◆自然科学系理工学部門橋本善孝教授ら研究チームの研究成果が、英科学誌「Nature Communications」に掲載されました

2023年9月25日

プレート境界断層スロー地震発生域から海底面までつながる流体経路を発見

ー沈み込む海嶺が作る上盤プレート破砕帯のイメージングに成功ー

 

 自然科学系理工学部門橋本善孝教授ら研究チームの研究成果が、英科学誌「Nature Communications」に9月20日付けで掲載されました。

 プレート境界における流体の挙動は、地震の発生や泥火山(※1)の形成に影響を与えていると考えられていますが、流体に係る上盤プレートの構造を裏付けるデータは限られており、スロー地震(※2)発生域における震源断層の物理特性は十分にわかっていませんでした。

 本研究チームは、南海トラフ最西端に位置する日向灘において屈折法地震探査及び反射法地震探査を実施し、それらの地震波データを解析しました。その結果、海底面からプレート境界(深さ10-13km)まで鉛直方向につながる幅数kmの低速度体が上盤プレート内に複数存在することを発見しました。また、これらの低速度体は、南東側から沈み込む九州パラオ海嶺(起伏に富んだ海山群)によって上盤プレートが強く破砕された場所であると解釈され、流体を豊富に含むスロー地震の発生領域と連結していることを明らかにしました。

 この研究成果は、プレート沈み込み帯における流体循環及び巨大地震やスロー地震の発生機構を理解するうえで重要な知見となることが期待されます。

 

 タイトル:Upper-plate conduits linked to plate boundary that hosts slow earthquakes

 著  者:新井隆太1、三浦誠一1、中村恭之1、藤江剛1、小平秀一1、海宝由佳1、望月公廣2、仲田理映2,3、木下正高2、橋本善孝4、濱田洋平5、沖野郷子6

 所  属:1. 国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門、2. 東京大学地震研究所、3. Lawrence Berkeley National Laboratory、4. 高知大学理工学部、5. 国立研究開発法人海洋研究開発機構 高知コア研究所、6. 東京大学大気海洋研究所

 D O I :10.1038/s41467-023-40762-4

 プレスリリース_プレート境界断層スロー地震発生域から海底面までつながる流体経路を発見.pdf(2MB)

 

 

※1泥火山:地下由来の泥や岩石が噴出することで形成される地形。多くは円錐形の山体を持つ。火山地帯に限らず、プレート沈み込み帯にも分布することが知られている。主に地殻内で生じた流体が表面まで上昇してくることで生じる。

※2スロー地震:断層でのずれが通常の地震より遅いタイプの地震の総称。数Hzの地震波の成分が卓越するHHz低周波地震や0.1Hz以下の成分が卓越する超低周波地震、さらに地震波を出さずに数日から数か月・数年かけてゆっくり断層がすべるスロースリップイベントなど、ずれの速度によっていくつかの種類に分類される。また低周波地震が連続的に発生して長時間にわたって地震波が放出される現象を低周波微動と呼ぶ。

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