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タイプ標本とは

 タイプ標本とは,新たに種の学名を付けるための記載論文中で使用され,学名の基準として指定された標本(あるいは標本シリーズ)のことです.そのうち,種の学名の基準となる単一の標本を「ホロタイプ」(担名タイプ)として新種記載の際に原記載で指定します.タイプとなる標本が複数個体ある場合には,その中の1個体をホロタイプとし,残りのタイプシリーズを「パラタイプ」に指定し,ホロタイプに準ずるものとします.複数個体のパラタイプは,種の計数や計測形質,形態形質などの変異幅を示すために必要です.しかし,学名の基準は,あくまでホロタイプとなった1個体にあります.また,新種を記載する際に,古い時代にはとくにタイプシリーズの中でホロタイプが指定されなかった場合があります(この場合,それぞれの標本を「シンタイプ」という).これも学名の混乱をさけるために,その種の属するグループの分類学的再検討の研究の中で,ホロタイプに相当する1個体の標本を「レクトタイプ」として,後にシンタイプの中から選んで指定することがあります.標本が複数ある場合は,残りのシンタイプが自動的に「パラレクトタイプ」となります. これらの担名タイプ標本がすべて失われた場合には,タイプ標本が採集されたその種の基産地から,新たに得られた標本を「ネオタイプ」として指定する場合があります.この指定は,学名の混乱を解決するために行われ,その種が属するグループの分類学的再検討の研究に基づいて指定されることが条件です(その場合に有効なネオタイプとして認められる). 海洋生物学研究室のタイプ標本のうち,戦前に蒲原博士により記載されたすべての種のものは,不幸にも第二次世界大戦中の昭和20年の7月4日の高知市の空襲により焼失してしまいました.これらの種について,戦後に蒲原博士がタイプ標本が採集された産地から再び採集した標本に基づきネオタイプを指定しています(Kamohara, 1961).しかし,この論文では,それぞれの種に十分な記載が与えられておらず,これらのネオタイプ指定が有効であるかどうかは,国際動物命名規約(第4版,2000)に照らし合わせて見る必要があります. クラカケザメ Cirrhoscyllium japonicum Kamohara, 1943 の場合では,Goto & Nakaya (1996)が,この属の分類学的再検討の中で本種の再記載を行いました.その中で,Kamohara (1961)ネオタイプとして指定したBSKU 3656 の標本(無効と判断されたもの)を,再び有効なネオタイプとして詳細な記載に基づき指定しています.

Goto, T. and K. Nakaya. 1996. Revision of the genus Cirrhoscyllium, with the designation of a neotype for C. japonicum (Elasmobranchii, Parascylliidae). Ichthyol. Res., 43(3): 199-209.

(遠藤広光)


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