◆大学院黒潮圏総合科学専攻3年生の瀨戸美文さん及び自然科学系理工学部門の比嘉基紀准教授の論文が、「Journal of Vegetation Science」に掲載されました

2024年7月1日

樹木の上で生育する着生植物の分布に、微気象勾配を生じさせる地形勾配が影響することを解明

 

 大学院博士課程黒潮圏総合科学専攻3年生の瀨戸美文さんと自然科学系理工学部門の比嘉基紀准教授の研究成果が、国際誌「Journal of Vegetation Science」(国際植生学会誌)に掲載され、2024年6月19日に電子版が公開されました。

 多くの植物は地表で生育しますが、着生植物は樹木の幹や枝に固着して生育する特殊な植物です。着生植物は地球上の維管束植物の1割 (約 31,000 種) を占めるほど種の多様性が高いだけでなく、他の樹上生物に住処として利用されており、森林の生物多様性を左右する存在です。着生植物の生育場所(分布)がどのように規定されているのかを解明することは、森林の生物多様性の成立・維持機構を明らかにするうえで重要です。

 先行研究では、着生植物は大きな樹木の上を好んで生育する(固着基質となる樹木のサイズが分布に影響する)ことが知られていました。しかし、大きな樹木であっても着生植物が生育していないことや、小さな樹木であっても着生植物が生育していることがあります。このことから、瀬戸さんらは樹木のサイズ以外にも分布に影響する要因が存在しているのではないかと考えました。植物の分布に影響を及ぼす要因としてよく知られているものに、気象環境があります。そこで本研究では、① 森林内の微気象環境(※)が着生植物の分布に影響するのか、② 微気象環境と樹木サイズのどちらがより強く分布に影響するのかを調べました。

 その結果、① 着生植物の分布は、空中湿度勾配や風速勾配を生じさせる尾根-谷勾配の影響を受けており、空中湿度の高い谷に多く生育していることが明らかとなりました。また、②尾根-谷勾配は樹木サイズよりも強く影響していることが明らかとなりました。

 日本に生育する着生植物の多くが絶滅危惧種に指定されており、保全策の検討が必要です。これまで着生植物の保全に適した場所として、大きな樹木が多数存在する老齢林が着目されていました。本研究の成果により、老齢林の谷部、もしくは谷部に位置する老齢林を優先的に保全することが効果的であることが示唆されました。

 

題 名:Topographic gradient influences vascular epiphyte occurrence in a small watershed covered by a mature coniferous/broadleaf evergreen mixed forest in Japan
著 者:Mifumi Seto¹, Motoki Higa²
所 属: ¹高知大学大学院総合人間自然科学研究科・²高知大学理工学部
D O I:https://doi.org/10.1111/jvs.13279

瀨戸さんと比嘉准教授が所属している、理工学部 生物科学科 植物生態学研究室のホームページはこちらです。
 

(※)微気象環境:地表面100メートルくらいまでの大気現象のこと。地面の状態に特に影響を受ける。

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