◆海洋コア総合研究センターの臼井朗特任教授らの研究チームが海底マンガン鉱床の生成現場をとらえました

2020年3月4日

 深海底には莫大な量の鉄・マンガン酸化物が広く分布することが知られ、北西太平洋では我が国の専有鉱区において資源探査も実施されていています。一方で,地球環境や海洋の歴史を解読する長レンジの堆積岩として重要な研究材料として見直されています。しかし,陸上にこれに類する岩石や鉱床が見当たらないため、その起源や成長プロセスは謎に包まれています。古くから鉄やマンガンは「普通の海洋水を起源として、百万年に数mmの速度でゆっくりと積層し、現在も成長中」という常識的には理解し難い仮説で説明されています。
 今回の研究では、現場実験によって、鉱物がバクテリアサイズの塊を単位として非常にゆっくりと積層してゆく様子を捉えることに成功し,この仮説を裏付ける結果が得られました。この結果は2月26日に、Nature系学術誌Scientific Reports(オープアクセス)に掲載されました。

 実験は、2001年に深海底に人工物のスライドを設置し、超スローな鉄マンガン酸化物の沈殿形成を捉えるということから始まりました。設置場所は北西太平洋の海山域、水深1000〜5000mに4地点(図1)、深海探査ロボットや有人潜水艇を用いて設置し、最長15年間放置した後に回収しました。回収した様々な人工物に付着した鉱物の沈殿を、高精度・解像度の分析装置(FE-SEM 、TEM、EDS、ED、共焦点顕微鏡) で分析してみると、材質を問わず、プレート表面に、低結晶性かつ不定形状の鉄・マンガン酸化鉱物(海水起源のvernadite)をまとった径1−2ミクロンの球形粒子が多数発見されました(図2)。
 全地点において、成長速度1000年に数µmいう仮説の現象を、現世の海底で物質として捉えることができたわけです。その形状と組成は、海水中の懸濁物、深海粘土堆積物、室内実験培養の球菌を覆うマンガン酸化物などに酷似しています。さらに驚くことに、この粒状構造は、海域近傍で生成中のマンガンクラストにも広く認められることがわかりました。

 この実験の重要性は、海水中に懸濁するバクテリアなどの表層で鉄マンガン酸化物が生成したものが、クラストや団塊の先駆物質(=構造の最少単位)となる、というプロセスが現場で実証されたことです。さらに、これら金属の海水中や堆積物中での化学・鉱物形態、物質収支、バクテリアマットなどとの成因的関連などへの研究展開が期待される先駆的研究結果です。

 以上の研究は、高知大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大学、産業技術総合研究所の共同研究によって達成されたものです。なかでも高知大学大学院修士課程に在学した2名の卒業生(日野ひかり、鈴島大貴)の研究が基礎になっています。

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           図1

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           図2

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           図3

 

題名:”Modern precipitation of hydrogenetic ferromanganese minerals during on-site 15-year exposure tests”

掲載誌: Scientific Reports誌* (2020年2月26日に公開済み)
*Nature Researchが刊行する電子版学術雑誌
https://www.nature.com/articles/s41598-020-60200-5

筆者:臼井朗1, 日野ひかり1a, 鈴島大貴1b, 富岡尚敬2, 鈴木庸平3, 砂村倫成3, 加藤真悟2a, 柏原輝彦2, 菊地早希子2, 浦本豪一郎1, 鈴木勝彦2,山岡香子4

所属:
1高知大学
2海洋研究開発機構
3東京大学
4産業技術総合研究所

現在の所属
1a石油天然ガス・金属鉱物資源機構
1b住鉱資源開発株式会社
2a理化学研究所

質問,問い合わせは 海洋コア総合研究センター 臼井朗(うすいあきら)特任教授へ
 電話088-844-8319    HPは http://www.cc.kochi-u.ac.jp/~a-usui/

 

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