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泌尿器科

泌尿器科では腎臓、膀胱、前立腺など尿路性器の病気に対して専門的な診療を行っています。

概 要

泌尿器科では次のような疾患を対象にしています

前立腺癌、腎癌、尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂癌、尿管癌)、精巣腫瘍などの悪性腫瘍、前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿失禁、尿路結石、尿路感染症(腎盂炎、膀胱炎、前立腺炎)、停留精巣、包茎、夜尿症(おねしょ)など

泌尿器科では次のような症状を扱っています

  • おしっこの回数が多い
  • おしっこをした後にまだ残っている
    感じがある
  • おしっこの勢いが悪い、あるいは
    おしっこが出にくい
  • 夜中に頻回にトイレに行く
  • おしっこが漏れる
  • おしっこをする時に痛みがある
  • 健康診断で腎臓の腫瘤を指摘された
  • 血尿がある
  • 健康診断で尿潜血を指摘された
  • 背中に鈍い痛みがある
  • 睾丸がはれてきた
  • 睾丸に痛みがある
  • お腹や背中に激しい痛みがある

診療体制

毎週月曜日と木曜日が手術日で、年間200件前後の手術が行われています。腹腔鏡手術やロボット手術、前立腺癌の組織内照射などの低侵襲治療を積極的に行っています。病棟では、日本泌尿器科学会の専門医資格をもつ指導医の下、卒後3~5年の医師が各3チームをつくり治療にあたります。

診療方針

我々の医療への基本姿勢は、患者さんと同じ気持ちでお話しし、病気のすべての情報を明らかにしながら患者さんの同意と納得のもとに行う医療です。

得意分野

泌尿器疾患全てに対応できます。特に一人一人の患者さんを丁寧に診療する体制をとっています。

外来

尿路性器腫瘍をはじめ、排尿機能障害などの診察のために、一日約100名の患者さんが来科されます。

手術支援ロボット「ダビンチ」

「ダビンチ」は、ペイシェントカート(ロボット部)、サージョンコンソール(執刀医の操作台)、ビジョンカート(助手用のモニター)から構成される手術システムです。ロボット部には先端に鉗子やメスなどを取り付ける3本のアームと内視鏡が装着されており、手術を行う執刀医はケーブルでつながった操作台に座り、遠隔操作でロボットアームの先端の鉗子を動かして切除や縫合などの手術を行います。自由に近接できる10倍の拡大視野で、3次元の立体的で遠近感のある、デジタルハイビジョンによる鮮明な映像で、体内を見ることができるので、安全かつストレスのない手術が可能です。さらに、自由度が高く、広い可動域を示す多関節機能を有する鉗子や、手振れ防止機能なども装備されており、まさに人間の手以上の精密かつ自然な手術操作が可能です。

泌尿器科

▼ 現状

  • 2012年9月、この内視鏡手術支援ロボット「ダビンチS (米国インテュイティブ・サージカル社製)」が高知大学医学部附属病院に導入されました。さらに2017年7月には第4世代の機器である「ダビンチXi」が導入されました。世界においても最先端の医療技術とされる手術ロボット「ダビンチ」は、欧米を中心に導入され、現在、日本国内でも多数の施設で導入されています。また、本邦では、この「ダビンチ」を用いた手術は前立腺癌および腎癌に対する手術においてのみ健康保険の適応として認められていましたが、2018年4月より膀胱癌に対する手術、2021年4月より水腎症に対する手術、骨盤臓器脱に対する手術も保険適応として認められました。。
  • 我々高知大学医学部泌尿器科では、「オンラインによる教育システムの受講」、「動物ラボトレーニング」、「公認施設での症例見学」、「自施設でのシステムトレーニング」などの日本泌尿器科学会および日本泌尿器科内視鏡学会が制定した教育プログラムを受け、認定資格を取得した上で、2012年10月29日から前立腺癌に対するロボット支援手術を開始しました。2022年10月現在、9名がロボット支援手術の技術認定医を、5名が指導医を取得しており、これまでに900例以上のロボット手術を行っています。

