高知大学医学部 看護学科 臨床看護学講座 溝渕研究室

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非加熱ユズ種子油の摂取は、血糖値を改善し、脂肪肝発症を予防する!

 前回の非加熱ユズ種子油のトピックスにおいて、健常人を対象にした臨床試験で、非加熱ユズ種子油が空腹時血糖値を低下させることを報告しました。
 今回は、高脂肪食による糖尿病モデルマウスに非加熱ユズ種子油を投与することで、血糖値が改善し、脂肪肝を抑制したことを報告します。

方法

 高脂肪食に非加熱ユズ種子油を5%添加した非加熱ユズ種子油群と、菜種油を5%添加した菜種油群の2群を設けました。投与開始後4週毎に空腹時血糖値を測定し、投与開始20週後にブドウ糖負荷試験を行い、肝臓を摘出しました。摘出した肝臓の重量、肝臓1g当たりの脂質量を測定し、肝臓組織をHE染色にて評価しました。

結果

 空腹時血糖値の推移に関しては、非加熱ユズ種子油群が菜種油群に比較して12週後に顕著に低値を示しました(図1)。

高脂肪食投与下の空腹時血糖値の推移

(図1)


 20週後の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)では、負荷30分後と120分後に非加熱ユズ種子油群が菜種油群と比較して顕著に低値でした。よって、非加熱ユズ種子油には血糖値上昇抑制効果を有することが明らかとなりました(図2)。

高脂肪食投与20週後のOGTT

(図2)


 高脂肪食投与20週後の肝機能検査では、ALT(GPT)、AST(GOT)ともに非加熱ユズ種子油群が顕著に低値でした(図3)。非加熱ユズ種子油が脂肪肝による肝機能障害を抑制したと考えています。

高脂肪食投与20週後の血清ALT(GPT)及び血清AST(GOT)

(図3)


 HE染色による肝臓の組織像では、菜種油群では脂肪滴が認められ脂肪肝の像を呈していますが、非加熱ユズ種子油群では脂肪滴の形成が明らかに抑えられています(図4)。組織像で丸く白く見えている部分が脂肪滴です。

高脂肪食投与20週後の脂肪肝に対する効果

(図4)


 高脂肪食投与20週後の肝臓の重量は、非加熱ユズ種子油群が顕著に低値でした。また、肝臓1gあたりの脂質量も非加熱ユズ種子油群が顕著に低値でした。非加熱ユズ種子油には肝臓への脂肪蓄積を抑える効果があると考えています(図5)。

高脂肪食投与20週後の肝臓1g当たりの脂質量

(図5)


 以上より、非加熱ユズ種子油の経口摂取により、糖尿病モデルマウスの血糖値改善効果が認められ、脂肪肝も抑えられました。これらの研究成果をもとに、「脂肪肝抑制剤」の特許を取得しました(特許第7026899号)。

 また、我々が発表した研究によって、これらの機能性物質が苦味の成分であるノミリンであることを明らかにしました。ノミリンは、胆汁酸の受容体であるTGR5を活性化します。TGR5は、糖代謝にかかわるすべての細胞にあり、活性化すると耐糖能の回復や、肝脂質代謝の改善が得られます。非加熱ユズ種子油には、ノミリンが含まれていますが、菜種油には含まれていません。この違いが今回の研究結果に繋がっています。

 現在、馬路村農協が非加熱ユズ種子油を機能性表示食品として届出する準備を進めています。

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