令和8年度 高知大学・大学院入学式告辞
新入生の皆さん、本日はご入学、誠におめでとうございます。
数多くの進路の中から本学を選び、この日を迎えられた皆さん一人ひとりに、ご来賓の皆様と共に、教職員を代表して心からのお祝いを申し上げます。また、これまで皆さんを支え、今日の日を迎えられたご家族、関係者の皆様にも、深く敬意を表します。
さて、皆さんがこれから歩み始める社会は、「VUCAの時代」と呼ばれています。将来が不確実で、変化が激しく、複雑で曖昧な時代です。かつてのように、「努力してこの道に進めばよい」「この知識を身につければ安泰である」といった分かりやすい正解は、もはや存在しません。このような時代において、皆さんにぜひ意識していただきたいのは、「未来は予測するものではなく、創るものだ」という姿勢です。そのために重要なのが、「自分は将来、どのような姿でありたいのか」、言い換えれば「自らの理想の姿」を、早い段階で描いてみることです。もちろん、現時点でその姿が明確でなくても構いません。むしろ、大学生活を通じて、その姿は何度も書き換えられていくでしょう。しかし、仮であっても「ありたい姿」を先に思い描くことが、皆さんの学びに方向性と意味を与えてくれます。
大学は、単に知識を学ぶ場所ではありません。未知の考え方や価値観と出会い、自分の専門分野の外へと踏み出し、他者と交わりながら視野を広げていく場です。本学が大切にしているのも、こうした「越境的学習」です。計画通りに進まない経験、思いがけない出会い、偶然の出来事、一見すると無駄に思えるような体験の中にこそ、皆さんの人生を大きく方向づける機会が潜んでいます。これを「計画的偶発性」と呼びますが、大学生活では、ぜひこの偶発性を積極的に活かし、大いに楽しんでほしいと思います。
大学で皆さんに身につけていただきたいものは、個々の知識や技能にとどまりません。むしろ重要なのは、「学びの原動力」と「学びの継続力」です。なぜ学ぶのか、何に心を動かされるのかという内なる動機を育てること。そして、大学時代のみならず、生涯にわたって学び続ける力を培うことです。社会に出てから、新たな課題や未知の状況に直面するたびに、皆さんを支えていくのは、この二つの力にほかなりません。本学での学びと出会いの一つひとつが、皆さん自身の未来を形づくる確かな礎となることを心から願っています。どうか失敗を恐れず、挑戦し、考え、学び続けてください。
皆さんが学ぶここ高知は、日本の中でも決して大きな都市ではありません。しかしこの地は、古くから中央の常識や既成概念にとらわれることなく、独自の道を切り拓いてきました。坂本龍馬をはじめとする多くの先人たちは、日本の「エッジ」、いわば辺境に身を置いたからこそ、世界を俯瞰し、変革を構想する視点を持ち得ました。「辺境」であることは、弱さではありません。それは、未来を構想する強さになり得るのです。高知大学もまた、この地にあるからこそ、地域の現実と真正面から向き合い、教育・研究・医療を通じて、社会に問いを投げかけています。皆さんは、その営みの中で学び、考え、自らの視点を磨いていくことになるのです。
結びに当たり、国立大学法人高知大学の源流である、旧制高知高等学校の初代校長・江部淳夫先生が第1回目の入学式で、入学生を前に述べられた言葉をご紹介してお祝いのメッセージと致します。
「感激あれ若人、感激なき人生は空虚なり。汝等が前に高く、高く、理想を掲げよ。さすれば道は坦々として、汝等が前に開けん。ただ歩めば至る。」
ご入学おめでとうございます。
令和八年四月三日
高知大学・学長 受田 浩之