高知大学医学部 看護学科 臨床看護学講座 溝渕研究室

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ユズ果汁には腸内環境改善効果がある!?

今回はユズ果汁が持つ、腸内環境改善効果についてご紹介します。

 ユズ果汁にはクエン酸などの有機酸やビタミンCが豊富に含まれていています。有機酸には胃の運動を活発にする効果があることが知られています。さらには、近年、全国の研究機関で研究が進んでいるフラボノイドという物質を大量に含んでいることが分かってきました。フラボノイドは、赤ワインやチョコレートに豊富に含まれていることで有名ですが、血圧降下作用、ストレス緩和、抗酸化作用など、さまざまな効果が報告されており、健康維持に寄与すると考えられています。
 つまり、これまで食品として利用されてきたユズ果汁は優れた機能性素材である可能性があることになります。
 我々は、ユズ果汁をマウスに与え、糞便中に含まれる、腸内善玉菌の代表選手である乳酸菌数の変化を調べました。

 下の写真は実際の乳酸菌の生育状態です(図1)。この培地は、乳酸菌が生えると赤い点として発色します。赤い点をコロニーといいます。ユズ果汁を飲んでない群を対照群とし、飲んだ群をユズ果汁群としました。コロニーの数を比較してみてください。ユズ果汁群のコロニーの数が顕著に増加しています。つまり、ユズ果汁を飲むことで腸内善玉菌である乳酸菌を増やす効果があることがわかりました。

投与4週間後の乳酸菌数

(図1)


 マウスにユズ果汁を4週間にわたって投与し、便を採取して乳酸菌数(コロニー数)がどのように変化するかを調べた結果をグラフにしました(図2)。マウスにユズ果汁を与えると、時間経過とともに乳酸菌数が顕著に増加しました。

経時的乳酸菌数の変化

(図2)


 投与4週間後に対照群とユズ果汁群を比較すると、ユズ果汁群で22倍以上も乳酸菌数が増加していました(図3)。善玉菌である乳酸菌が増加すると、腸内環境の改善効果が期待できます。その一例として、ユズ果汁投与によるマウスの糞便量への影響を調べました。投与4週間後に対照群と比較すると、ユズ果汁を投与することで、糞便量が増加していました(図4)。排便量の増加も、ユズ果汁に腸内環境改善効果があるとする一つの根拠となります。

投与4週間後の乳酸菌数

(図3)

マウス糞便量

(図4)


 我々は、これらの研究結果から、ユズ果汁には腸内環境改善効果があることを確認しました。そこで、ユズ果汁を使った、腸内環境改善を目的とした食品の開発に着手することとなりました。酸味の強いユズ果汁を毎日美味しく食べていただくために考えられたのが、ゆずゼリーです。このゼリーには、ユズ果汁の効果を増強する目的で、水溶性食物繊維であり、腸の動きを活発にするβ-グルカンを添加しました。

 平成29年4月から平成31年3月まで、『こうち農商工連携基金』の事業として、ゆずゼリーの人に対する腸内環境改善効果の有効性に関する臨床試験を実施しました。

臨床試験 実施方法

(図5)


 図5は、臨床試験のスケジュールです。便秘がちな方々にゆずゼリーを3ヶ月間食べていただき、その効果を検証しました。臨床試験中には、医師による問診と3回の採血、副作用の有無を確認し、(表1)に示す項目を血液検査にて計測しました。

血液検査項目

(表1)

 腸内環境改善効果の指標にはCASと呼ばれる便秘評価尺度(表2)を用い、便秘の程度を数値化しました。CASはスコアが高得点であるほど便秘傾向が強いことを示しています。

日本語版便秘評価尺度

(表2)


 ゆずゼリーを摂取していただくとCASスコアが低下し、便秘改善効果が顕著に現れました(図6)。この効果には男女差はなく、便秘がちな方はどなたでも効果が期待できます。また、血液検査結果や医師による問診の結果から副作用が見られないことも確認済みです。

CASの推移(男女別)

(図6)


 臨床試験で使ったゼリーを『ゆずちゃんゼリー』として販売する準備を進めています(図7)。毎日摂取していただけるよう、飽きのこない美味しいゼリーに仕上がっています。

ゆずちゃんゼリー

(図7)


 この研究には、県内の複数の病院に参加していただきました。高知大学医学部附属病院をはじめ研究への参加病院の給食に『ゆずちゃんゼリー』の採用が予定されています。病院食として、または健康に役立つデザートとして『ゆずちゃんゼリー』が皆さんのお役に立つことを願っています。

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