▼ 長所

  • 「ダビンチ」の長所は、小さな孔(あな)からカメラや鉗子を挿入し手術を実施するために、開放手術と比べて明らかに傷が小さくて済みます。
  • さらに、腹腔鏡下手術と比べて、拡大視野で、3次元の立体的な、デジタルハイビジョンによる鮮明な映像、緻密な手術操作により、出血量が少ない低侵襲な手術が実施できます。合併症のリスクも少なく術後の回復が早く、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術では術後7日目に退院と、入院期間が短く早期の社会復帰が可能です。
  • 癌の根治が容易であるばかりでなく、術後の尿禁制や性機能の早期回復も期待できます。

▼ 安全性

  • 手術ロボット「ダビンチ」を用いた手術とは、ロボットが手術を行なうのではなく、医師がロボットを活用し、より精度の高い手術を行うものです。
  • 「ダビンチ」は操作性および機能性に優れており、開放手術や腹腔鏡下手術と比較して、短い期間で手術の技能を習得することができ、そのため常に一定の高い水準の手術を提供することができます。また、医師は術者としての特別な認定資格を取得し、訓練を積んだ後に手術を行う執刀医となります。
  • さらに当院では独自の基準を設けており、その基準を満たした者のみが手術を行います。トレーニング シミュレーターを用いて、技術を高めていく訓練も日々重ねています。
  • 「ダビンチ」は、機械の異常をシステム側で確認し、手術前にトラブルを回避できるようになっています。事実、「ダビンチ」のシステムエラーは世界中でわずか0.2~0.4%と極めて低いもので、当院でもこれまで事故はありません。さらに医師をはじめ手術に携わるスタッフは、緊急時を想定した訓練を積み、安全管理の徹底が図られています。

▼ 費用

  • 手術ロボット「ダビンチ」を用いた手術は、2022年10月現在、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、水腎症、骨盤臓器脱が、泌尿器科領域で保険適応となっています。さらに、高額療養費制度も適用されます。

泌尿器科で実施している主な検査は次のようなものです

入院して行う検査

病棟

第二病棟を中心に、手術療法、化学療法・薬物療法、放射線療法などを受けられる患者さんが入院されています。

▼ 前立腺針生検

前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAが高い時や、直腸診や超音波検査で異常所見が認められた時に行われる検査で、前立腺癌の診断を確定するためのものです。 超音波のプローブを肛門から入れ、前立腺を超音波で見ながら約12本針を刺して前立腺の組織を採ってきます。2通りの方法があり、直腸を介するものと会陰部(肛門と陰嚢の間の部分)を介するものがあります。
後者は、半身麻酔で行うため痛みは感じません。前者は表面麻酔のみですが通常それほど強い痛みは感じません。検査時間は約30分程度です。入院もしくは日帰り生検を行っており、検査結果は外来で説明します。 この検査は広く一般に行われており、当院においても安全に行われております。

▼ 膀胱生検

膀胱癌の診断を確定し、癌の悪さや進行の程度を調べる重要な検査です。全身麻酔もしくは半身麻酔下で行います。膀胱鏡で膀胱内を観察し腫瘍の部分、正常と思われる部分の一部をつまんで採ってきます。検査時間は約1時間程度です。検査の結果で今後の治療方針が決まります。

泌尿器科で実施している主な治療は次のようなものです

▼ 前立腺癌に対する放射線療法

明らかに転移がない前立腺癌に対する治療法のひとつに、放射線療法があります。これには2通りの方法があります。

1.I-125(ヨード125)シード線源永久留置法による密封小線源療法 :
 I-125シード線源永久留置法は前立腺癌に対する放射線治療として、日本で2003年より新たに開始された治療法です。当院でも2004年8月に治療の認可がおり、I-125シード線源の永久留置法による密封小線源前立腺癌治療を開始しています。治療は半身麻酔で行います。尿道に排尿のための管が入り、翌日まで留置されます。台に横たわっていただき、下肢を挙上したかっこうで治療を行います。肛門からエコーのプローブが入り、エコーの画像を見ながら、会陰部から前立腺内にアプリケーター針と呼ばれる長い針が20本程刺入されます。コンピューターで計算された通りに、それぞれの針の中に数個ずつシード線源が挿入されていきます。症例により異なりますが、全部で80~100個程のシード線源が留置されることになります。体への負担が少なく、入院期間は通常6日です。

