研究紹介

研究画像

口腔扁平上皮癌細胞由来エクソソームに関する研究

新規診断・治療法の開発に向けた口腔扁平上皮癌細胞由来エクソソームの解析

PKH26-labelled exosomeのOSC細胞への取り込み

 エクソソームは分泌細胞の特性を反映した種々の物質を内包し、血液などの体液にも存在することからバイオマーカーとしての有用性が示唆されています。そこで、口腔扁平上皮癌細胞由来エクソソームに特異的に発現する分子を同定し、口腔癌患者の血清、唾液、尿より回収したエクソソームにおいて発現されている同定分子の解析を行うことにより、癌の診断・病態・治療感受性・予後予測マーカーとしての有用性を検討しています。


エクソソーム取り込みを標的とする口腔癌治療薬の探索

 癌細胞が分泌するエクソソームは、癌細胞および周囲の間質細胞に取り込まれ、エクソソーム内包物質を介して下流のシグナルを活性化し、癌の発育・進展を促進することから、我々はエクソソームの口腔扁平上皮癌細胞への取り込み機構について検討するとともに、エクソソームの取り込み阻害作用を有する口腔癌治療薬の探索を行っています。

口腔癌の抗がん剤耐性機序の解明に関する研究

細胞老化による口腔癌の抗がん剤耐性獲得機序の解明

 近年、DNA障害を受けた細胞は細胞老化に陥り、炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックス分解酵素、増殖因子などの様々なたんぱく質やエクソソームといった生理活性物質を分泌するSASP(細胞老化関連分泌現象)と呼ばれる現象を引き起こすことで、細胞周囲の微小環境を変化させ、発がんや癌の進展を促進することが明らかになってきています。そこで、口腔癌の抗がん剤耐性獲得における口腔扁平上皮癌細胞および間質細胞の細胞老化とSASPの関与について検討しています。

口腔癌における腫瘍関連マクロファージによる抗癌剤耐性機序の解明

 炎症性がん微小環境を形成する主要細胞の一つである腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、癌細胞の増殖促進、血管新生の誘導、抗腫瘍免疫の抑制などを介して癌の悪性進展を促進するだけでなく、これまでに、化学療法を受けた癌患者組織や担癌マウスに浸潤し、抗癌剤の耐性獲得にも関与することが報告されていることから、口腔扁平上皮癌の抗癌剤耐性獲得におけるTAMの関与について検討しています。

口腔扁平苔癬発症におけるインフラマソームの関わり

 口腔扁平苔癬(OLP)の病因は未だ明らかにされていませんが、局所におけるサイトカイン産生の亢進に基づく粘膜上皮細胞に対する過剰な免疫反応の可能性が示唆されています。近年、外来性および内在性の危険分子を認識してcaspase-1を活性化し、サイトカインの分泌や細胞死を促す細胞質内タンパク質複合体:インフラマソームが種々の疾患に関わることが明らかにされつつあることから、OLPの発症および病態におけるインフラマソームの関わりについて検討しています。