Dr.藤澤の消化器外科専門医への道

消化器外科専門医資格を取得したDr.藤澤に、資格取得までの取り組みやこれから消化器外科専門医を目指す後輩へのアドバイスなど語ってもらいます。

申請まで

2020年から申請要件が緩和され、受験しやすくなりました。
取得条件の変更、若いうちに目指せる資格に!
手術に関しては外科専門医の症例が充足した時点で足りない術式を確認し、必要な手術に入れるよう指導医にお願いするといいでしょう( → 消化器外科専門医試験受験資格 )。学会については、消化器外科学会に関しては総会と大会両方の参加実績が必要で、消化器外科学会大会(JDDW)が盲点になりがちのようですので忘れずに参加してください。申請の時はオンラインで提出する資料がいろいろあって面倒なので、受付が開始されたら早めに用意した方がいいです。
また、消化器病専門医と勉強すべき範囲が似ているので同時に受験すると効率がいいのですが、私は消化器病学会に入会したのが遅かったため、同時には受けられませんでした。もう一度勉強しなおさないといけないと思うと・・・目眩がします。

勉強の仕方

使ったものは学会が今回作成した公式テキスト『外科専門医の心得』、メジカルビュー社の『消化器外科専門医へのminimal requirements』、学会HPに毎年30問ずつ公開されている過去問です。

受験する年の4月にテキストが届いたので、そこから少しずつテキストを読み始めました。読んでも覚えられないので自分でノートにまとめながら読みましたが、効率は悪かったと思います。minimal requirementsの問題集に手をつけたのは9月ごろです。結局問題を解かないと身につかないたちなので、今思えばもっと早くやっておけば良かったと思いますが・・・。試験までにギリギリ1周しました。このシリーズで実践応用編なるものもありますが、到底手が回りませんでした。それでも知識としては十分身につくと思います。10月後半に過去問を解き始めました。過去25回分が公開されているうちの10年分やりました。古い問題は取り扱い規約やガイドラインが現在のものと異なっているので注意が必要です。過去問はプール問題が目立ちましたが、実際の試験では見たことのある問題には出会えませんでした。勉強が足りなかったのか、制度が変わって問題も一新されたのかはわかりません。

途中で膨大な知識をただ詰め込むのは無理だと悟り、Ankiという暗記アプリを使い始めました。PCとスマホを同期させられるので、PCで編集してちょっとした移動時間やお風呂上がりのドライヤー時間に暗記ができます。これで分子標的薬や術式の適応、疾患と検査法などを覚えました。おすすめです。

私はあまり開きませんでしたが、取扱規約のステージングや癌治療のフローチャートはそらで書けるくらいに頭に叩き込んでおいた方がいいと思います。これを元にした問題も多く出るので、取りこぼすともったいないです。
平日は子供が寝てから1時間ぐらい、他には平和な当直や日直の時などを勉強に充てました。全部で100時間以上150時間未満くらいだと思います。ネットで受験者のブログなどを見ても150時間勉強した方は余裕で合格したと書いていたので、そのぐらい時間を取れると安心そうです。

勉強を続けるコツ

とりあえず目につくところにテキストを置いておきました。周りの先輩方もちょこちょこプレッシャーをかけてくださるので、勉強しなくては・・・!という気持ちはずっと持っていました。

本番の空気

コロナ対策もあってか長机1台の端に1人が座る配置でした。最前列ど真ん中の席になり落ち着かない感じでした。受験者の年代は様々でしたが、要件緩和に伴ってか同世代の方も多くいました。私は勉強に使った3冊のテキストとノートを全部持っていったので着替えより紙の方が重くて辛かったのですが、全部データ化してタブレット1台だけ持って来ている人もいて、現代を感じました。中には談笑している人もいましたが、外科専門医よりはずっとピリッとした雰囲気で、静かに復習している人が殆どでした。
密を避けるために階段での移動を推奨されたのですが、行きは重い荷物を背負って6階まで登り、帰りは多くの受験者が一斉に階段を降り駅へ向かったため一大密が形成されたのはいい思い出です。

手応え

全くありませんでした。6割は固いけど7割はどうかな、という感じです。結局何点だったかは公開されておらずわかりませんが・・・。合格の知らせが届くまで落ち着かない日々を過ごしました。
2020年からはこれまでの相対評価(受験者のおよそ75%が合格)から絶対評価に変わるとアナウンスがありましたが、合格ラインは今のところ明らかにされていません。合格者は全体の78%でした。

反省点

勉強しはじめの、テキストを読んでまとめていた時間は無駄が多かったなと思います。覚えるべきポイントを掴むにはやっぱり練習問題なので、先にminimal requirementsや過去問を見た方がよかったかもしれません。ただ出題は公式テキストに準拠するとされていますので、問題を解きながらテキストを確認していくといいと思います。問題は広い範囲を幅広く細かく聞いてきます。食道でいえば食道癌もバレットも食道憩室も裂孔ヘルニアも食道破裂も問われました。勉強頑張ってください。

今後に向けて

資格は取れましたが技術はまだまだですので、手術手技や臨床能力を向上させるべく精進します。これからは女性の消化器外科専門医や家庭により時間を割く男性医師もどんどん増えると思いますので、産休や育休を挟みながら、ゆっくりでもなんとか成長していく姿をお見せできたらと思います。