卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
　保護者の皆様には、感慨もひとしおのこととご推察致します。心からお祝い申し上げます。
　また、ご多用のところ、ご臨席賜りましたご来賓、関係者の皆様に対しまして、高知大学を代表してお礼申し上げます。
　最初に、皆さんは高知大学を卒業したことに大きな誇りを持って巣立って頂きたい。高知大学は凄い大学に成長しています。例えば、大学改革では全国のトップを走っており、改革の成果も順調に出ております。２年前に設置した地域協働学部に全国の国立大学が続々と後に続いております。本学の教育がとても素晴らしいことの証明でもあります。さらに、世界大学ランキング2016に本学は601～800位にランクされました。国内では14位グループで、私立大学では慶応義塾大学、早稲田大学、国立大学では、東京農工大学、神戸大学、岡山大学、熊本大学、長崎大学等が入っています。論文引用数は国内7位で、旧帝大で6位以内に入っているのは東京大学、京都大学、東北大学の３校だけであります。良い教育は優れた研究に基づくものであり、皆さんは凄い教育を受けてきたということでもあります。
　高等教育を受ける目的は、最新の知識を修得することではありません。高等教育によって修得した豊富な先端知識と優れた技能は、皆さんが人生の目的を達成するための手段にすぎません。皆さんが、生き甲斐を持ち続け、如何に生きるのか、自分が何者で何処へ行こうとしているのか、何処へ行くべきなのかなどの答えを見つけ実践する手段を修得することが高等教育の目的であります。皆さんが手にされた学位記は、皆さんが、生涯学び続け、人生の目的を達成するための手段を手にしていることの証です。自信を持ってこれからの人生を歩んで頂きたい。
　皆さんに目指して欲しいことがあります。それは、リーダー候補生になること、学びの成果で社会に貢献し還元すること、家庭だけではなく所属する組織や社会を幸福にすること、そして常に考え、考えたことを仲間に理解してもらい、実践したことには必ずチェックと評価を加えることであります。批判的精神とは現状の中に課題を発見することであり、発見した課題は解決しなければ批判した意味がありません。課題を解決するには、一人では困難な場合も少なくありません。その時のために仲間がおり、チームを構築して協働することが必要であります。それが、組織や社会を幸福にすることに繋がり、リーダーが持つべき精神であります。
　さて、これからＡＩ全盛時代に入って行きますが、ＡＩ全盛時代に求められる能力や人材を次のように考えております。第一に、研究経験者です。高質な研究は最良の課題発見課題解決学習であります。研究によって、自律的に学ぶ力と豊富な知識を基にした課題発見・解決に向けた計画立案、解決する実行力、未来を予測する力、失敗と失敗からの立ち直る力、表現力、プレゼン力、ＰＤＣＡを回す力などを修得できます。皆さんは卒研を通じてその力を修得されています。ＡＩに出来ないことは、失敗すること、豊かな心を持つこと、イマジネーション・想像すること、物事を洞察すること、結論を得られない場合の決断、交渉、自らの理念と信義を持つことなどであります。とりわけ、失敗することとイマジネーションすることが重要であります。
　近未来においてこそ、自律・独立・自己責任の精神が重要であり、歯車となるよりはエンジンとなる人生を選択することが生き甲斐に繋がるはずであります。理想の場所を探し回るのではなく、今いる場所を理想の場所に変える努力こそが重要なのであります。複雑で不透明な、将来を見通しにくい時代であるからこそ、理想を持つことが必要であり、未来を理想に近づける努力をすることが人類のそしてリーダーの責務であります。
　人生では、楽しいことと同じくらい多くの苦難に遭遇することでしょう。しかし、苦難は、チャンスでもあります。苦難を乗り越える度に、皆さんの能力は高まります。一人では困難でも仲間とチームを組めば事は成るものです。皆さん、決して孤立しないで下さい。皆さん自身と皆さんの周りにいる仲間を信じて下さい。困った時はお互い様であります。
　最後に、皆さんの人生が、さらに光り輝くものとなり、そして、皆さんが、高知大学の源流と言うべき旧制高知高等学校の誇り高き精神を受けつぎ、高知大学で学ばれたことに誇りを持ち続けて下さることを願って、感激と理想について格調高く謳っている旧制高知高等学校初代校長 江部淳夫先生の訓示の一節を餞の言葉として学長告辞とします。
　「感激あれ若人よ、感激なき人生は空虚なり。汝らが前に、高く髙く理想を掲げよ。さすれば、道は坦々として汝らが前に拓けん。」
　繰り返します。
　「感激あれ若人よ、感激なき人生は空虚なり。汝らが前に、高く髙く理想を掲げよ。さすれば、道は坦々として汝らが前に拓けん。」
　ご卒業おめでとうございます。
　 

平成29年3月23日
高知大学
学長　脇口　宏