高知大学先端医療学推進センターは、細胞の癌化を抑制する細胞分裂時での正常な紡錘体形成と維持のメカニズムを発見しました。
本研究は、高知大学医学部先端医療学推進センター太田信哉テニュアトラック特任助教のグループと国立遺伝学研究所、英国エジンバラ大学の共同研究で行われ、細胞生物学専門誌「Molecular Biology of the
Cell」にて論文を発表いたしました。
◆研究成果の概要
CENP-32は分裂期のスピンドルに局在するタンパク質で、その欠失は、中心体のスピンドルからの離脱を促すことが分かった。この欠失細胞では、中心体離脱後のスピンドルが染色体整列の機能を有していることから、我々はこれをAnastral
スピンドルとし、その形成と維持の機構を調べることとした。
CENP-32の欠失細胞においてスピンドルからの中心体離脱後に、中心体あるいは中心体周辺に局在するタンパク質がどのように振る舞うのか、g-Tubulin, Pericentrin,
CDK5RAP2, AuroraA, NuMA, CG-NAPなどを認識する抗体を用いた免疫染色で観察し、離脱した中心体にはCG-NAPとNuMAが局在しないことを見出した。一方で、NuMAに関しては中心体が離脱したスピンドル極には正常に局在していた事実は、CENP-32
の欠失細胞では中心体の成熟に異常が起こっていることと、中心体が離脱してもNuMAの作用でスピンドルがその極を維持することを示している。実際にCENP-32とNuMAを同時に欠失させると、機能的なAnastralスピンドルは形成されなくなる。加えて、中心体のスピンドル極からの離脱は、Augmin依存的に引き起こされることも明らかにした。また、透過型電子顕微鏡を用いたCENP-32の欠失細胞の分裂期中心体の構造観察より、星状微小管が著しく短くなることと、冷却処理を用いた微小管脱重合後の再伸長実験より、CENP-32
の非存在下では星状微小管の成長が阻害されていることが示された。 これらのモデル実験から、CENP-32は星状微小管を正確に伸長させ、正常なBipolarスピンドルを形成するのに必須である。また、その欠失は星状微小管の伸長に異常をきたすことで、Anastralスピンドルの形成を促すことが分かった。
動画1:コントロール細胞の分裂期(α-tubulin, Green; Hhistone H2B, Red)
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