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定位放射線照射(ピンポイント照射)について

定位放射線照射とは?

 従来の放射線治療は、体の正面と背中など2方向から行う「2次元照射」が中心でしたが、広範囲に放射線をかけるため、正常組織への影響も大きく、照射線量が限られるために腫瘍を治すことが困難でした。
 近年、照射技術の向上に伴い、様々な方向から病巣に狙いを定めて集中的に放射線をかける「3次元照射」及び「強度変調放射線治療(IMRT)」が可能となってきました。これによって照射線量を増加でき、腫瘍に対する効果が増大する一方、正常組織への影響も少なくてすむようになりました。また、一回大線量を照射することから少ない回数(1-5回程度)といった短期間で終了できることも特徴です。
 従来から小型の脳腫瘍に対して行われてきましたが、呼吸によって動いてしまう体幹部(肺、肝)腫瘍に対しても実施できます。この場合、呼吸状態を監視する装置を用いて、照射中に息を止めてもらうことで、より正確に照射することが可能です。我々はこのような高精度の照射技術を用いた治療を定位放射線照射(ピンポイント照射)と呼んでいます。

どのような疾患が対象となるのですか?

  • 良性脳腫瘍(髄膜腫、聴神経腫瘍など)及び転移性脳腫瘍
  • 5cm以下の原発性肺腫瘍・肝腫瘍
  • 3個以内で他病変のない転移性肺癌又は転移性肝癌
  • 5cm以下の転移性脊椎腫瘍
  • 5個以内のオリゴ転移(少数遠隔転移)
    手術では治療しにくい部位の病変や、合併症や高齢のため手術が困難な方も治療可能です。

治療効果は?

I期非小細胞肺癌及び肝細胞癌に対して、約90%以上の高い局所制御割合が得られます。以下の実例を提示します。
体幹部定位放射線照射による治療例(肺癌)
治療前、3ヶ月後、20ヶ月後の様子
体幹部定位放射線照射による治療例(肝癌)
治療前、3ヶ月後、20ヶ月後の様子

治療の手順は?

治療計画(1時間)

  1. 固定装具の作成:まず、図のような固定装具を作成します。各患者様の体格に合うように、装具の形を合わせていきます。
    固定装具と患者の様子
  2. 息止めの練習:毎回同じように息を止めるように練習を行います。基本的には軽く息を吐いたところで止めて頂きます。
  3. CT撮影:固定装具を装着したままCT撮影を行います。その際、息は息止めの練習と同じように、止めてください。
  4. 治療計画:撮影したCTを治療計画装置に転送した後、最適な照射方向や線量分布を作成します。
    肺癌の場合
    肝癌の場合

放射線の治療(1日1回、1回約30分)

  1. 位置の確認(リニアックグラフィ、コーンビームCTの撮影)
    毎回の治療前に位置のずれがないかどうかを確認するため、下のような写真を撮影します。この時も治療時と同様に息を止めて行います。
    リニアックグラフィ
    コーンビームCT
  2. 治療開始
    位置の確認後、治療開始します。「息を止めてください」という合図があったら、治療計画の時と同様な息止めをして下さい。1回につき15~20秒程度止めて頂きます。これを数回繰り返し、1回の治療が終了します。

副作用はありますか?

肺腫瘍の場合

治療期間中または直後にはほとんど自覚症状はありません。治療後数ヶ月経過して照射部位に限局した肺炎を生じるため、咳を生じることがありますが、発熱などは稀です。肺炎は次第に収束していきますので、いずれの症状も基本的には一過性です。

肝腫瘍の場合

治療期間中または直後にはほとんど自覚症状はありません。治療後2~3ヶ月経過して照射部位に限局した肝炎を生じるため、治療前の肝機能にもよりますが、治療後数ヶ月で肝機能異常を認めることがありますが、基本的には一過性です。もともと肝機能が悪い方では、まれに肝不全を認めることがあります。腫瘍の部位によっては肺の一部が照射されるため、肺腫瘍の場合と同様に肺炎による症状を認めることもあります。
このような副作用の出現をチェックするためにも、治療後の定期的な診察と検査が必要となります。

入院は必要ですか?

  • 基本的に外来通院で治療可能ですが、ご自宅が遠方であるなど、入院のご希望があれば、入院も可能です。

費用は?

  • 平成16年4月1日より保険適応となりました(63万円)。

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