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研究トピックス
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■研究トピックス一覧
H25-1 南大洋の深海底で巨大砂丘(セディメントウェーブ)を新発見〜南極暴風圏での海洋調査による成果〜
H20-1 最終融氷期における北太平洋中層水循環強度の変遷
H20-2 珪質鞭毛藻とエブリディアン化石を用いた中期始新世の北極海環境復元
H20-3  ベーリング海と北太平洋亜寒帯中央部における珪藻沈降フラックスと海洋表層環境変動 との対応を探る長期時系列観測
H19-1  台湾チュルンプ断層帯における炭素量の低下
H18-2  台湾チュルンプ断層の熱履歴を岩石磁気学的に推定
H18-1  四国沖における第四紀後期の新たなテフラ層序を確立



■研究トピックス詳細

研究課題

南大洋の深海底で巨大砂丘(セディメントウェーブ)を新発見
〜南極暴風圏での海洋調査による成果〜

論文タイトル Sediment waves on the Conrad Rise, Southern Indian Ocean: implications for the migration history of the Antarctic Circumpolar Current
著者 Oiwane, H., Ikehara M. et al.
ジャーナル Marine Geology
内容  高知大学海洋コア総合研究センターの池原実准教授,国立極地研究所の大岩根尚研究員,野木義史教授,菅沼悠介助教らによる共同研究チームが,南大洋(南極海)(注1)のインド洋区において深海底調査を実施しました。その結果,南極昭和基地の北方約1500km付近の深海底にあるコンラッドライズと呼ばれる海底の高まりに巨大な砂丘の様な地形(セディメントウェーブ)を新たに発見しました。このセディメントウェーブの大きさは,波状構造の一つ一つが鳥取砂丘とほぼ同じ程度の規模で,南極大陸の周りを周回する表層海流である南極周極流の流れに起因して形成されたものであると推測されます。また,マルチチャンネル反射法地震探査によるセディメントウェーブ形成史の解析の結果,南大洋ではおよそ150万年前前後に大きな海洋構造の変化が起こり,南極周極流がこの時代に北上して現在とほぼ同じ場所を流れるようになったことがわかりました。この研究成果は,温暖な気候だった鮮新世から気候が寒冷化していく時代において南大洋がどのように変化してきたのかを解き明かすための重要なステップとなります。
公表日 2013年10月

研究課題 最終融氷期における北太平洋中層水循環強度の変遷
論文タイトル Intermediate water ventilation change in the subarctic Northwest Pacific during the last deglaciation
著者 Sagawa, T. and Ikehara K. et al.
ジャーナル Geophysical Research Letters 2007.
内容 北海道十勝沖より採取された海底コアについて,底生・浮遊性有孔虫の酸素同位体比とMg/Caの分析を行い,最終融氷期における海洋中層・表層の水温・塩分変動を復元した.中層水の水温と塩分は同調して変動しており,コアの平行葉理が観察される層準(約15ka,11ka)において高い水温と塩分を示した.さらにこれらの層準で底生と浮遊性有孔虫の放射性炭素年代差が大きくなることを併せて考えると,これらの時代に中層水循環強度が弱くなったことが推測される.また,海洋表層の塩分は約15kaに大きく低下しており,表層環境の変化が中層水循環強度に影響を与えていた可能性を示唆する.
公表日 2008年12月

研究課題 珪質鞭毛藻とエブリディアン化石を用いた中期始新世の北極海環境復元
論文タイトル Eocene silicoflagellate and ebridian paleoceanography in the central Arctic Ocean
著者 Onodera, J., Takahashi, K., and R.W. Jordan
ジャーナル Paleoceanography, 23, PA1S15, doi:10.1029/2007PA001474, 2008..
内容 北極海中央部ロモノソフ海嶺においてIODP Exp. 302が採集した中期始新世のコアについて、珪質鞭毛藻とエブリディアンの化石群集による古海洋環境復元を試みた。分析対象の岩相Unit 2 (49.7-45.1 Ma)では、北大西洋など周辺海域の化石群集と比べて独自の群集組成がみられた。他の微化石群集組成も併せると、当時の北極海の表層水は汽水(一部淡水)であったと考えられている。したがって、北極海の低塩分表層水と周辺海域の高塩分水との間には塩分フロントが存在した可能性があり、海域間での表層水塊の混合の度合いが今回得られた独自の群集形成に影響したことが推察された。海洋循環は現在の黒海やバルト海のようなEstuarineタイプで、岩相などから下部水塊は貧酸素環境であった。また、本試料ではエブリディアン化石の含有量が一部層準で高かった。現生種のHermesinum adriaticumが大増殖する際の生態に基づくと、下層の貧酸素水塊が有光層下部付近に存在していた可能性もある。

