高知大学へ入学を許可された諸君、ご入学おめでとうございます。在校生、教職員を代表してお祝いと歓迎の言葉を贈ります。本日ご列席の保護者の皆様方、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。また、ご臨席賜りました来賓の皆様、有り難うございます。
諸君は、熾烈な受験生活を乗り越えられて、高知大学という難関を突破され、晴れて今日の日を迎えた訳ですが、これまで積み重ねてきた諸君の努力に対して、心から敬意を表します。
　同時に諸君がここまで来ることが出来たのは、諸君自身の努力によることはもとより、これまで君達を支えて下さった保護者の皆様ならびに恩師、友人など、近くで諸君を見守って下さった多くの方々のご支援の賜であることを胸に刻み、それらの方に対する感謝の気持ちを忘れてはなりません。
さて、諸君がこれまで学んできた勉強は、正解が用意されており、しかも正解は一つしかない問題を解くものであったはずです。言ってみれば、決められたことを、決められたやり方で理解し記憶すれば良いという、極めて単純な学びでありました。これに対して、これから始まる大学生の学びは、解答が複数あるものや、場合によっては正解が用意されていない命題も多く、しかも自分で問題を発見して、それを解決する方策と知識・能力を身につけることであります。そのような能力を身につけるためには、常に自律的、能動的に、目前にある問題を感じ、発見し、具現化し、その解決策を考え、考えたことを伝え、実践し、さらに解決した結果の意義を検証することが求められます。一言で言うならば、それは何か、を自問自答することのくり返しであります。それが、諸君の学びの場が学校から大学へ変わり、諸君が生徒から学生に変身したことの証しとなるのであります。
　諸君が何を学び、どのような能力を身につけるべきであるのかを知ることは、諸君自身が何者であり、何処から来て何処へ行こうとしているのか、を知ることでもあります。そして、諸君自身が、何を何処まで分かり、どこまで解決できたのか、解決できていないことがらとその理由は何か、を知るためには、優れた情報収集力に加えて、議論というコミュニケーション力を身につけることも必要です。その成果は、諸君が自分で計画を立て、その計画を実行し、成果を検討して検証し、新たな目標を設定する、いわゆるPDCAサイクルを回すことが可能となることで、体感できるはずです。
これからは、分からないことを、安易に教員に質問して、教えてもらうという受動的な学びは、昨日までのことと忘れて下さい。そして、専門領域だけではなく、様々な教養を深めるための学びの中で、もがき苦しんで頂きたい。そのようにして身につけた、深く豊かな教養こそが、専門的知識と融合して、二十一世紀の社会が求めている能力、すなわち自ら問題を発見し、自ら解決する能力、指導力、協調力、チーム力などを修得させるのです。
高知大学は、これまで以上に地域に根ざし、二十一世紀が求める地域と共に発展する大学に進化するという固く強い意志をもって、改革を進めているところであります。私たちは、チャンス、チャレンジ、チェンジ、クリエイトの四つのCを標榜して前進しております。諸君は、高知大学で学ぶ機会を与えられたことを、絶好のChanceととらえ、常にChallenge精神を持ち、受け身の学習者から能動的、自律的な学修者へと自己改革Changeして、新たな人格と能力を身につけた自分をCreateする努力を、今日から始めて下さい。この高知大学が掲げている四つのCは二十一世紀のリーダー候補生というべき、国立大学法人高知大学の学生となった諸君にも、相応しい目標であります。
高知大学は国の支援、すなわち莫大な国税を使って、教育・研究することが許されている教育・研究機関であります。諸君は、莫大な国税によって教育を受け、自らを高める権利、すなわち、エリート候補生だけが享受可能な権利を手にしたのであります。そのことに大きな誇りを持って下さい。権利には、必ずその大きさに見合った責務が伴っております。エリートにとっての責務は、高いプライドと厳しい規範意識を身につけることであり、社会に大きく貢献することであります。諸君は、この国で、そして国際社会で活躍するリーダー候補生として、いたずらに権利を主張するのではなく、リーダーサーヴァントとして、如何にして社会に貢献するか、ということを考えながら学んで下さることを期待しております。
最後に、時は金なりといいますが、四年間という時の流れは、想像以上に速いものであります。諸君に次の言葉を贈り、学長告辞とします。
水は自然の恵みにして、時は宇宙の恵みなり。それ水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。水を粗略にするものは飢え、時を軽んじるものは迷う。
諸君、汝何が故に此処にありや。学びたまえ、悩みたまえ、そして遊びたまえ。
入学おめでとう。 

平成25年4月3日
国立大学法人高知大学
学長　脇口　宏