◆医学部眼科学講座の岸本達真助教が2023年度日本眼科アレルギー学会優秀賞を受賞しました

2023年10月11日

 医学部眼科学講座の岸本達真助教が2023年度日本眼科アレルギー学会優秀賞を受賞し、令和5年9月2日から3日まで御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターにおいて開催された第6回日本眼科アレルギー学会学術集会で受賞式及び優秀賞受賞講演が行われました。

 この賞は、眼科におけるアレルギー分野での優れた研究者を助成・育成する目的で、日本眼科アレルギー学会より優秀な研究業績を発表した医師に贈られるものです。

 岸本助教は、結膜におけるマスト細胞と線維芽細胞の相互作用を検討することで、結膜線維化疾患や緑内障術後の瘢痕(※1)化を防ぐためにマスト細胞が治療標的となる可能性を報告しました。

 マスト細胞は消化管や皮膚、結膜など粘膜・結合組織に広く存在し、I型アレルギー反応(※2)において重要な役割を果たします。また、皮膚において創傷治癒を促進し、瘢痕形成に関係する事も報告されています。結膜線維芽細胞は、細胞外マトリックス(ECM)(※3)を合成すると同時に、タンパク分解酵素であるmatrix metalloproteinase(MMP)を分泌することでECMの分解も行い、結膜の恒常性維持と創傷治癒に関与しています。

 緑内障の濾過手術後の結膜の創傷治癒過程での線維化と収縮は濾過胞機能不全につながるため、その創傷治癒の制御が術後成績の改善に重要です。また、緑内障患者の結膜では、マスト細胞が有意に増加していることが報告されています。

 岸本助教は、結膜の創傷治癒のモデルとして、コラーゲンゲルの三次元培養を用いてマスト細胞と結膜線維芽細胞の相互作用を検討しました。結膜線維芽細胞はコラーゲンゲルを収縮させますが、マスト細胞はコラーゲンゲルを収縮させませんでした。しかし、マスト細胞と結膜線維芽細胞を同時にコラーゲンゲル内で培養すると、さらにゲルの収縮が促進しました。このことから、このゲル収縮の促進作用は、マスト細胞による線維芽細胞からのMMPの放出・活性化の促進を介することが明らかとなりました。この両細胞の相互作用は、緑内障手術後の濾過胞収縮の一因となる可能性が示唆されました。このことは、今後の臨床応用も期待でき、今回の受賞につながりました。

 

岸本先生受賞.jpg

 

<論文名>Promotion of conjunctival fibroblast-mediated collagen gel contraction by mast cells through up-regulation of matrix metalloproteinase release and activation. Exp Eye Res 218: 108980, 2022.

 

 

(※1)瘢痕(はんこん)…傷跡のこと。

(※2)I型アレルギー反応…アレルギーを引き起こすそれぞれの成分(アレルゲン)が体内に入って比較的短時間(直後から2時間以内)に症状があらわれるもの。「即時型アレルギー」ともいわれる。

(※3)細胞外マトリックス…全ての組織、臓器中に存在する非細胞性の構成成分のこと。コラーゲンやプロテオグリカンなどから構成され、細胞骨格形成および細胞間情報伝達など、様々な細胞機能を制御している。

 

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