等度の血糖コントロール群の両方が許容可能な血糖コントロール範囲であると結論付けられ、今後の周術期血糖管理への重要なデータが提示されました。

 医学部外科学講座では、長年人工膵臓を用いた研究に取り組んでいます。その取組が評価され、同誌の表紙(Cover Image)に、2012年当時外科学講座の教授であった花﨑和弘附属病院長が人工膵臓療法を併用した肝胆膵外科手術で執刀している様子をデフォルメされたものが採用されました。

 

Artificial Organs - 202306 - Cover Image

 

<論文名>:What is the optimal range of glycemic control for non-diabetic patients undergoing gastroenterological surgery? A single-center randomized controlled trial using an artificial pancreas

<和 訳>糖尿病を有しない患者における消化器外科周術期の至適血糖コントロール値に関する研究ー人工膵臓を用いた単一施設ランダム化比較試験ー

 論文の詳細はこちらから

 

 

(※1)周術期…手術が決定した外来から入院、麻酔・手術、術後回復、退院・社会復帰までの一連の期間のこと。本論文では、手術中、手術後を意味する。

(※2)Randomized Control Trial…ランダム化比較試験。ある試験的操作(介入・治療など)を行うこと以外は公平になるように、対象の集団を無作為に複数の群に分け、その試験的操作の影響・効果を測定、明らかにするための比較研究のこと。

(※3)バイオマーカー…病気の進行状態や治療の効果を測るための、化学的、物理学的、または生物学的指標のこと。

 

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