女性研究者研究活動支援事業(連携型)
四国5大学連携女性研究者活躍推進コンソーシアム形成事業
ロールモデル講演会「やりたいことをあきらめない〜転んでも前を向く〜」を開催しました
平成27年6月3日、男女共同参画推進室は、高知工業高等専門学校准教授の永原順子さん(日本文化論、宗教民俗学)を招き、学生のキャリア支援を目的とするロールモデル講演会を開催しました。
ロールモデルとは、具体的な行動技術や行動事例を模倣・学習する対象となる人材のことです。多くの人は、無意識のうちにロールモデルを選び、その影響を受けています。「○○のようになりたい」という憧れは誰しも持った経験があるのではないでしょうか。
さて永原さんも、色々なご縁から何人ものロールモデルに出会ったことが、ご自身の夢の実現につながったようです。はじめのご縁は「宇宙」。5歳の時、夜中に父親に起こされて見た「月食」に刺激を受けて、夢は宇宙飛行士に広がりました。次に、ご縁に導いたものは「SF」。機動戦士ガンダム、宇宙戦艦ヤマトなどのアニメ、そしてSF小説にはまっていきました。特に絶大な影響を受けたのが『日本沈没』、『復活の日』で知られる小説家の小松左京さん(1931〜2011)で、『さよならジュピター』を読んだことがきっかけで大の小松左京ファンとなったそうです。
大学受験を控えた永原さんは、ちょっとした興味から小松左京さんの出身校を調べたところ、それが京都大学文学部であることが判明。「小松左京さんが学んだ大学なら面白くないはずがない」と受験を決め、みごと京都大学文学部に合格します。そして、20歳の時に、サークル仲間と飲んだ勢いで、小松左京さんに「ファンです、会ってください!」と電話をかけると、拍子抜けするくらいにすぐに会えたのだそうです。こうして、小松左京さんに会うという夢が叶うと、新たな関心が芽生えてきました。
時代は80年代の小劇団ブームで俳優の生瀬勝久さんらが活躍していました。劇団も楽しそうだなと思っていた時に受け取ったチラシの中に、「能楽部」の部員募集を見つけました。「能」がクラブでできるの?楽しそう!なんかありそう!という直感が働き、能の世界に足を踏み入れたそうです。(ここで、永原さんから、笛、扇の舞が披露されました。)
さて、学部の卒業を控えて、大学院進学の希望はあったものの、どのようなテーマで研究すればよいのか悩んでいたところ、「環境・人間学」という研究科が新設されると知り、能を軸にして、その背景にある精神的、宗教的な側面を研究したいと、宗教民俗学の先生に直接相談に行きます。しかし、めでたく大学院に入学したものの、アルバイトの楽しさを知ってしまい、研究時間の確保や研究に対するモチベーションを維持することが難しいと感じた時期もありました。時間だけが過ぎていく中で焦りながらも、修士論文を書きあげて博士後期課程に進学します。それでも焦りはなくならず、何か動かなければと、大阪天満宮・文化研究所の研究員の仕事に就きました。また、大学の非常勤講師を紹介してもらい、研究のペースを意識的に作っていったそうです。そして、ご縁から妖怪博士として知られる小松和彦先生の仕事を手伝ったことで、国際日本文化研究センターの機関研究員として、妖怪データベース作成のプロジェクトに携わるチャンスが訪れました。永原さんは、このプロジェクトで研究者の醍醐味を感じる経験と同じくらい、事務手続きの書類づくりの重要さと大変さを学ぶことができたそうです。このような業務を通じて、研究者に纏わる具体的なイメージが出来上がっていきました。
研究者への就職を具体的に考えるようになると、「3年以内に探しなさい」という諸先輩のアドバイスを聞いて、研究者公募の情報サイトを調べては研究職の公募に応募し、その数は20件を越えました。そして、新たな縁を得て高知工業高等専門学校で働くことになりました。
永原さんは、自分の好きな妖怪を勉強して、それを教えて生活できる職業は少ない。研究者の仕事はすごく好きだと語りました。また一方で、研究者には研究以外にもたくさんの業務があって、学生指導(担任、寮務、課外活動)、授業(授業の準備、教材研究)、学校運営(研修、委員会)、そして、その他にも男女共同参画推進室長、キャリア支援室長、部活顧問など色々な役割があります。これまでの経験が色々なところで、役立つのだそうです。
最後に、永原さんは、次のようにお話になり、持参した鼓を叩いて実演くださいました。
「妖怪というのも社会からかけ離れたものでは無く、その時代、その社会の人たちの自然現象に対する解釈だと思います。雷の音が空気中を電子が無理やり動くときの音と解釈する時代もあれば、雷神様が太鼓を叩いていると解釈する時代もある。見えないものについて研究するというというところで、自分の中では宇宙空間の向こう側を研究することや妖怪の研究は相通じるところがあると感じています。雷の音を雷神様の太鼓と考えた時代の人を今の時代の人は笑うかもしれないけれど、未来の人から見たら今の私たちの科学の見方は同じように笑えるものかもしれないですね。」
ご縁を活かし、大切に育ててきた永原さんのお話に、参加した学生も興味深そうに聞き入っていました。アンケートによれば「とても役に立った」「どちらかといえば役に立った」を合わせて80%の満足度の高い講演会となりました。
■アンケートの回答から
- お話は興味深いことも多くおもしろかったです。行動力って大事だなと思いました。私自身は慎重派で、思っていることを中々行動に移すことができないのですが、少しアクションを起こしてみようと思います。「思うて詮無きことは思わず。」過去の反省は(少しばかり)必要だけれど、後悔する時間があったら前へ前へという言葉がとても印象に残りました。よく一人で思い悩むことがありますが、あまり思いつめすぎるのもよくないなと思いました。
- とても楽しい時間だった。私も部活とバイトに時間を費やしてしまって勉強ができずに焦っている時だったので、今日の講演を聞いて上手に時間を作りたいと感じた。学芸員の仕事をしたいのに募集を見つけられなく、少し諦めがちだったので、まためげずに自分のしたいことを改めて考え行動にうつしたいと思った。この時期にとってはとてもためになる講演でした。
- 今日は講演会有難うございました。宇宙の話から、能や妖怪にどう結び付くのかと、少し最初疑問に思っていましたが、お話を聞いて、とてもおもしろく楽しく、納得できました。そして、とことんつきつめ人と出会って身にしていく姿がすばらしいなと感じました。私も小さい時に興味のあったことと、今関心を向けて頑張っていることと全く違いますが、ばっさりと切り捨ててしまうのではなく、「楽しんでやる興味」「やるべきこと」少し欲張りですが、ポジティブに頑張ってみようと思いました。