「ウイルス受容体」の迅速解析法を開発 〜未知のパンデミックウイルスの緊急解析にも有用〜
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医学部生化学講座の本家 孝一 特任教授、埼玉医科大学の小谷 典弘 教授や村上 孝 教授などらによる共同研究グループは、ウイルスが宿主細胞に結合する際に関与する細胞表面分子群(「ウイルス受容体注1)」と総称)を効率よく同定する新たな方法を開発しました。ウイルス受容体に関する情報は、ウイルスの感染機構の理解に重要であるだけでなく、抗ウイルス薬の標的探索にもつながります。しかし、ウイルスによっては複数の受容体や共受容体が関与するためそれらの同定は困難で、既知のウイルスであっても受容体は十分に解明されていないという例が少なくありません。
本研究では、受容体同定に初めて近接標識法(Proximity Labeling: PL)注2)を導入し、特殊な遺伝子組換えウイルスである偽型ウイルス(Pseudovirus)注3)を用いることで、複数の受容体候補分子を一度に同定する新規手法の確立に成功しました。パンデミック注4)を引き起こす可能性のあるインフルエンザウイルスについての解析結果から、新たな受容体候補分子としてNeuropilin-1(NRP1)が同定され、インフルエンザウイルスの宿主細胞への結合に重要な役割を果たすことが明らかとなりました。
本研究の成果は、2026年4月29日に米国微生物学会(American Society for Microbiology)が発行するウイルス学専門国際誌「Journal of Virology」にオンライン掲載されました。
■論文の情報■
論文名:Pseudovirus-mediated proximity labeling identifies candidate host cell membrane proteins involved in viral attachment.
雑誌名: Journal of Virology(American Society for Microbiology)
著 者: Norihiro Kotani, Kensuke Iwasa, Tomoko Amimoto, Chikara Yamashita, Kumiko Komatsu, Yutaka Narimichi, Yoshiki Wakabayashi, Yuuki Kurebayashi, Yutaka Horiuchi, Leona Kashimata, Ryoko Sasaki, Megumi Kumagai, Nan Yagishita-Kyo, Takeo Awaji, Takashi Murakami, Yosuke Mizuno, Miyako Nakano, Tadanobu Takahashi, Hideyuki Takeuchi, Koichi Honke
掲載日:2026年4月29日
U R L : https://journals.asm.org/doi/10.1128/jvi.00507-26
注1)ウイルス受容体:ウイルスが細胞に感染する時に必要な宿主細胞表面の分子。複数の分子が感染に必要なウイルスも存在する。
注2)近接標識法(Proximity Labeling):自身が研究対象とする分子の近傍に存在する分子群を標識してそれらの実体を明らかにする実験手法。
注3)偽型ウイルス(Pseudovirus):本物のウイルスの表面だけを再現して、感染のしくみを比較的安全に調べるために作られた実験用ウイルス。病原性や複製に必要な遺伝子を欠損させている。
注4)パンデミック: 多くの人が免疫を持たない世界的な流行病。パンデミックウイルスとは、これを引き起こす恐れのあるウイルス。コロナウイルスがその1例。
