◆自然科学系農学部門の井原賢准教授らの研究グループの研究成果が、「Science of The Total Environment」誌に掲載されました

2023年10月3日

下水サンプルから新型コロナウイルス感染状況を把握

 

 自然科学系農学部門の井原賢准教授を責任著者とする研究グループの研究成果が、「Science of The Total Environment」誌に2023年8月21日付けで掲載されました。

 感染症ウイルスに感染した多くの人は、鼻水や唾液にウイルスを放出するだけでなく、糞便にもウイルスを排出しています。これらのウイルスは下水とともに下水処理場へと集まるため、下水中のウイルス量を調べることで地域の感染状況を把握できると考えられます。新型コロナウイルス感染症に関しても、下水中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2 RNA)濃度を調べることで、地域社会における新型コロナウイルス感染症の感染状況を把握するのに役立つことが国内外の研究で証明されてきました。しかし、感染率が低い地域では、下水中のSARS-CoV-2 RNA濃度が低いため、感染状況の把握が困難であることが課題でした。

 井原准教授らの研究グループは近畿地方の自治体と連携し、下水処理場でPCRを使用して下水中のSARS-CoV-2 RNAを調査しました。今回調査したすべてのサンプルは、ウイルスRNAが検出限界を下回っていましたが、各サンプルの繰り返しPCRでの陽性数を数えて陽性率を算出することで、PCR陽性率が当該自治体の新規感染者数と有意に相関していることがわかりました。また、当該自治体では2021年12月末から新規感染者数が急増して第6波が始まったのに対して、下水処理場では12月上旬から既に下水中のSARS-CoV-2 RNAが増加している様子を把握することができました。

 本研究成果は、感染率が低い地域であっても下水中のウイルスのPCR陽性率を測定することで、感染状況を迅速に把握できることを示しました。これにより、今後は新型コロナウイルス以外のウイルスへの応用も期待されます。

 

 論文タイトル:Tracking community infection dynamics of COVID-19 by monitoring SARS-CoV-2 RNA in wastewater, counting positive reactions by qPCR

 著者:Bo Zhao, Tomonori Fujita, Yoshiaki Nihei, Zaizhi Yu, Xiaohan Chen, Hiroaki Tanaka, Masaru Ihara

 雑誌名:Science of The Total Environment, volume 904, 166420 (2023)

 URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969723050453?via%3Dihub

 プレスリリース_下水サンプルから新型コロナウイルス感染状況を把握.pdf(139KB)

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