高知大学先端医療学推進センターは、分裂期の染色体制御に関わるタンパク質リン酸化修飾に関する研究成果を発表しました。
本研究は、高知大学医学部先端医療学推進センター 太田 信哉 テニュアトラック特任助教のグループと、京都大学大学院薬学研究科 製剤機能解析学分野との共同研究で行われました。今論文で太田特任助教は筆頭著者と責任著者の両方を務めています。誌面掲載に先駆けて電子版が2016年8月9日付けで公開されました。
現在、多くの抗がん剤のターゲットにもなっている細胞周期を動かすタンパク質リン酸化修飾の包括的な理解は、効果的なガン治療を目指す上で必要不可欠です。特に細胞周期のクライマックスと言える分裂期における染色体動態を制御するリン酸化修飾の重要性は疑いを挿む余地もありません。しかし、現在知られているリン酸化修飾を介した制御機構だけでは染色体動態の全体像を理解することは困難であり、未知の制御機構が複数存在すると考えられます。そこで、本グループでは、それらの機構に近づくことを目的として染色体上の未知の分裂期特異的リン酸化を網羅的に同定することを試みました。
チタンを利用したHAMMOC(Hydroxy Acid-Modified Metal Oxide Chromatography)法を用いて、精製された分裂期染色体からリン酸化ペプチドのみを濃縮し、分裂期染色体のリン酸化部位の決定を行い、その結果4,274のリン酸化部位を決定することができました。さらには同定したリン酸化が、どの程度分裂期に特異的であるかを調べるために、分裂期の細胞から単離した複合体と、間期から単離したそれとをSILACを用いて比較しました。その結果2,761種類のリン酸化ペプチドについて分裂期と間期の間で起こる増減を調べることができ、351の分裂期特異的リン酸化サイトと167の分裂期特異的脱リン酸化サイトを決定するに至った。その詳細を見てみると、CENP-TやINCENPといったセントロメアタンパク質やKi-67やコンデンシン、TopoIIaなどが分裂期特異的に高度にリン酸化されていることがわかりました。逆に、DNA複製や組換え機構に関わるタンパク質群は分裂期において特異的に脱リン酸化されていることを示した。これらの分裂期特異的なリン酸や脱リン酸化は、染色体動態の制御機構を知る上で大きな足がかりとなります。
◆発表雑誌
Identification of mitosis-specific phosphorylation in mitotic chromosome-associated proteins
Journal of Proteome Research in press
DOI: 10.1021/acs.jproteome.6b00512
著者:太田 信哉, 木村 迪子, 高木 俊輔, 虎本 伊代, 石濱 泰
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