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医学生や初期研修医のなかには、なんとなく血液内科に興味があるのだけれど、難しそうで自分にできるかちょっと心配、という人がおられるかもしれません。私(小島研介)がそうでした。血液内科は難しそう、と思ったのには、2つの理由がありました。ひとつは、画像や内視鏡をもとに組織を採取して病理診断を待つ、というシンプルな診断プロセスが、なかなか通用しないこと、もうひとつは、肉眼でわからない病気は手術やカテーテルのような物理的なアプローチでは治せないので、治療のイメージが掴めなかったことでした。白血病の遺伝子異常がクローニングされはじめた、まだ分子標的治療という概念もなかった頃のお話です。
近年、固形がんの領域では、がん遺伝子パネル検査・ゲノム医療が話題となっています。今のところ、遺伝子異常の検出は有効な分子標的治療に必ずしも結実しないので、固形がんのゲノム診療はこれからといえます。一方、血液内科では、この20年間でゲノム医療がずいぶんと進歩しました。
例えば医学生の教科書レベルですと、たとえばBCR-ABL1遺伝子融合はt(9;22)染色体転座に認められ、それは1:1対応で慢性骨髄性白血病の診断となります。治療はというと、BCR-ABL1阻害剤による分子標的治療です。PML-RARAは、t(15;17) から急性前骨髄性白血病の診断に繋がり、治療薬はRML-RARA複合体を分子標的とするATRA・ATOです。
昔は難しそうにみえた遺伝子異常や染色体異常も、今や血液サンプルで、ビジュアルに、そして多くはパネル検査として、しかも保険診療で検査できるようになりました。私は絵画ですとかイラストが好きなのですが、FISH検査で緑色にラベルされた遺伝子と赤色にラベルされた遺伝子が融合して黄色に光るさまをみますと、意識が一瞬医学から離れて、美しさに息をのむことがあります。
最近では、イブルチニブ、ベネトクラックス、ブリナツモマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、エミシズマブ、CAR-T療法など、分子標的が明確なFirst-in-classの薬剤が次々と開発され、血液内科は一足早く最新医学の果実を手にしています。なぜ治療が効かなくなるのか、どうすればそれを乗り越えられるかも、他のがんに先駆けて解明が進んでいます。私の医学研究のライフワークであるp53シグナル異常は、臨床経過中に発生する(二次異常といいます)治療が効かなくなる原因のひとつですが、耐性克服のため、世界中で研究がなされています。もちろん有効な治療薬がない血液疾患もまだ数多くありますから、研究により解明してゆくべきことは山積していますが、何がわからないのかわからない、という時代ではなくなりました。
ですから、血液学は医学の進歩が早いし、厳しい病気が多いので楽ではないけれど、人間愛とともに、探究心をもって学ぶ姿勢をもったひとなら、血液内科の医師・研究者はきっと天職になると思います。

