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土佐の魚類学者
高知県出身の魚類学者3人について紹介します.

田中茂穂 博士 Dr. TANAKA, Shigeho
1878.8.16〜1974.12.24

 高知県土佐郡上街水通町(高知市上町)に生まれる.1897(明治30)年に高知県尋常中学校(現追手前高校)卒業,第一高等学校を経て,1901(明治34)年に東京帝国大学理学部動物学科へ入学し,1903年には魚類の分類学的研究を開始した.1904(明治37)年に同大学卒業,理学博士.同大学理学部動物学科講師,助教授を経て,1938(昭和13)年には教授ならびに同大学三崎臨海実験所長を兼任.1940(昭和15)年に定年退官. 魚類分類学を開始した翌年の1904年(東京帝国大学卒業直後)には,動物学雑誌(Zoological Magazine) の編集を担当し,同雑誌に最初の論文(『魚類概説』)を発表している.1913年には当時日本から知られている全種を詳細に記載した名著『日本産魚類目録(英文)』*のモノグラフをアメリカのスタンフォード大学のジョーダン,スナイダー両博士との共著で出版した.ジョーダン博士は,1900年前後から多くの研究者と日本の魚類を研究していたが,スナイダー博士との共著がもっとも多い.田中博士が渡米した際に,ジョーダン博士に会い,このモノグラフの原稿の校閲を頼んだところ,ジョーダン博士からの共著希望があった.その申し出を早速快諾し,原稿を手渡したが,ほんの二三カ所の直しがあっただけで出版の運びとなった.田中博士は,日本の魚類分類学の創始者であるばかりでなく,世界の学会にも大きく貢献した.研究論文は約300編,著書は50冊に及ぶ.約170種の新種を記載し,そのうち約90種は有効種となっている. 東京帝国大学理学部助教授時代には,同僚の中で唯一,白衣ではなく繻子(しゅす=サテン)の黒衣を愛用した.また,東大在職中には昭和天皇ご採集の魚類標本を同定した.定年退職後,一時高知に戻ってきたときに,高
知大学の非常勤講師として生物学概論を教えた.生物の分類がラテン語に依存していることから,特にラテン語の重要性を強調した. 田中茂穂博士は土佐人でもちょっと珍しいイゴッソーといわれ,余り気安くない人にでも,また上の者に対してでも歯に衣きせず意見を述べた.例えば,牧野富太郎の推奨する「そめいよしの」は百年で枯れるので,桜は山桜がよいという「そめいよしの亡国論」を口にするなど一家言を持した. 田中茂穂博士は牧野富太郎,寺田寅彦と並び土佐の生んだ自然科学の世界的硯学である.寺田寅彦とは中学の同級,首席を争った仲で,常に寅彦に先んじられたといわれる.

*Jordan, D. S., S. Tanaka, and J. O. Snyder. 1913. A catalogue of the fishes of Japan. J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo, Vol. 33 (article 1): 1-497.

参考文献
高知新聞社.1999.高知県人名辞典 新版.
Matsuura, K. 1997. Fish collection building in Japan, with comments on major Japanese ichthyologists. Pages 171-182 in T. W. Pietsch & W. D. Anderson, eds. Collection building in ichthyology and herpetology. American Society of Ichthyologists and Herpetologists. Special Pulication Number 3.
冨山一郎.1975.田中茂穂先生に師事して(Memory of the late professor Shigeho Tanaka, the honarary member of the society, 1878~1974).魚類学雑誌,22(2): 119-124.