公表日 2008年2月

研究課題 ベーリング海と北太平洋亜寒帯中央部における珪藻沈降フラックスと海洋表層環境変動との対応を探る長期時系列観測
論文タイトル Long-term diatom fluxes in response to oceanographic conditions at Stations AB and SA in the central subarctic and the Bering Sea, 1990-1998
著者 Onodera, J., and K. Takahashi
ジャーナル Deep-Sea Research I, 56, 189-211, doi:10.1016/j.dsr.2008.08.006, 2009.
内容 珪藻沈降フラックスと海洋表層環境との関係を探るため、1990年から1998年までベーリング海Station ABおよび北太平洋亜寒帯北部中央域Station SAで得られた時系列セディメントトラップ試料が分析された。全珪藻フラックスは基本的にStation ABのほうがSAより約2倍高かった。珪藻沈降群集の優占種はNeodenticula seminaeであり、粒状有機炭素フラックスに重要な貢献をしていた。秋から始まる全珪藻フラックスの12か月平均値と混合層厚の12か月平均値との間で負の相関係数が得られた。Station SAでは全珪藻フラックスの年平均値と北太平洋準十年変動指数(PDO index)との間で負の相関係数が得られた。この結果は、珪藻生産と表層水塊の(特に春先の)鉛直混合強度の有意な関係を示唆している。同様にStation ABでは沿岸珪藻グループのフラックス年平均値が、PDOや冬季の北極振動指数(AO index)と有意な相関係数を示した。これはAlaskan Streamのベーリング海への流入と表層水塊混合との関係を示唆するものと推察された。
公表日 2009年1月

研究課題 台湾チュルンプ断層帯における炭素量の低下
論文タイトル Low total and inorganic carbon contents within the Chelungpu fault system
著者 Ikehara, M., T. Hirono, O. Tadai, et al.
ジャーナル Geochemical Journal, 41, 391-396, 2007.
内容 1999年に台湾で発生したチチ地震によって滑ったチュルンプ断層帯を掘削したコア試料について,元素分析計によって全炭素濃度を,クーロメーターによって無機炭素濃度を定量した.その結果,HoleBの深さ1136m付近に存在する黒色ガウジ帯と,1194m付近および1243m付近に存在する黒色物質層において,その上下の基質堆積物に比べていずれも炭素量が有意に減少していることを発見した.これは,断層が動いた際に生じた高温環境によって炭素が溶融した可能性を示唆している.
公表日 2007年10月

研究課題 台湾チュルンプ断層の熱履歴を岩石磁気学的に推定
論文タイトル Thermal history estimation of the Taiwan Chelungpu fault using rock-magnetic methods
著者 Mishima, T., T. Hirono, W. Soh, and S.-R. Song
ジャーナル Geophysical Research Letters, doi:10.1029/2006GL028088, 2006.
内容 1999年に台湾で発生したチチ地震によって滑ったチュルンプ断層帯を掘削したコア試料(TCDP Hole B)について,岩石磁気学的手法を用いて熱履歴を推定した.その結果,断層帯に特徴的に産する黒色物質層(BM disk)では,常磁性鉱物の熱分解によって磁鉄鉱(マグネタイト)あるいは磁赤鉄鉱(マグヘマイト)が生成することによって,帯磁率が顕著に増大していたと考えられる.その被熱温度は400度以上であったと推定される.
公表日 2006年

研究課題 四国沖における第四紀後期の新たなテフラ層序を確立
論文タイトル 四国沖から採取された2本のIMAGESコアを用いた第四紀後期におけるテフラ層序
著者 池原実,村山雅史,多田井修,外西奈津美,大道修宏,川幡穂高,安田尚登
ジャーナル 化石, 79, p.60-76, 2006.
内容 北西太平洋四国沖から採取された2本のIMAGESコア(MD01-2422, MD01-2423)について,岩相層序,浮遊性有孔虫の酸素同位体比層序,放射性炭素年代に基づき,コアの年代モデルを確立するとともに,挟在するテフラを同定し,四国沖のテフラ層序(tephrostratigraphy)を新たに提示した.
帯磁率異方性(AMS)解析によると,MD01-2422コアの上部14mはピストンコアリング時の吸引効果によって堆積物が顕著に引き延ばされていることを示した.
MD01-2422コア(四国沖陸棚斜面)およびMD01-2423コア(土佐海盆)の中に計6層の火山灰層を記載し,それぞれのテフラ層から産出する火山ガラスの屈折率に基づき,上位から鬼界アカホヤ(K-Ah),姶良Tn(AT),姶良岩戸(A-Iw),姶良福山(A-Fk),阿多鳥浜(Ata-Th),加久藤(Kkt)と同定した.MD01-2422コアの浮遊性有孔虫の放射性炭素年代から推定すると,ATの噴出年代はおよそ28.1-28.3 cal kyrである.他のテフラ層を酸素同位体曲線と比較すると,A-Iwは酸素同位体ステージ(MIS)4/5境界に,A-FkはMIS 5.5に,Ata-ThはMIS 8.1に,KktはMIS 9.2に噴火したと推定される.

公表日 2006年1月