研究について
研究概要
本拠点では、PL(平岡)が確立した陸上養殖での有用な海藻生産のコア技術と、高知大学海洋生物教育センターが45年以上にわたり漁協や自治体と共同で培ってきた海面養殖のノウハウを基盤に、四万十川という海藻消滅のモデル地域において持続可能な海藻生産を実現することで、持続可能な海藻生産の世界モデルとなることを目指します。本プロジェクト期間では海藻の生産拠点を確立して経済的な効果を生み出し、海藻の食品や工業製品へ活用していくための土台を確立していきます。
これまでに、国内では、有明海、瀬戸内海、伊勢湾周辺の海藻生産者から、海藻の生産量が減少し、対策を求める相談が多数寄せられています。この四万十市を起点とした海藻養殖の基盤整備を通じたイノベーションを高知県内だけでなく国内外の海藻が育たなくなり経済基盤が大きくダメージを受けた地域に展開していきます。一方で、高知大学では、海藻資源を保存するために20年以上かけて採取・保管した数百種類の海藻ライブラリを管理しており、この取り組みを継続して多様な海藻種を持続的に守っていくことも我々の役目です。
プロジェクトでは、様々な課題の解決に向けて取り組んでいます。
清流四万十川の海藻資源回復
現在ゼロとなっている海藻生産量を回復させるため、陸上養殖の推進と海面養殖の復活を実行します。具体的には、高温耐性株の樹立、網養殖の最適条件と場所の調査、商業レベルでの様々な食用海藻の陸上養殖技術の確立、新型養殖タンクと自動化システムの開発、農業肥料残渣を海藻養殖に再利用する海藻養殖方法の検討を進めます。また、消えゆく海藻を未来に繋げるために日本各地での海藻の採取とその保管を継続的に推進します。
魚介類と海藻の複合養殖システムの構築
魚介類を陸上養殖するための課題として排泄物の処理を効率的に行うことが求められています。そこで排泄物を海藻の栄養源として利用することで、過剰な栄養塩を海藻に吸収させて、魚介類の排泄物による環境への負荷を減らし、海藻の生産効率を高めるようなシステムの構築を目指します。具体的には、魚介類と海藻の小規模複合養殖システムの試験や育てた海藻をそのまま飼料として利用する方法の検討を進めます。
スマート海藻養殖システムの研究開発
持続的な海藻生産量を確保するために陸上養殖システムにおける省力化・機械化を進めます。具体的には、AIを用いた最適成長環境の導出とシステム開発、複数拠点での自動環境制御技術の実証試験を行います。
海藻ベースの飼料研究開発
海藻を配合した魚介類や家畜の飼料の開発を行います。具体的には、海藻を利用した低魚粉飼料の開発、海藻を添加した飼料による魚の成長促進と免疫応答の向上を目指した機能性の飼料開発を試みます。一方で、家畜の飼料としては、海藻を飼料に添加することで牛の肉質改善とメタンガスの削減を検討します。
カーボンニュートラルを目指した海藻資源の産業利用
海藻は成長した重量と同じ重量のCO2を固定し、持続的な環境保全に一定のインパクトがあると考えられます。利用方法ごとの定量的なインパクトを検証することと並行して、海藻を用いた健康食品・食品添加物・化粧品の開発、海藻残渣からの生分解性バイオプラスチックの開発を実施します。最終的には石油の代替として海藻を活用する未来を目指します。一方で、高知大学が所有する海藻ライブラリから新たな機能性成分の探索も実施していきます。
市民教育の改革
地域住民や次世代を担う若者が本拠点の活動を理解し、海藻関連の研究職、既存の海藻関連事業者の事業承継、新たな養殖システムや海藻資源を活用した起業、支援産業で活躍する多様な人材の育成を目指します。具体的には、本拠点に関連する内容の市民セミナー、アントレプレナー教育の実施。地方型創業・起業支援システムの構築を進めます。