◆自然科学系農学部門の井原賢准教授らの研究成果が「Journal of Hazardous Materials」誌に掲載されました

2024年1月17日

オゾン処理における薬剤耐性因子の不活化および除去の指標となる物質を同定

―健康リスクが懸念されている水環境のウイルスの除去にも貢献―

 

 自然科学系農学部門の井原賢准教授を責任著者とする研究グループの研究成果が、2023年12月22日付けで「Journal of Hazardous Materials」誌オンラインに掲載されました。

 近年、水環境中に存在する薬剤耐性菌(※1)および薬剤耐性遺伝子の拡散による健康リスクが懸念されており、下水処理場におけるオゾン処理などの強力な酸化処理プロセスによって下水からこれらの薬剤耐性因子の不活化および除去の効率を向上させることが求められています。

 井原准教授と京都大学の研究グループは、下水処理場の二次処理水中のウイルス(MS2ファージ)、アンピシリン耐性大腸菌、大腸菌体内の薬剤耐性遺伝子および菌体外の薬剤耐性遺伝子を、オゾン処理によって不活化および除去する実験を行いました。さらに、オゾン処理での除去速度が分かっている下水中の微量汚染化学物質としてカルバマゼピンおよびメトプロロールについても同様の実験を行い、ウイルスや薬剤耐性菌、薬剤耐性遺伝子の不活化・除去の効率と比較しました。その結果、カルバマゼピンがウイルスと薬剤耐性菌の不活化の指標として、メトプロロールが薬剤耐性遺伝子の除去の指標として活用できることが示されました。また、オゾン量が少ない場合には大腸菌体内の薬剤耐性遺伝子が除去されないことも判明し、オゾン処理によって薬剤耐性菌は不活化できても菌体内の薬剤耐性遺伝子は残存して水環境中に排出される可能性が示唆されました。

 この研究成果は、下水中の薬剤耐性因子やウイルスの不活化および除去において指標となる物質を特定することでオゾン処理の効率化が期待されるものです。

 

【論文情報】

 論文タイトル:Comparison on removal performance of virus, antibiotic-resistant bacteria, cell-associated and cell-free antibiotic resistance genes, and indicator chemicals by ozone in the filtrated secondary effluent of a sewage treatment plant

 著者:Bo Zhao, Kyoungsoo Park, Daisuke Kondo, Hiroyuki Wada, Norihide Nakada, Fumitake Nishimura, Masaru Ihara, Hiroaki Tanaka

 雑誌名:Journal of Hazardous Materials, volume 465, 133347 (2024)

 URL:https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2023.133347

 

※1薬剤耐性菌(ARBs):抗菌性物質に抵抗性を示す細菌のこと

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