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令和5年度「授業について考えるランチセミナー」<質的データの扱い方​​>が開催されました。

2024年1月17日

令和5年度「授業について考えるランチセミナー」<質的データの扱い方​​>が開催されました。

授業について考えるランチセミナーは、テーマを変えて、毎月第2・第3木曜日に開催しています。

テーマの詳細やお申込みについては、FD・SDの取り組み | 高知大ポータル (kochi-u.ac.jp)の、「授業について考えるランチセミナー」ページをご覧ください。

-----開催報告-------

開催日時

第1回: 12月14日(木)12:05~12:50

第2回: 12月21日(木)12:05~12:50

 

参加者数

第1回: 12月14日(木)65名

第2回: 12月21日(木)51名

 

コーディネーター・講師・登壇者

コーディネーター: 塩川 奈々美(徳島大学高等教育研究センター)

第 1 回: 講師: 塩川 奈々美(徳島大学高等教育研究センター)

第 2 回: 講師: 塩川 奈々美(徳島大学高等教育研究センター)

 

◆内容

第1回: まず講師より、今回は主に質的データおよび質的研究の特徴や、データの収集・分析の方法、質的データ分析時の注意点について説明する旨が提示された。

 まず質的データとその特徴について、以下のような説明が行われた。質的データとは、数値では表しにくいテキストや画像等のデータのことである。これらを分析することで、統計的な量的なデータの分析だけでは分からない、その中に潜む意味や深い考え方や考えに至るまでのプロセスについても明らかにすることができるという特徴がある。したがって質的データやその分析は、仮説生成に適した分析手法であるということができる。これらのデータはアンケートの自由記述やインタビューの他、観察や文献の収集といった幅広い方法で得られ、同様に幅広い学問分野で分析に用いられている。一方で質的データは収集が難しくサンプル数が限定されたり、分析手続きや解釈について分析者による偏りが生じたりする可能性があるという短所も同時に存在する。

講師からは、この特徴を踏まえて量的データと使い分ける必要がある点にも言及がなされた。  次に質的データの分析方法の流れとして、収集したデータのクリーニング、より細かい言語単位への分割、語のコード化やカテゴリー化、回答の分類(概念化)、さらに概念同士、あるいは回答者の属性等の外部変数との関連性を分析すること、の 5 つが示された。また質的データを分析する際には、データの内容の意味の中心、すなわち分析者がデータについてどのような点に関心をもっているか(行動か、感情か等)を明確にして、中心となる語を抽出することが重要であることが説明された。

 最後に、質的データ分析の注意点として、Excel 等を利用したデータ管理や、質的分析の特徴である解釈の多義性や恣意性を意識しながら分析を行うことの 2 点が提示された。


第2回: 今回は、前回の内容について振り返りを行った後、質的データの分析方法として、PC 上で動作する分析ツールである KH Coder を用いたテキストマイニングに焦点を当て、その機能や操作の仕方について説明が行われた。まず講師から、テキストマイニングの特徴として大量の文章データを分析することができ、それらの分析結果から語彙の出現頻度や結びつきを明らかにすることができる点が示された。テキストマイニングの長所としては、統計解析を用いることで、質的分析における課題であった分析の客観性が確保しやすくなることがある一方で、統計解析によって抽出できなかった少数の重要な概念やテキストを見逃してしまう、あるいは誤って解釈してしまう可能性が生じるといった短所が挙げられた。講師からはこれらの短所を補うための方法として、原文に定期的に立ち戻って文脈を確認する事や、アンケートであれば設問を工夫することが提案された。

 続いて、講師による実演を交えて KH Coder の各機能について紹介がなされた。今回は主に、データ中に登場する語彙の種類とその頻度を示す頻出語リスト、類似性の高い(出現する傾向が近い)語同士をグループ化する階層的クラスター分析、および、回答者の所属等の外部変数と掛け合わせることで外部変数と語彙との関連性を検討することのできる対応分析が紹介された。

 最後にテキストマイニングのポイントとして、固有名詞や人名等をあらかじめ登録することや、逆に分析対象から外す語の設定、表記ゆれの統一といった分析のための処理の重要性が講師から示された。さらに、このような適切な分析のために処理を行うためには、データ分析の結果を見ながら原文に立ち戻りつつ処理を行い、再度分析を行う、というサイクルの繰り返しが重要であることが挙げられた。

 

◆成果と課題

参加者アンケートを行った結果、「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、第 1 回・第 2 回とも全ての回答者から肯定的な回答 (「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計) を得ることができた。また、他の設問においても回答者の大半から肯定的な回答が得られた。

 

表 アンケート設問「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」回答結果

 

第1回(12 月 14 日)

第2回(12 月 21 日)

とても当てはまる

10(52.6%)

8(72.7%)

どちらかといえば当てはまる

9(47.4%)

1(9.1%)

どちらかといえば当てはまらない

0(0%)

2(18.2%)

まったく当てはまらない

0(0%)

0(0%)

合計

19(100%)

11(100%)

※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。

自由記述においては、テキストマイニングや KH Coder 等の、質的データの分析に関する方法が学べたといった具体的な内容に対するもののほか、質的研究自体に対する理解が得られたというものが多く見られた。また、質的研究とは何かについて学生に教える際の参考になった、という感想も寄せられた。総じて、自由記述の内容からは、質的分析やその方法を現に行っており即座に活用したいという教員と、将来的に活用を検討している教員の双方が参加していることがうかがえた。また希望や要望としては、KH Coder 等のツールを実際に参加者も動かしながら学んでいく、いわゆるハンズオンセミナーの実施に関するものや、TEM といったテキストマイニング以外の質的分析の手法に関しても知りたいといったものが寄せられた。

今回は主に質的分析の理論や実施の際の注意点、ならびにテキストマイニングに関して、講義形式を主として実施した。今後は参加者のニーズに合わせ、質的分析として紹介する手法や内容についてさらに検討を進めたい。

 

◆アンケート回答結果

第1回 (n=19)

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第2回 (n=11)

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■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)

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