プロジェクトの目的 | |||||
近年の電子機器類の小型化・高性能化といった技術革新にともない,多岐にわたる元素が使用されることになった。その中でも,高度な技術を支える元素として,特にコバルト,ニッケル,リチウムなどといったレアメタルの重要性が増してきている。レアメタルは,特定の非鉄金属グループ(日本では31鉱種,)を示す言葉として使われる。レアメタルの中の1鉱種としてレアアースがある。原子番号57番から71番のランタノイドおよびスカンジウムとイットリウムが含まれる。日本は,世界トップレベルにある電子機器類等の原材料であるレアメタルを,すべて輸入に頼らざるを得ない状況にある。特にレアアースに限ってみると,現在の技術および環境基準の関係上,コスト的に安く生産できるのは中国だけであり,世界情勢によっては資源調達が不安定になるなど大きなリスクを抱えている。 そのような,金属資源に関する世界的な情勢に鑑みて,近年非常に注目されているのが,日本の排他的経済水域に存在する海洋底資源である。日本の近海の熱水鉱床,マンガン団塊およびコバルトリッチクラストには,比較的高濃度のレアメタルが存在することが明らかになってきており,独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)では,経済産業省の委託を受けて,国家プロジェクトとしての海洋鉱物資源開発に向けた取組みが行われている。その一方で,最適な採掘方式,処理技術,環境対策の検討に不可欠となる分布実態,性状,特性等に関する知見が不足している。さらに,資源関連の研究者の高齢化および後継者不足も深刻な問題になりつつある。 このような背景のもと,高知大学では全国に先駆けて,平成25年度概算要求事項として「レアメタル戦略グリーンテクノロジー創出への学際的教育研究拠点の形成」プロジェクトを申請し採択を受けることになった。 本プロジェクトでは,修士課程の学生を対象として,「海洋鉱物資源科学」準専攻を開設した。この準専攻では,総合人間自然科学研究科修士課程の各所属専攻分野の履修に加えて,関連する最先端研究に取り組むことにより,海洋鉱物資源科学をキーワードとした,独自性が高く,高度な知識と技術を身につけたユニークな人材育成を行う。カリキュラム的には,海洋鉱物資源の分布・起源・形成過程・特性等について基本的な知識を身につけるとともに,その探査・開発・管理に関する理解および経済的・経営的思考力を養成するよう工夫されている。(図1参照)これにより,所属専攻の学問分野を深めつつ,鉱物資源のマテリアルフロー全般にわたる広範な専門的知識を身につけ,化学,物理,地学の素養を有し,資源開発技術を支える研究・開発能力を有する次世代の人材育成を行う。 研究面に関しては,海洋鉱物資源を中心としたレアメタルの調査・研究・特性把握,海洋鉱物資源からのレアメタル抽出・精錬に関するグリーンテクノロジーの開発,省資源化を基軸とするレアメタル応用機能材料・反応プロセスの開発を基本戦略とした革新的テクノロジー等に関連した知識と技術に関する領域横断的な教育研究プロジェクトを推進する。幸いにも,本学には高知県の地理的優位性を最大限に活かした全国共同利用施設として,海洋コア総合研究センターがあり,センターの冷蔵保管庫には,世界中の最先端のコア試料があることもプロジェクト推進の原動力の一つとなっている。
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