以下のような医学生・研修医は、とくに血液内科が向いているかもしれません。

1.診断から治療まで患者さんを診てあげたい
内科には診断をしたら治療は外科に任せる領域もあります。血液内科では診断から治療まで完結します。診断に基づいて治療方針を考え、それを自分の手で実行するので、やりがいがあります。また、血液疾患では長期にわたる治療・管理が必要なことが多いので、短期の関わりではなく長期的視野で診療をおこなうことができます。
2.単一臓器ではなく、全身を診れる内科医師になりたい
内科はもともと、「なんでも内科」というように全身を診ていました。医学の進歩とともに専門的知識が必要になりましたが、「私の専門の単一臓器は大丈夫です。あとは他の医師に聞いてください」、というような局所臓器診療に終始する内科医ばかりですと、とても困ります。 血液内科には多様な患者が紹介されてきます。例えば、リンパ節腫脹は多くは血液疾患ではない原因でおきますから、私たちは必要に応じて全身性エリテマトーデスやサルコイドーシス、結核や急性HIV感染症、固形癌などの鑑別までおこなっています。 ほとんどの病気は血液検査異常を伴うこともあって、どの科に紹介したらよいのかわからないという市中内科医からの患者さんも、困って血液内科にお願いします、ということも多いです。さらに血液疾患治療は、しばしば強い副作用をもつ全身治療であるために、全身臓器に影響を与えます。 そのため、血液内科医は患者さんを総体として診療する豊富な経験を有します。一般内科学の本質が詰まった科です。
3.体力もしくは手先には自信がないが、根気はある
体力や手先の器用さより、優しさと探究心、根気強さが診療には大切です。私が准教授を務めていた米国MD Andersonがんセンター白血病科では、70歳を優に超えた血液内科医がおられます。女性医師も多いです。
腕力ではなく知性で勝負できる ― 日本でも女性血液内科医が増えている一つの理由かと思います。
4.実地診療で新しい発見をしたい
血液内科では科学的診療をサポートするツールへのアクセスが容易なので、市中病院からでも診療を通して新しい発見ができます。私は愛媛県立中央病院に在職した4年間で、第一著者として症例報告・原著論文を計11本、英米独日の英文誌に報告できました。 施設は何もしてくれませんが、優れた指導者のもと、自分の実力をしっかりと磨き、患者さんを一例一例丁寧に診察していれば、数多くのチャンスはあります。
5.臨床に直結した研究をしたい
他の領域とは異なり、血液内科では血液検査などによって治療対象の細胞が入手しやすく、臨床に直結した研究がしやすいという特徴があります。分子標的治療が血液内科領域で急速に発展した理由の一つです。私は現在も米国MD Andersonがんセンター白血病科 分子血液治療部と共同研究をおこなっていますから、医局員のキャリア・パスに応じて留学のアクセスがあります。
6.臨床に携わりたいが、病理学にも興味がある
悪性リンパ腫などの血液疾患の病理診断技術は、病理学で大きく進歩している分野のひとつです。遺伝子やタンパク発現異常もかなりわかるようになっておりますが、精度の高い病理診断には臨床情報が重要なので、我々と病理医の接点は多いです。血液病理研究で学位をとったり病理医と一緒に症例報告したりも、よくあることです。トップクラスの血液病理医・研究者とのコネクションがありますので、希望者には国内外留学もサポートいたします。
7.血液と免疫を入れ替えるダイナミックな造血幹細胞移植に携わりたい
造血幹細胞移植では、造血細胞だけでなく免疫細胞も置き換えます。通常の臓器移植とは一線を画する点で、CAR-T細胞の治療コンセプトの端緒ともいえます。分子標的治療の発展で化学療法とともに活躍の場面が減りつつある移植治療ですが、引き続き治療の選択肢であり続けています。
医学知識や診療技術は、書物や文献、優れた血液内科診療医のもとで働くことで得ることができます。しかし、血液学を探求し診療を通して発見する「探究心」は、実際に枠を越えて冒険し、プロフェッショナルとして実績を積み上げてきた先人探求者のもと、一定期間診療・研究をおこない、肌で感じることで育まれてゆきます。高知大学血液内科は創設期にあり、まだ若い組織ですが、そのようなスタッフが集まっております。さらに大学組織は、医師の経験を広げるとともに、将来に向けてのキャリア形成にチャンスを与えてくれます。

教授 小島研介

Explore, dream, and discover!

Mark Twain (1835–1910)

先輩からのメッセージ

小笠原史也先生(2015年 高知大学医学部卒業)

1.仕事のやりがいを感じるときは?
抗癌剤治療においては、副作用コントロールが重要です。些細な変化を見逃さず対応出来ていれば、患者も医療者も穏やかに過ごすことで出来ます。何事も無く退院まで進んだときにやりがいを感じます。
2.職場の環境はいかがですか?
人数が少ない分、スタッフの距離が近いです。明るくアットホームな職場です。
3.今後の目標を教えてください。
血液専門医の取得です。
4.入局希望者に向けてメッセージをお願いします。
日本人の2人に1人が癌となる時代です。家族や親しい友人が癌となった際に助けられる存在になってみませんか。入局後、すぐに即戦力となれるように指導します。また抗癌剤治療の特性上、定時に帰宅することも比較的容易で、女性の方にもお勧め出来ます。
一緒に頑張りましょう。
小島先生のイラスト
見学など随時お受けしています。
ご興味のあるかたは、
血液内科学講座医局(im82@kochi-u.ac.jp)まで。

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