公開日 2026年1月9日
がん発症に関わるマイクロRNAの産生を左右する「RNA修飾」の制御メカニズムを発見
医療学系基礎医学部門の樋口琢磨助教、坂本修士教授らの研究成果が、欧州生化学会連合が刊行する学術誌「FEBS Open Bio」に掲載され、令和7年12月6日に電子版が公開されました。
マイクロRNA(miRNA)は機能性小分子RNAであり、がんをはじめとする様々な疾患において発現変動が見られることから、疾患マーカーや治療標的としての活用が期待されています。近年、miRNA初期転写産物(pri-miRNA)のアデニン塩基がメチル化修飾(m6A修飾)を受けることで、miRNA生合成の促進につながることが報告されました。pri-miRNAのm6A修飾は、メチル基転移酵素METTL3/14によって行われます。一方で、METTL3/14によるpri-miRNAのm6A修飾制御機構に関しては、不明な点が多く残されています。
本研究グループではこれまで、二本鎖RNA結合タンパク質であるNuclear Factor 90(NF90)とその結合パートナー NF45の複合体(NF90–NF45)がpri-miRNAに結合し、miRNA生合成を負に制御することを見出してきました。本研究では、NF90–NF45と高い結合能を有するpri-miRNAにおいて、NF90-NF45が当該pri-miRNAのm6A修飾を阻害することを明らかにしました。
本研究では特に、NF90–NF45との結合性が高いがん抑制性miRNA「miR-7」や「miR-186」の初期転写産物(pri-mir-7-1、pri-mir-186)に着目し解析を行いました。その結果、pri-mir-7-1やpri-mir-186がMETTL3/14によるm6A修飾を受けること、そしてNF90–NF45が当該m6A修飾を有意に阻害することを示しました。一方で、NF90–NF45との結合性が低いpri-mir-200aに対しては、NF90-NF45によるm6A修飾阻害効果が認められませんでした。これらの知見より、「NF90–NF45がpri-miRNAに結合することで、pri-miRNAへのMETTL3/14のアクセスを妨げ、その結果m6A修飾を阻害する」という分子機構モデルが想定されました。
NF90–NF45は様々な組織由来のがんにおいて発現増加が報告されており、本研究成果はがん発症に関連するmiRNA発現変動の機序解明に寄与することが期待されます。

<論文情報>
タイトル: Domain associated with zinc fingers-containing NF90-NF45 complex inhibits m6A modification of primary microRNA by suppressing METTL3/14 activity
著者: Takuma Higuchi, Shunsuke Morioka, Keiko Morisawa, Kazutsugu Matsukawa, Shingo Ashida, Takeshi Suzuki, Shuji Sakamoto
掲載誌: FEBS Open Bio
DOI: https://doi.org/10.1002/2211-5463.70173
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