大学紹介

平成30年度 高知大学大学院入学式告辞

 高知大学大学院総合人間自然科学研究科へ入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。在学生、教職員を代表してお祝いと歓迎の言葉を贈ります。
 大学院へ進学するということは、学部レベルで学んだ以上に、厳しい世界に飛び込んだということです。覚悟を決めてください。
 特に、欧米の多くの大学とは異なり、日本の大学院に進学するということは、研究者のタマゴ、もしくは、若手の新進気鋭の研究者となる必要があります。たとえ、大学院の授業が充実したものであっても、受け身の姿勢ではもはや全く通用せず、自ら進んで最先端の学問を学ぶ姿勢を持っていないと、修了時までには、まともな成果はほとんど得られません。
 特に、実験する分野であっても、研究は作業ではありません。自ら考え工夫して脳内を活性化していかないと、研究活動の成果として何も新しいものは出てきません。また、教えてもらうことを期待していては、自ら切り拓いていく力は湧き出てきません。
 むしろ、失敗は力の源です。失敗しても、あまりうまくいかなくても、その原因を一生懸命に考え、改善すべき点を洗い出し、再度試みます。一度や二度失敗したからといってあきらめていては、科学の進展などありません。
 また、素晴らしい発想力、構想力はあっても、それだけでは成果につながる研究はできません。しっかりとした基礎力、すなわち、これまでの知識に関する正確な理解とその応用力が研究全体を支えます。日本語の論文が少なければ、英語の論文をたくさん読む必要があります。英語をある程度の速度で解読できるようになっていないと、英語の論文を読むことそのものが苦痛になったり、研究が進まない原因となったりしてしまいます。とにかく、時間に余裕のあるうちに、たとえ多くの時間を割くことになっても、英語の読解力を養っておいてください。
 高知大学は、地域に根差し、地域と共に発展することで、不断に進化する国立大学 “Super Regional University”を目指しています。平成二十七年に地域協働学部を新設するとともに教員養成に特化した教育学部に改組しました。また、平成二十八年には農学部が海底資源管理までを視野に入れた農林海洋科学部に、人文学部は人文科学と社会科学の総合力を増強した人文社会科学部に、平成二十九年には理学部の地球環境防災を補強しより地域のテクノロジーをサポートできる理工学部へと改組をしました。いずれも、Super Regional Universityとなるためのエンジンを備えるための改組でした。
 THE世界大学ランキングで、高知大学は二年連続601~800位にランクされました。東大と京大のみが100位以内ですが、世界中にニ万以上ある大学の四パーセント以内に位置付けられており、国内の大学の中では14位グループに位置しています。地方の大学の中では研究力の高い大学ということができます。高知大学の学生として、このことは誇りに思って勉学に励んでください。
 私自身が大学院生であったころを振り返ると、初めは、2ミクロン以下の土壌中の粘土粒子表面の電荷の研究に取り組んでいましたが、しだいに、東南アジアを中心としたいわゆる発展途上国の山地における環境修復や農林業の開発などの研究へと関心が移っていきました。私自身はクリスチャンですが、仏教やイスラム教、ヒンズー教、自然崇拝をはじめとする精霊信仰など、さまざまな宗教的背景を持つ人や地域において、異なる自然環境や文化の背景のもと生活が営まれている場面と対峙してきました。このように多様な地域をめぐりながら、発展に伴って築きあげることのできるものと、失われるものを、三十年以上にわたってこの眼で直接見てきました。これから十年後、二十年後にどうしたいのか、どうなっていると予想できるのか、常に自問自答してきました。幸せの形を一言で言い表すことも、一つの方法で実現することも、できないと思いますが、それでも、より良い選択肢はなんなのかを捉えるために、もがいてきました。これから、数年間かけて、皆さんもじっくりともがいてください。
 私は、この四月から学長になったばかりです。そういう意味では皆さんと同じ、一年生で、初心者です。より良い高知大学にしたい!地域の人々に高知大学が高知にいてくれて本当によかったと言ってもらいたい!そのために何をすべきかをしっかりと議論しながら探り出し、教職員・学生の皆さんと一緒に、切磋琢磨しながら実現していきたいと考えています。皆さんも、大学院生としての生活を通して、しっかりと自己実現を果たしてほしいと思います。

 

 

 

平成30年4月3日
高知大学
学長 櫻井 克年

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