気候変動適応策の立案を支援する地域気候特化型AIを開発
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将来の気候予測データと地域の知見を統合し、自治体の意思決定を強力にサポートする大規模言語モデル(LLM)
高知大学農林海洋科学部の原政之准教授は国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)情報地球科学研究部門データサイエンス研究プログラム長の松岡大祐上席研究員、株式会社Ridge-iの杉山一成執行役員らと共同で気候変動適応策(※1)の立案を支援する地域気候特化型のLLMを開発しました。
気候変動に対して効果的に適応するには、科学的に信頼性が高く、かつ非専門家でも利用しやすい気候情報が不可欠です。本研究では、気候科学の専門知識を有し、さらに将来のアンサンブル気候予測データ(※2)から数値を直接検索・抽出できるLLM(※3)を開発しました。本手法は、独自に構築した気候学に特化したベンチマーク(※4)において優れた能力を発揮し、埼玉県熊谷市を対象とした概念実証(Proof of Concept: PoC)では、将来の気温上昇の確率的な予測値を用いて熱中症対策を具体化し、実行可能な計画を提案することに成功しました。高度な専門知識をもたない実務者でも、自然言語を通じて高度な気候リスク評価と対策立案を実施可能な次世代の気候サービスに向けた先駆的な成果です。
利用者はチャットボット型アプリケーションに対して自然言語で指示や質問を入力し、必要に応じて定量的な気候予測データや過去の地域適応策が格納されたデータベースから、将来の予測値や現在の適応策などの関連する文脈情報を意味検索・抽出する。システムは、抽出された情報と質問を組み合わせてLLMに指示(プロンプト)を送り、専門知識と予測データに基づいて生成した回答を利用者へ提示する。
本成果は、アメリカ地球物理学連合の論文誌「Journal of Geophysical Research: Machine Learning and Computation」に7月1日付け(米国時間)で掲載されました。
なお、本研究はNEDO GENIAC (24036962)、環境研究総合推進費(JPMEERF25S12433)、文部科学省「地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業」 (JPMXD0721453504)および「気候変動予測先端研究プログラム」(JPMXD0722680734)、JSPS科研費(JP22H01316)による研究助成を受けて実施されました。
【論文情報】
タイトル : An LLM Framework for Regional Climate Services: Integrating Climate Knowledge and Ensemble Projections
著者 : 松岡 大祐1*、川原 慎太郎1、村上 幸史郎1**、松本 凌1、伊東 瑠衣1、杉本 志織1、杉山大祐1、原 政之2、林田 将明3**、Nguyen Trung Kien3**、Aurélie Peng3、阿部 大志3、杉山 一成3
所属 : 1. 海洋研究開発機構、2. 高知大学、3.株式会社Ridge-i *責任著者、**研究当時
DOI :
【用語解説】
※1 気候変動適応策
すでに現れている、または将来の避けられない気候変動の影響に対して、人や社会、生態系などへの被害を軽減できるよう対応するための取り組み。
※2 アンサンブル気候予測データ
計算条件をわずかに変えた多数の気候予測シミュレーションを同時に実施することで、特定の気候条件における、特に極端な異常気象について確率的に評価することが可能なデータ。
参考:
※3 大規模言語モデル(Large Language Model: LLM)
インターネット等の膨大な文章などを学習し、人間のように自然な文章を理解・生成できる自然言語処理向けAIの一種。
※4 ベンチマーク
AIモデルの性能を客観的に評価するために使用される共通テスト。モデルの知識量や推論能力などを定量的にスコア化し、目的に合わせて最適なモデルを選択するための指針として使用される。
