患者の皆様へ

代表的疾患 関節リウマチ(RA)

関節リウマチ(RA)

RAとは、免疫の異常(自己免疫疾患)によって関節滑膜が炎症し、次第に軟骨や骨が破壊され、関節の機能が損なわれ、関節が変形してしまう病気です。発症すると数年以内に関節破壊が進行するため、関節破壊を阻止するためには早期診断・早期治療が重要です。

未だにRAは治らない病気、最終的には関節が変形して動かなくなるという印象があるようですが、現在、関節リウマチ治療は大きく進歩しています。 新しい薬も次々と開発され、寛解(RAが良好にコントロールされた状態)を目指し、さらに寛解を維持させる時代になってきています。

原因

環境要因(喫煙・歯周病・肥満など)や遺伝要因が相互に関連している

病態

関節を構成する滑膜に腫脹や炎症を生じる滑膜炎

症状

関節症状 : 初発症状

朝のこわばり、手・手指の腫れぼったさ、持続する関節痛

初発時は手関節や手指関節、足趾関節といった小関節に多くみられます。一方、高齢発症のリウマチの場合は、初発時に肩関節や膝関節などの大関節にみられることが多いです。

健常者でも10分以内の朝のこわばりを訴えることがありますが、一般に疾患活動性が高いリウマチ患者は、1時間以上も改善しない朝のこわばりを訴えることが多いです。

関節症状 : 例

「手をついたりタオルを絞ったりすると痛い」

「肘が伸ばしにくい」

「足趾の裏に盛り上がった感じがあり、踏むと痛い」

関節症状 : 関節変形

活動性滑膜炎によって靭帯、腱、筋肉が損傷して不安定になり、さらに関節軟骨や骨が障害され、関節の破壊・変形をきたします。

関節外症状・合併症

全身症状(全身倦怠感・微熱・体重減少など)、感染症、呼吸器合併症、骨粗鬆症

検査

血液/尿検査、画像検査(レントゲン検査・MRI検査)、関節超音波検査など

治療

大きく4つの柱から成り立っています。

薬物療法

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、ステロイド剤、抗リウマチ薬(DMARDs)、生物学的製剤、JAK製剤があります。以前はもっぱらNSAIDs、ステロイド剤が使用されていましたが、現在は様々なDMARDsが開発されており、RAと診断されたら早期からDMARDsを使用することが推奨されています。DMARDsで効果が不十分な場合には、生物学的製剤やJAK製剤が使用されることもあります。最近は自己注射のタイプもあり、患者さんのライフスタイルに合わせて治療薬を選択することも可能となっています。

リハビリテーション

患部を温めて痛みやこわばりを和らげる物理療法と、関節の動く範囲を広げ、関節拘縮を改善させる運動療法が重要です。

手術療法

薬物療法によって関節破壊の進行をゆっくりすることはできても、完全に抑制するのは難しいです。薬物療法だけで関節破壊が抑制できず関節変形を生じた場合は、手術療法が必要となってきます。

滑膜切除術

増殖した関節の滑膜を取り除く

肘関節や手関節、股関節や膝関節があります。

人工関節置換術

破壊された関節を人工関節に置き換えます。

変形性関節症と同等の手術であり、股関節(THA)・膝関節(TKA)・足関節(TAA)・肘関節(TEA)・指MP関節があります。

切除関節形成術や関節固定術

足関節や足趾、手関節や指関節がある

術前
術後
術前
術後

薬物療法の限界

薬物療法では炎症の鎮静化のみに重きを置かれがちですが、RAの治療最終目標は、あくまでも日常生活レベルの向上です。下肢手術後は、痛みなく歩くことが可能になったり、上肢手術で機能や整容面において高いQOLを得られたりと、手術療法は、RAの真の完全寛解へ向けた確実な治療手段です。しっかりと薬物療法でRAの疾患活動性をコントロールした上で、さらなるQOL向上のため、必要時は手術療法を選択することも重要です。

ケア

普段の診療現場でRAについての患者教育をしっかり行うことが、治療継続につながります。RAは定期的に、長期的なフォローが必要な疾患です。必要な治療を的確に提供できるように、患者-医師の良好な関係を保つことが必須です。定期的な外来診察では、罹患関節への関節腔内穿刺/注射や装具・サポーターの処方を行ったりします。