高知大学農林海洋科学部・大学院総合人間自然科学研究科農林海洋科学専攻

学び360度! 先輩たちの声
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高校とは違う大学でのリアルな生活を先輩たちに聞いてみました。

特集記事−Feature article

デジタル化が拓く新時代の農学研究 ー「変革の担い手」となるZ世代の活躍

タデ科の植物から
ダンゴムシを寄せ付けない
物質を探す

石田雅司

修士2年(2022年度)
手林研究室所属

大量に発生すると害虫になってしまうダンゴムシ
自然にやさしい忌避剤の開発に向けて挑戦中

ダンゴムシは本来枯れ葉を食べて消化することで土中の有機物を微生物が分解しやすい状態にしてくれるため益虫であるといえますが、一度大量発生すると、生きた植物をも食べ荒らす害虫となってしまいます。
そこで私は、手林先生の研究室で、タデ科の植物をテーマにダンゴムシが嫌がる忌避物質を研究しています。

「蓼(タデ)食う虫も好き好き」ということわざがあります。
このことわざは「人の好みはさまざまある」という意味で使われますが、ここでいう「蓼」は、タデ科の植物のヤナギタデといわれています。ヤナギタデは、ことわざに例えられるほど辛味の強い植物で、大抵の生物は食べることを嫌いますが、まれに食べる虫がいることから、先のことわざが生まれたのだろうと思います。
つまり、ヤナギタデが辛いのは、虫に食べられないようにするためです。自衛のために辛味成分を持っているのです。
また、同じタデ科の植物に、イヌタデ属というものがあります。こちらもヤナギタデと同様に虫がつきにくい植物ですが、こちらには辛味がありません。そこで私はイヌタデ属に注目し、イヌタデには辛味成分とは別の忌避物質があると考え、その物質を探っているところです。

研究では、イヌタデ属から抽出した成分を細かく分析し、一つひとつ試す実験を行っている段階です。
ダンゴムシは暗くじめじめしたところを好むので、飼育箱の隅に水をしみ込ませたろ紙を置くと、必ずそこに集まります。
そこで、その一つにイヌタデから抽出した成分をしみ込まるとどうなるか…。
結果は、ダンゴムシがほとんど寄って来ません。
イヌタデに含まれる成分を分析し、何がダンゴムシを寄せ付けない成分なのか、その一つひとつについて実験を重ねています。
2022年3月には、「日本農芸化学会」で発表を行いました。
いずれ私が特定した物質が、自然にやさしく、また効果の高いダンゴムシ防除法として役立つ日が来ることを目指し、頑張っています。

実験・検証中のダンゴムシ。研究は、日々の細かな積み重ねの上に成り立つ

解析した数字から広がっていく“世界”

目の前で起こる事象をデータとして日々積み重ね、それを解析した数字からはいろいろなことが見えてきます。
逆に言えば、たくさんの物質の中から一つの物質を特定するには、データの積み重ねをしていくしかありません。研究を続けて結果を出すことはとても根気が必要ですが、やりがいもひとしお。これぞ科学です!

研究室にて手林先生と。実験で壁にぶつかったりすると、先生から頼もしいアドバイスをいただくことも