研究・業績

医学に発見の歓びを

 研究では、“From bedside to bench and back again.”を常に心がけ、「消化器と免疫」「炎症と発癌」をキーワードに、慢性の炎症性消化器疾患(自己免疫性膵炎、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、ヘリコバクター胃炎)と癌の基礎的・臨床的研究を行なっています。これらの研究は、国内外の研究施設との共同研究も積極的に行い、国内のみならず海外からも高い評価を受け、多くの外部資金を獲得しています。

 胆膵グループは、指定難病である自己免疫性膵炎(IgG4関連疾患)では、厚生労働省難治性疾患政策研究事業「IgG4関連疾患の診断基準並びに治療方法の確立を目指す研究」班、日本膵臓学会において、臨床診断基準の改定、ガイドラインの作成に携わっています。また基礎研究においては、1型自己免疫性膵炎の病態解明を目指すべく自然免疫(好塩基球、M2マクロファージなど)、獲得免疫(制御性T細胞、制御性B細胞など)の両面から解析を行なっています。この疾患は日本から発信された疾患概念であり、ぜひ日本から情報を発信し続け、これからも日本がリードしていかなくてはならない分野であると考えています。

 また、膵癌については浸潤・転移機構に関する研究を行っています。膵癌細胞の増殖に関わっているカイネシンモーター蛋白質の1つであるKIF20Aが、RNA結合蛋白質IGF2BP3と結合したメッセンジャーRNAおよび非翻訳RNAの複合体を内包したRNA顆粒を葉状仮足まで輸送することにより、膵癌細胞を浸潤・転移させていることを明らかにしました。この新たな知見を通して、基礎研究と並行して臨床試験を積極的に行っています。膵癌の予後改善に貢献できる可能性のある研究成果を得ており、関連する学会総会や論文において研究成果を発表しています 。

 肝臓グループでは、PBCの研究が第一内科開講以来行われており、PBCの発症に関連する免疫学検討や、現在では標準的な治療法の一つとなっているBezafibrateによる治療法の開発など多くの重要な研究により高い評価を得てきました。また、生活環境の変化とともに増加の一途を辿っているNASHは、今後さらに問題となることが予想されます。当グループでは、NASH発症のメカニズム解明のために、遺伝的側面、代謝的側面を中心に基礎研究および臨床研究を行っています。

 消化管グループでは、”胃内ピロリ菌フローラ(遺伝子多様性)形成と各種疾患・病態との関連性の解明”というテーマで臨床研究を行っています。ピロリ菌は乳幼児期に感染後、胃内で著しい遺伝子変異を繰り返し慢性持続感染を成立させています。その持続感染に関わる遺伝子変異の研究のひとつとしてピロリ菌の薬剤耐性の多様性を証明し、ピロリ菌フローラという考え方を国内や海外の学会で報告し高い評価を得ています。今後は更に遺伝子変異と病原性について研究を進めていく予定です。

 研究は、確かな臨床の裏づけによって生れます。そのためにも、臨床は常にトップレベルでなければなりません。トップレベルの臨床を行うことで生まれてくる問題点を、基礎研究へとつなげていき、その研究成果を再び臨床にフィードバックする。このような臨床・研究を通じて、この高知から消化器内科学の将来を担う人材の育成を目指していきたいと考えています。