教授挨拶

瀬尾 智先生の写真
2023年1月1日付で高知大学外科学講座(消化器外科学、乳腺・内分泌外科学、小児外科学)の教授を拝命いたしました瀬尾智と申します。皆様よろしくお願いいたします。

当科は、消化器外科・乳腺内分泌外科・小児外科を担当し、高知県民の健康長寿日本一を目指して高難度手術の施行および最先端の医学研究を推進するだけでなく、将来を担う医学生、研修医および若手外科医の育成教育にも専念しております。

高知医科大学建学の精神、「敬天愛人」「真理探究」を達成するため、教育・研究・診療について以下を実践します。

教育

これまでの外科教育は臨床で手技を教えるon the jobトレーニングのみが行われてきましたが、施設間で症例数や指導医の技量にばらつきがあることが問題でした。近年日常の業務から離れて研修を行うoff the jobトレーニングが注目され、インターネットを用いた座学やブタを用いた手術手技トレーングが多くの施設で導入されています。私は前任地の京都大学で2018年からご遺体を用いた手術手技トレーニングであるカダバートレーニングを立ち上げ、外科解剖教育として確かな手ごたえを感じています。また、実際の手術同様腹腔鏡用モニターに映し出される解剖は、外科離れが顕著な学生教育にも一石を投じると確信しております。今後解剖学教室と連携して高知大学でもカダバートレーニングを充実させたいと考えております。

このように学生教育および若手外科医教育においてon the jobとoff the jobの両面からアプローチすることで外科の魅力を伝え、高知大学で外科医を目指す学生の増加に繋げるだけでなく、手術手技習得までの期間を短縮させ、全国から若手外科医が集まるトップランナー養成所にしたいと考えています。

研究

外科学講座の研究で重要な点は、Academic Surgeonの育成と臨床への還元です。臨床研究はクリニカルクエスチョンから生まれガイドラインに繋げることが、基礎研究は病気の本質を深く理解し、メスに宿すことが重要です。当科ではエビデンス構築ができる外科医の育成に注力し、基礎研究では論文のための研究をしない真理の探究を実践します。また、技術の進歩は不可能を可能にしています。私は前任地でAMED支援下に、不可能と考えられていたリアルタイムナビゲーション肝切除を可能にするMIPSの開発に携わり、薬事承認、販売開始までを経験しました。今後も医工連携に力を入れ、高知大学で開発した治療・デバイスで高知県民に最新の医療を提供したいと考えています。

診療

高知県の特徴は高齢化率が35.5%と高く、中山間地域が多く医療機関へのアクセスが悪いこと、訪問看護・診療が不足し偏在していることです。広い医療圏で高齢患者に対して癌診療を行う際に重要なのは、「低侵襲」と「病診連携」であると考えます。私は前任地で腹腔鏡手術の研鑽を重ね、10年間で腹腔鏡下肝切除症例数を4倍に増加させました。精緻で根治性の高い腹腔鏡手術を短時間で行うことは、在院期間の短縮および早期の社会復帰に繋がります。

当科では地域の医療機関と密にコミュニケーションをとり、医療資源配置の最適化を行い、入院・手術・在宅まで切れ目のない医療を行うことで、高知県が目指す「県民の誰もが住み慣れた地域で、安心して暮らし続ける」の実現に全力を注ぎたいと考えています。

これまでの歴史と伝統をふまえつつ、独自性を加えて「任せてください。」と自信をもって言えるプロフェッショナル集団にしていきたいと考えています。

あたたかいご支援とご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。
教授 瀬尾 智
高知大学医学部外科学講座外科