患者の皆様へ

代表的疾患 外傷

大腿骨近位部骨折

転倒や転落により、大腿骨の近位部が骨折する疾患です。主には大腿骨頚部骨折と、大腿骨転子部骨折の 2 種類に分かれます。骨の強度や質が低下した骨粗鬆症を有する方に多い骨折です。患者数は 2012 年には年間 17 万人強で、人口の高齢化に伴い、現在も増加していると言われています。

症状

転倒や転落ののち、股関節周囲が腫れて痛くなり、動かすことや歩くことが困難となります。ただし骨折部のずれが小さい場合は、腫れや痛みが少なく、歩くことができる場合もあります。

治療法

大腿骨近位部骨折を受傷すると、歩行能力が低下し、生命予後も悪化すると言われています。痛みを軽減する、寝たきりを予防する、全身状態を安定化させる等の目的のため、多くの場合は手術療法が選択されます。ご高齢の方の場合、まず大腿骨頚部骨折ですが、骨折部のずれが小さければ骨と骨をつなぎ合わせる骨接合術が選択されます。骨折部のずれが大きければ、骨の癒合が得られにくく、手術後に大腿骨頭壊死などの合併症が起こる可能性が高くなるため、人工骨頭置換術や人工関節置換術が選択されます。大腿骨転子部骨折は、基本的にはずれの程度に関わらず骨接合術が選択されます。

人工骨頭置換術前
人工骨頭置換術後

大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術

骨接合術前
骨接合術後

大腿骨転子部骨折に対する骨接合術

手術後の治療法

骨折をする前の生活レベルを目指し、症状に応じて股関節の可動域訓練や筋力増強訓練、歩行訓練等をすすめていきます。骨の癒合は少なくても約 3 ヶ月かかると言われています。また、ご高齢の方の場合、骨粗鬆症を有している可能性が非常に高いです。骨粗鬆症の精査や治療をしないままだと、わずかな外力でまた他の部位に骨折をきたしてしまいます。「骨折の連鎖」とも呼ばれており、さらに活動性が大幅に低下し、介護が必要になる可能性が高くなります。このため、適切な骨粗鬆症の治療を受けることが非常に重要です。