蒲原稔治 博士 Dr. KAMOHARA, Toshiji
1901.7.22〜1972.3.26

 明治34年高知県長岡郡五台山村に生まれる.1919(大正8)年3月9日に高知県立第一中学校(現追手前高校)を卒業,同年7月1日に東京逓信官吏練習所入学(同年10月中途退学),1920(大正9)年9月1日に松山高等学校理科甲類入学.1923(大正12)年4月1日に東京帝国大学理学部動物学科入学,1926(昭和元)年10月23日に同大学を卒業.同年12月1日に広島輜重兵(しちょうへい)第5大隊に入隊.1927(昭和2)年9月30日に帰休し,旧制高知高等学校動物科講師嘱託となる.1928(昭和3)年に高知高等学校教授. 1928年より魚類の分類学的研究を開始し,同郷で日本魚類学の開祖田中茂穂博士に師事する.1938(昭和13)年応召され,善通寺山砲兵第11連隊第8中隊に入隊.1939(昭和14)年4月30日帰任.同年に理学博士の称号を授与される(On the offshore bottom-fishes of Prov. Tosa, Shikoku, Japan).1944(昭和19)年4月1日修練部体練課長.1946(昭和21)年総務課長兼復興課長.1947(昭和22)年6月に土佐生物学会会長となる(1965年まで).1949(昭和24)年6月30日に高知大学文理学部教授.1951(昭和26)年に高知大学農学部教授を兼任し(1959年5月1日まで),非官制であるが農学部内に水産学科(通称)を誕生させた.1953(昭和28)年8月1日に高知大学文理学部付属臨海実験所が設立され,所長兼任となる.1961(昭和36)年11月1日に高知大学文理学部長を併任(1965年3月31日まで).1965(昭和40)年3月31日に高知大学を定年退官.高知大学名誉教授.1968年名古屋保健衛生大学教授.1972(昭和47)年3月26日未明に脳軟化症にて逝去.享年70歳. 1928年以来,魚類の分類学的研究を進め,文部省自然科学奨励金および科学研究費,服部報公会・日本学術振興会・学術研究会議等々から研究費を受領.いっぽう,大阪市立博物館主催トカラ学術調査団,高知新聞社後援奄美生物調査団,同琉球列島学術調査団等に団員または団長として参加,南西日本の魚類相解明に大きく貢献した.これらの功績や地域社会への貢献により1955(昭和30)年に高知県文化賞を,1958(昭和33)年には四国文化賞を授与される.著書17冊研究論文は105編に及び,一般講演などは276回を数える.52種の新種を記載し,そのうち45種は有効種である.また,日本初記録種として計209種を報告している. 号を呑海と称し,生涯に飲んだ酒の量は60石を超えると豪語するなど,その天衣無縫ぶりはエロティシズムに満ちた名物講義とともに多くの人々の語り草である.

参考文献
高知新聞社.1999.高知県人名辞典 新版.
岡村 收.1998.日本魚類学会年会特別講演資料(高知大学理学部開催).

岡村 收 博士 Dr. OKAMURA, Osamu
1933.3.22〜2008.6.24

 1933(昭和8)年3月22日に高知県高岡郡別府村岩屋川に生まれる.1939年4月に大崎村立尋常小学校(高知県 現吾川村)入学,1945年3月に高知市立第2国民学校を卒業.1945年3月に高知県立城東中学校入学,1949年3月に高知県立新制高等学校併設中学校を卒業,1949年4月に高知県立新制高知高等学校入学,1952年3月に高知県立追手前高等学校を卒業. 1952年4月に高知大学文理学部理学科へ入学し,蒲原稔治博士に師事し魚類の分類学的研究を開始する.1957年3月に同学科を卒業し,さらに1年後に同学科専攻科を終了(研究室での2年間はソコダラ科魚類の分類学的研究を行う).1958年4月に京都大学大学院農学研究科修士課程へ入学し,松原喜代松博士のもとで,ソコダラ科魚類の分類学的研究を継続する.1963年3月に同博士課程単位取得退学.1963年4月に京都大学農学部助手に着任し,翌1965年4月に高知大学文理学部助手に着任する.1967年4月に助教授に昇任.1970年3月に "Fauna Japonica - Macrourina (Pisces)-" 日本動物誌-魚綱 ソコダラ類(英文)を出版し,同12月には学位論文 "Studies on the macrouroid fishes of Japan - morphology, ecology and phylogeny -" を出版.1972年に京都大学より農学博士の称号を授与される.1976年4月に日本魚類学会評議委員となる.1977年4月に高知大学文理学部教授に昇任し,同年5月には理学部教授(学部改組のため).1978年10月より1979年9月まで文部省長期在外研究員-アメリカ・イギリス・デンマーク・オランダ・西ドイツ・フランス・香港の各自然史博物館で研究を行う.1980年4月から1992年3月まで日本魚類学会編集委員.1981年4月から1995年3月まで高知大学海洋生物教育研究センター教授を兼任.1990年4月から1995年5月まで高知大学評議委員を勤める.1994年4月より高知大学黒潮圏研究所副所長.1996年3月に高知大学を定年退官.高知大学名誉教授.


参考文献

回顧録「魚類学のメッカを目指して」

岡村收博士著作目録 new !

(遠藤広光)

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