大学紹介

平成28年度 高知大学大学院入学式告辞

 高知大学大学院人間自然科学研究科へ入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。
 皆さんは、大学で高等教育を受けられ、これからさらに最先端の研究を遂行するために大学院に進学されました。
 研究とは、豊富な知識をもとに、未だ解決されていない領域を発見し、それを明らかにするための仮説を立て、実験や調査を通して仮説を証明する作業であります。星明かりを頼りに小舟で大海にこぎ出す探検隊の行為にも似ており、時には、リスクを抱え、悩み、動きがとれない状況に陥ることもあるでしょう。
 研究を遂行するためには、これまで以上に学び、優れた知識と技術を修得することはもちろんのこと、豊かな想像力と発想力、広い視野を持ちながら小さな点をも識別できる鳥瞰力、調査力と実行力、そして成果をまとめて論文に仕上げる文章力が必用とされます。同時に、指導教員や研究仲間との真摯で深い議論の繰り返しが求められます。研究の過程には、失敗や計画の練り直しを伴うのが常であり、失敗から学び取ったことにこそ、研究の意義があるといっても過言ではありません。
 研究者には、失敗を成功の種に転化させる分析力と評価力、そして継続力が求められます。それ故に、研究をやり遂げた先達の多くは、学部の学びとは比較にならない、社会人、そしてリーダーに求められる高い能力を身につけているのであります。
 さて、大学院では、皆さんの自由な発想のもとで、自由に研究することが保証されております。しかし、自然科学は、産業との結びつきが強い科学技術に大きくシフトし、近代社会の発展に大きく貢献してきた一方で、哲学的要素を失った結果、時には、人類に深刻な健康被害をもたらし、開発と経済発展の名のもとに自然破壊や環境破壊を拡大させており、一歩間違えれば人類を、そして世界を瞬時に崩壊させる危険性さえ孕んでおります。だからこそ、哲学的要素を含む人文社会科学による科学・技術のコントロールが必要であり、人文社会科学的研究がこれまで以上に重要になってくるのです。そして、第三者の審査を受けない研究成果は、研究者の自己満足に過ぎず、「益無くして害多し」となることさえあるということを、胸に深く刻んでおいて頂きたい。豊かな教養と判断力、自制心を身につけ、これまで以上に、真摯な姿勢をもって学んで下さることを願っております。
 画期的な研究は優れた観察力と常識を越えた発想に寄り添ってくるものです。あり得ないと感じる事柄を安易に否定するのではなく、むしろ前例がない、あるいはあり得ないような非常識の中にこそ、新たな真実があり、イノベーションのシーズがあるのです。
 研究の基本が、研究者自身の自由な発想と知的好奇心にあることは、論を俟たないのでありますが、20年、30年以上先を見据え、将来、自身の研究成果が持続可能社会の実現や人類の発展にどのように寄与するのか、ということを意識することも極めて大切であります。それも科学者に負わされた責務であり、研究者の良心であります。昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村博士の「科学者は人のためにやらなければダメです」「人のまねをすると、そこで終わりです」「失敗を怖れない気持ちを常に持つことが大事です」という言葉は、まさに、研究者に贈られた金言であります。
 最後に、これから洪水の如く押し寄せてくる、最先端の知識を学ばれる皆さんに次のことばを贈り、学長告辞とします。
 「眼力を養うのは知識だけではない、知識に寄り掛かれば目は曇る。知識は感性と悟性(思考力)につもってくる垢である。」
 よく学ぶことは大切でありますが、学び方を誤ると、あるいは過去の知識に依存し過ぎると、見えるものも見えなくなってしまいます。今日のエビデンスは、明日にはエビデンスではなくなる可能性を秘めていることを忘れないで下さい。繰り返します。
 「眼力を養うのは知識だけではない、知識に寄り掛かれば目は曇る。知識は感性と悟性につもってくる垢である。」
 入学おめでとう。

 

平成28年4月3日
高知大学
学長 脇口 宏

 

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