高知大学 学びの質保証ユニットロゴ

イベント

HOME > イベント

令和5年度「授業について考えるランチセミナー」<オンデマンド授業の作り方>が開催されました。

2024年1月27日

令和5年度「授業について考えるランチセミナー」<オンデマンド授業の作り方>が開催されました。

授業について考えるランチセミナーは、テーマを変えて、毎月第2・第3木曜日に開催しています。

テーマの詳細やお申込みについては、FD・SDの取り組み | 高知大ポータル (kochi-u.ac.jp)の、「授業について考えるランチセミナー」ページをご覧ください。

-----開催報告-------

開催日時

第1回: 1月11日(木)12:05~12:50

第2回: 1月18日(木)12:05~12:50

 

参加者数

第1回: 1月11日(木)53名

第2回: 1月18日(木)44名

 

コーディネーター・講師・登壇者

コーディネーター: 高畑 貴志(高知大学学び創造センター)

第 1 回: 高畑 貴志(高知大学学び創造センター)

第 2 回: 高畑 貴志(高知大学学び創造センター)

◆内容

第1回: まず始めに、非同期型で行われる「オンライン授業」の一形態としての「オンデマンド授業」が大学の授業としてどのように位置づけられるか、大学設置基準等の各種法令を引用しながら説明が行われた。とくに強調された点として、これらの法令では、オンデマンド授業も含むオンライン授業には対面授業に相当する教育効果として学生と教員との双方向性が求められていることが挙げられた。これらの双方向性を担保するために、LMS 等を利用してテストや課題の添削、質疑応答、学生の意見交換の機会を設ける方法が紹介された。

加えて、オンデマンド授業の長所と短所についても教員と学生両者の立場から検討がなされた。具体的には、教員にとっては授業時間の制約や授業準備の手間から解放されるとともに、様々なデータを収集・分析することで学習状況の把握が容易になる一方で、学生とのコミュニケーションを確保する等の授業設計が難しいこと、テスト等における不正の監視が困難なことが例として挙げられた。あるいは学生にとっては、自分に合った時間・場所・ペースで学習できる反面、教員や他の学生とのコミュニケーションがとりづらく孤独感を感じたり、学習が学生自身の動機づけに大きく依存してしまったりするという可能性が示された。

続いて、これらの長所や短所を踏まえてオンデマンド授業を設計する際の理論的な枠組みとして、ADDIE モデルが紹介されたほか、オンライン研修における9 0/20/5 の法則、学生のオンデマンド授業への動機づけを高めるためのARCS モデル、アタッチメントやエンゲージメントといった心理的な側面に関連する概念や理論についても提示された。

最後に講師からオンデマンド授業における5 つのポイントとして、必ずしも講義動画は90 分でなくてもよいこと、学生が授業内容を内省する仕掛けを入れること、リアクションペーパーやワークシート等のアウトプットを求めること、学生に対してこまめなフィードバックを行うこと、掲示板等で意見交換・質疑応答を図ることが挙げられた。


第2回: 今回は、より具体的にオンデマンド授業の設計や作成方法について焦点を当てた内容が扱われた。まず講師が第1 回で寄せられた質問やコメントに回答した後、オンデマンド授業全体の構成が例示された。これらには、初回には教員への連絡方法を含めたガイダンス、各授業回でのコンテンツ、終了時には期末試験・レポートの他に授業に対する振り返り等が挙げられる。また各授業回において含まれるコンテンツの例として、動画等の情報提示コンテンツの他、前回の授業内容に関するフィードバックや学生が内容を振り返りアウトプットするための活動コンテンツ、小テストやリアクションペーパー等の評価コンテンツ、さらに学習を深めるための参考資料等を紹介する自主学習促進コンテンツ等が紹介された。

さらに、これらのコンテンツに関する工夫について、より掘り下げて紹介がなされた。例えば、小テストやクイズについては自動で採点し学生にフィードバックを行える機能を用いると共に、問題やフィードバック内容を工夫することで学生の学修をより促すことができるといったTipsが紹介された。他にも、掲示板をレポート課題のブラッシュアップの機会として用いたり、コメントやディスカッションの場として学修活動や課題に用いる、あるいは学生に安心感を持たせるための場として用いるといった方法のほか、フィードバックにおける労力を軽減する工夫、試験において不正行為を防ぐための工夫等が示された。

最後にオンデマンド授業における動画コンテンツの作成ツールとして、Zoom の録画機能やPowerPoint の記録ツールのほか、無償で使用できる動画編集ソフトClipchamp が紹介された。

 

◆成果と課題

参加者アンケートを行った結果、「5 . 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、第1 回・第2 回とも全ての回答者から肯定的な回答 「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計 を得ることができた。また、他の設問においても回答者の大半から肯定的な回答が得られた。

表 アンケート設問「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」回答結果

 

第1回(1月11日)

第2回(1月18日)

とても当てはまる

9(64.3%)

9(75.0%)

どちらかといえば当てはまる

5(35.7%)

3(25.0%)

どちらかといえば当てはまらない

0(0%)

0(0%)

まったく当てはまらない

0(0%)

0(0%)

合計

14(100%)

12(100%)

※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。

自由記述においては、ADDIE モデルやARCS モデルといった理論的な側面に言及しながらオンデマンド授業の作り方を学ぶことができたという感想のほか、欠席者に対する補講として実際にオンデマンド授業を実施している教員をはじめ、多くの参加者から実践に向けたヒントを得られたといったものがあった。一方で、実践事例をもっと聞きたいといった要望のほか、通信環境や個人情報にまつわるトラブルについての心配に関するコメントも寄せられた。

今回のセミナーは「オンデマンド授業」というテーマで行われたが、その中で解説された授業設計、動機づけ、エンゲージメントといった理論のほか、小テストやフィードバックといった実践的な工夫については、対面形式、とくに大人数の学生を対象に行われる授業においても十分に参考になるものであった。今後は実践事例や対面形式への適用も含め、今回の内容の多様な応用可能性について紹介することも有用であると考えられる。

 

◆アンケート回答結果

第1回 (n=14)

11.png

第2回 (n=12)

12.png

■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)

13.png

14.png

 

up矢印