◆自然科学系農学部門の井原賢准教授らの研究成果が「Science of The Total Environment」誌に掲載されました
下水中の新型コロナウイルスPCR分析におけるデータ標準化
―異なる分析方法の定量データを比較可能にするためのデータ解析法を提案―
自然科学系農学部門の井原賢准教授の研究グループ、京都大学、北海道大学、東京大学、信州大学、株式会社アドバンセンチネル、株式会社日吉、株式会社島津テクノリサーチ、一般財団法人 北里環境科学センター、株式会社NJS、及び国土交通省の共同研究の成果が、2024年9月7日付けで「Science of The Total Environment」誌オンラインに掲載されました。
COVID-19パンデミックが起こって以来、下水中の新型コロナウイルスRNAをPCRによって定量することで市中の感染状況を把握する研究、下水疫学(wastewater-based epidemiology)が世界的に注目を集め、実際に世界の多くの国で活用されています。日本においても札幌市や仙台市、小松市、養父市、大分市、大津市などで活用されています。
下水からウイルスを濃縮する方法はこれまでに多く開発されています。多くの場合、ウイルス濃縮方法が異なると、そこから得られる下水中のウイルス濃度も異なります。また、自治体によってウイルス分析を担当する分析機関が異なり、ウイルス濃縮方法も異なります。このため、下水中の新型コロナウイルスの濃度データを自治体間で相互に比較できないことが、下水疫学の課題でした。そこで本研究では、共同研究に参加する分析機関に共通の下水試料を送付し、各分析機関で下水中の新型コロナウイルス濃度がどれくらい異なるのかを調べました。その結果、同じ下水試料を分析しているにもかかわらず、分析機関が異なるとウイルス定量値が大きくことなることを確認しました。また、分析機関やウイルス濃縮法が変わっても同じウイルス定量値を得るためには、分析機関ごとのウイルス定量値に補正の係数を乗ずることが有効であることを確認しました。
この研究成果は、異なる自治体間での下水疫学データを相互に比較することを可能としており、今後の下水疫学の社会実装を後押しすることが期待されます。
【論文情報】
論文タイトル:Enabling quantitative comparison of wastewater surveillance data across methods through
data standardization without method standardization
著者:Noriko Endo, Aika Hisahara, Yukiko Kameda, Kaito Mochizuki, Masaaki Kitajima, Makoto Yasojima,
Fumi Daigo, Hiroaki Takemori, Masafumi Nakamura, Ryo Matsuda, Ryo Iwamoto, Yasuhiro Nojima,Masaru
Ihara, Hiroaki Tanaka
雑誌名:Science of The Total Environment volume 953, Article number: 176073 (2024)
URL:https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2024.176073
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