◆医学部眼科学講座の岸本達真助教が、令和4年度日本眼科学会の学術奨励賞を受賞しました

2023年7月14日

 医学部眼科学講座の岸本達真助教が、令和4年度日本眼科学会の学術奨励賞を受賞し、令和5年4月6日から9日まで東京国際フォーラムにおいて開催された第127回日本眼科学会総会で授与式及び記念講演が行われました。

 この賞は、眼科学の進歩発展を図り、優れた研究者を助成、育成する目的で、優秀な研究業績を発表した若年医師に日本眼科学会から贈られるものです。

 白内障などの手術後に生じる細菌感染症である術後眼内炎は、不可逆性の視機能の低下を来す可能性のある重篤な疾患です。腸球菌による眼内炎は視力予後が不良であり、近年薬剤耐性菌による眼内炎の報告も増加しています。

 バクテリオファージ(ファージ)は細菌特異的に感染し、溶菌(※1)させるウイルスです。岸本助教は、新規の腸球菌ファージ3株を分離し、腸球菌眼内炎に対するファージ療法の効果について検討しました。これらのファージは形態学的解析およびゲノム解析の結果、Kochikohdavirusの新規メンバーであると分類され、in vitro(※2)において腸球菌臨床分離株とバンコマイシン耐性腸球菌を含めた広範囲の腸球菌を溶菌しました。マウス腸球菌眼内炎モデルにおいてファージを硝子体に投与すると、眼内の腸球菌生細菌数、炎症細胞浸潤が低下しました。これらのファージは薬剤感受性菌・耐性菌に関わらずマウス眼内炎に対する治療効果があり、抗菌薬非依存性の新規治療法となる可能性が期待できます。

 岸本助教は、眼炎症疾患に対する新規治療開発のために、眼科手術において最大の合併症である眼内炎を制御することを目的として、腸球菌に対してより有効であるファージを新たに分離し、その有効性を確認しました。この研究が高く評価され、今回の受賞につながりました。このことは、今後の臨床応用も期待されています。

 

日本眼科学会学術奨励賞受賞

 

<論文名>In vitro and in vivo evaluation of three newly isolated bacteriophage candidates, phiEF7H, phiEF14H1, phiEF19G, for treatment of Enterococcus faecalis endophthalmitis. Microorganisms 9 : 212, 2021.

<和 訳>新規に分離された3つのバクテリオファージΦEF7H、ΦEF14H1、ΦEF19Gの眼内炎治療に対するin vitroおよびin vivoでの評価

 

(※1)溶菌…バクテリオファージが細菌内で増殖し、細胞壁の崩壊を伴って細菌の細胞が破壊され、死滅する現象。

(※2)in vitro…試験管や培養器等の中で、ヒトや動物の組織を用いて体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応を検出する試験のこと。

 

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