2. 高線量率組織内照射療法 :
 わが国では、1994年1月より、前立腺癌患者さんに対して前立腺組織内照射および外照射併用療法が開始され、また本院においても、1999年6月より、わが国6番目の施設として本療法を開始しています。まず、入院していただき、手術室で麻酔をかけた後、アプリケーターとよばれる針を20-30本程度、会陰部より刺します。その後、針は刺したままで、当日に2回、内照射を行います。

▼ 腹腔鏡下手術

腹部に1cm程度の小さな穿刺創を3-4カ所おき、炭酸ガスを腹腔内に注入し、穿刺創から内視鏡を挿入して手術を行う方法です。本術式には高度の手術技術が要求されますが、従来のお腹を切る開放手術に比べて、手術創が小さいことから術後の回復が早く、術後の痛みが極めて少なく、短期間のうちに入院治療を終えることができることがこの手術の長所です。日本では1990年頃から主に外科領域にて胆嚢結石に対して行われていましたが、最近では泌尿器科領域でも盛んに行われるようになり、副腎腫瘍に対する副腎摘除術、腎腫瘍を含む種々の腎疾患に対する腎摘除術などはよい適応といえます。

▼ 腹圧性尿失禁の手術療法

重い物を持ち上げたり、くしゃみや咳をした時などお腹に力が入ったときに尿がもれてしまう症状を腹圧性尿失禁といい、出産や骨盤内の手術、加齢変化などが原因となって膀胱や尿道を支える骨盤底の筋肉の力が弱くなっているために生じる症状と考えられます。治療法はこれらの骨盤底筋群を刺激する体操や薬物療法などの保存的療法がありますが、これらで充分な効果が得られない場合に手術療法があり、その中でも近年、TVT (tension free vaginal tape) というポリエチレンでできたテープを用いた尿失禁根治術がよく行われ、その有効性が示されています。TVTとは無張力で膣壁を支持するテープの意味で、中部尿道を膣壁側より支持することにより、腹圧上昇時の尿失禁を防ぐものです。特徴として短時間(約1時間)の手術が可能で、約1cmの傷が腹部に2ヶ所、膣1ヶ所だけで、局所麻酔と鎮痛剤での実施が可能など体への侵襲が低いことが上げられます。また過度の矯正を防止できる為に術後に排尿障害の発生が少なく、術後短期間での退院が可能です。効果に関しても高い有効率と効果の持続が期待できます。(本手術の症例の多い北欧での調査では手術を受けた方の97%が術後の状態に満足しています。)

▼ 小児泌尿器科手術

実は小児疾患の中で小児泌尿器科疾患は意外に多く、例えば停留精巣であれば男児の約1%に見られます。小児泌尿器科の対象となる臓器は、成人の泌尿器科疾患と同様に、腎臓や尿路系の異常と内・外性器の異常ですが、その多くは先天性疾患で、悪性腫瘍の多い成人の診療とは大きく異なります。また、昼間の尿漏れやおねしょなども、排尿習慣がまだ確立していない小児特有の疾患と言えます。
小児泌尿器科手術の大きな特徴として、何かを「摘除」することではなく、正常に近い状態に「形成」してあげる手術が多いことです。当科では、高知県で唯一小児泌尿器科領域の専門外来を行っており、停留精巣や膀胱尿管逆流、包茎の手術など、多岐に渡る小児泌尿器科領域の手術を行っております。