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令和4年度「授業について考えるランチセミナー」<教育実践の成果を報告しよう2>が開催されました。

2023年2月1日

令和4年度「授業について考えるランチセミナー」<教育実践の成果を報告しよう2>が開催されました。

授業について考えるランチセミナーは、テーマを変えて、毎月第2・第3木曜日に開催しています。

テーマの詳細やお申込みについては、FD・SDの取り組み | 高知大ポータル (kochi-u.ac.jp)の、「授業について考えるランチセミナー」ページをご覧ください。

次回は2月9日、16日に開催予定です。

-----開催報告-------

開催日時

第1回: 1月12日(木)12:05~12:50

第2回: 1月19日(木)12:05~12:50

 

参加者数

第1回: 1月12日(木) 29名

第2回: 1月19日(木) 30名

 

コーディネーター・講師

コーディネーター:塩川 奈々美(徳島大学高等教育研究センター)

第1回・第2回  講師:塩川 奈々美(徳島大学高等教育研究センター)

 

◆内容

第1回:   まず講師より、今月のテーマである「質的データの分析」について、データの特徴、収集方法について説明がなされた。具体的には、質的データとはアンケートの自由記述やインタビュー調査を通じてなされた、回答者の言葉による記述である。質的データの特徴として、量的データ(「あてはまる」~「あてはまらない」による回答等)に比べて、回答者の考え方、あるいはその考えに至るまでの背景等をより深く把握することができる点が挙げられた。

さらに、今回はその質的データを分析するための方法として、それぞれの内容について「見出し」をつける「コーディング」について紹介と説明が行われた。「コーディング」は、それぞれのテキストから、そのテキストの特徴や概念を示す「見出し」である「コード」をつける作業である。これにより、テキストを抽象化し、より一般的な全体の傾向を示すことが可能になる。

今回はこのコーディングの演習として、12月のランチセミナーでも紹介されたオンラインホワイトボードツールであるmiroを使用し、サンプルとして示されたテキストデータに付せんでコードを付けるというワークを実践した。

最後に講師から、コーディングによる重要なポイントとして、テキストデータの意味の中心となる言葉を抽出すること、そのためにはどのような分析をするかを明確にすること、語彙に関する知識を高めること、場合によっては元のテキストを見直すことを含めて結果を多角的に考察することが挙げられた。

 

第2回:  今回は前回の振り返りとして、講師から質的データの特徴や収集方法について再度説明がなされた後、質的データの別の分析方法としてテキストマイニングに焦点を当てた講義が行われた。

テキストマイニングとは、テキストデータを単語で区切り、それぞれの単語の出現頻度や単語同士のつながりを統計的に分析する手法である。テキストマイニングを用いることで、大量の文章を分析したり、統計分析を用いることによる分析の客観性が保障できたりするという利が得られることが講師より提示された。

テキストマイニングのためのコンピュータソフトとして今回取り上げられたのが、KH Coder (https://khcoder.net/)である。これは基本無料で使用でき、かつ多くの研究に用いられているソフトウェアである。

続いて、講師からサンプルデータを利用したKH Coderの利用方法や機能紹介が行われた。今回行われたのは、出現頻度表、共起ネットワーク図、対応分析である。出現頻度表とは、データ内に見られた単語の出現回数を表として一覧できるようにしたものである。出現頻度表は、以降の詳細な分析を行うために、テキスト全体の傾向をつかむための基礎資料として用いることができる。続いて、共起ネットワーク図とは、単語を円で示し、さらに関連性が強い単語同士を線で結んだ図である。これにより、テキストデータ全体でどのような語が、どのようにつながりを持っているかを把握することができる。さらに対応分析では、外部変数(今回の例では学部の別)を利用し、その外部変数との関連性に応じて単語をプロットした図を出力することができる。これを用いることで、外部変数ごとの語の傾向を把握したり、逆にいずれの外部変数にも偏りがない単語を明らかにしたりすることが可能となる。

最後に、テキストマイニングにおいて重要なポイントとして、分析前・分析時のテキストデータの処理(固有名詞の登録、表記ゆれへの対応等)が挙げられるとともに、質的データの分析全体における注意点として、「都合の良い記述だけを切り取っていないか」「コードやカテゴリーが記述内容とあっているか」「複数の要因間の関係を適切に示せているか」「記述間の関係を論理的に説明できるか」「文を簡潔にまとめられる余地はないか」「文脈を考慮できているか」の6点が示された。

 

◆成果と課題

参加者アンケートを行った結果、「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」という設問において、概ね肯定的な回答 (「とても当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」の合計) を得ることができた。

また自由記述においても、質的調査の方法や分析方法について理解することができた、KH Coderについて知ることができたといった回答が得られた。

 

表 アンケート設問「5. 本セミナーは今後の教育活動において有益なものであった」回答結果

 

第1回(1月12日)

第2回(1月19日)

とても当てはまる

6(50%)

4(50%)

どちらかといえば当てはまる

6(50%)

3 (38%)

どちらかといえば当てはまらない

0(0%)

1(13%)

まったく当てはまらない

0(0%)

0(0%)

合計

12(100%)

8(100%)

※その他のアンケート項目の結果はグラフを参照。

 

しかしながら、とくに第2回においては、やや「どちらかといえば当てはまらない」という回答が目立った。これは、学内ネットワークの都合によりKH Coderにアクセスできない参加者がいたこと、また自由記述に見られたように、KH Coderの機能面の紹介が主となってしまったため、やや内容を理解しづらい点があったためであると考えられる。

一方で第1回をはじめ、質的データの分析に対して関心を持っている参加者は多くみられた。したがって、質的データの分析に関するニーズは高いと考えられる。そのような参加者に対して分かりやすく、関心が得られるようなセミナーができるよう、引き続き内容についても検討と改善を行っていきたい。

 

◆アンケート回答結果

第1回 (n=12)

グラフ1

第2回 (n=8)

グラフ2

■セミナーの模様(アーカイブ動画より抜粋)

画像1

画像2

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