地域協働学専攻の人材育成目標
地域協働学専攻は、地域創生を推進するために地域が必要とする3つの課題を解決できる地域協働リ ーダーを育成することを目的とします。3つの課題とは、(1)地域創生の持続可能性を実現するために必 要な地域協働リーダーの後継者を養成すること、(2)地域協働リーダーにおいて地域創生の推進に必要な 地域長期ビジョンを地域住民とともに策定する能力を育成すること、(3)地域における新たな資源開発と 市場開拓を進めて経済面から地域の持続可能性を高めることです。 育成する人材は、「地域理解力」、「企画立案力」、「協働実践力」をあわせ持った「地域協働リーダー」 が、上記 3 つの課題解決を可能とする高度な専門知識を身に付けることでその機能を高度化させた人材 です。
地域協働学専攻における専門分野
本専攻は、社会学・経済学を中心的な学問領域として、協働的な学びの組織化や地域の長期ビジョンの策定に係る教育・研究を推進するとともに、地域の産業面・文化面で資源開発等と関係を有する農学・美術・スポーツなどを含めて、次の4分野を各専門分野により構成しています。
1)総合地域理解分野
地域社会学、地域福祉論、比較地域社会学、スポーツ社会学、国際経済論、ジェンダー論
研究指導が可能なテーマ・内容 | 担当教員 |
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日本企業の対外直接投資・国際経営 | 大石 達良 |
地域共生社会の実現に向けた地域福祉研究 | 玉里 恵美子 |
調査票調査を用いた地域課題の分析、地域における多文化協働 | 湊 邦生 |
女性が働きやすい地域社会の実現に向けた研究 | 佐藤 洋子 |
2)地域協働教育分野
社会教育論、ESD論、学習経営論、ファシリテーション論、組織学習論、スポーツ・健康科学
研究指導が可能なテーマ・内容 | 担当教員 |
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協働による地域学習の創造、教育改革研究、東アジア社会教育研究 | 内田 純一 |
ナレッジ・マネジメント(知識経営)、協同学習、高等教育開発 | 俣野 秀典 |
地域と学校の連携・協働、社会教育論、地域活動における学び | 斉藤 雅洋 |
地域協働による健康づくり・介護予防支援に関する研究 | 佐藤 文音 |
3)総合地域政策分野
行財政論、コミュニティデザイン論、地域産業論、地域計画論、地域政策学、都市政策学、防災システム論、防災計画論
研究指導が可能なテーマ・内容 | 担当教員 |
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地域産業論、地域経済循環、産業連関分析 | 中澤 純治 |
コミュニティ防災、防災教育、防災商品開発、農山村の六次産業化 | 大槻 知史 |
地域政策学、都市政策学、経済地理学 | 石筒 覚 |
持続可能な地域社会システム及びその多面性に関する研究 | 松本 明 |
防災システム論、防災計画論、地域防災、企業防災 | 藤岡 正樹 |
コミュニティデザイン、起業家育成、ソーシャルイノベーション | 須藤 順 |
4)地域資源開発・市場開拓分野
地域資源管理論、里山管理論、農業経済学、六次産業化論、芸術文化学、デザイン学
研究指導が可能なテーマ・内容 | 担当教員 |
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地域資源管理論、生態人類学、農村社会学、東南アジア地域研究 | 市川 昌広 |
都市農村交流、六次産業化、農村観光経済学 | 霜浦 森平 |
里山管理論、環境社会学、伝統産業、獣害対策 | 田中 求 |
在学生の声
研究テーマ:内発的発展の方法論の検討 -エコノミックガーデニングの検討を通して
【全体と部分の理解と文脈や視点の理解】
大学院に入っての学びは、端的に言うと理論のメガネを「着ける」と「外す」をできる力が付いた事だと考えています。地域協働学部では実習に入り地域の問題の構造、解決する手段を考えてきました。そこで得られたのは実践者として持つべき心構えや考え方でした。これは地域の全体像を見つめる事だったと考えています。対して、研究とは全体像の一部を問題意識に基づいて見つめる事とその現象では説明が付かない点を見つける事です。しかし、その切り口は理論だけではなく複数の視点で見つめる事が必要になります。つまり理論で理解しながらその限界性と現実、それらを複数の方向から眺めるこのような能力が付いた事が大学院での学びだと考えています。
また、私の研究では、アメリカでは地域経済の活性と起業家育成の手法として注目される方法論を検討し、日本の地方においてどのように活用できるか、また、日本に適応させるにはどのような検討が必要なのかを全国の事例を元に考えていこうとしています。
(※2024年執筆)
研究テーマ:地域の若年者就職支援が大学生のキャリア形成に及ぼす効果について
【地域とともにある専門職をめざして】
大学を卒業した後、東京に本社を置く企業に就職し、人材育成や組織開発に携わってきましたが、コロナ禍を機に夫の出身地である高知県へ移住。リモートワークを経験し、地域との関わりのなかで活きる専門職のあり方を探求したいと思うようになり、大学院への進学を決めました。今は高知県の就職支援機関でキャリアコンサルタントとして勤務しながら研究しています。
大学院での学びには、これまで企業人として取り組んできた実践がアカデミックな知見にきちんとルーツを持つことを知る驚きと愉しさがあります。「地域協働」という学びはキャリアの幅を広げ、インパクトを生み出す可能性を秘めていると感じています。ここでの「学び」がどのような行動変容を起こしていくのか。自身にとってだけでなく、このキャンパスでともに過ごす皆さんにも深い関心を持って研究を進めています。
(※2024年執筆)
研究テーマ:公立図書館の課題解決支援サービスに求められる司書の専門性と役割
【アプローチの広さが学問の独自性につながる】
図書館で働くかたわら、学び直しの機会を得ることを願っていましたが、地域協働学専攻でその夢を実現することができました。ただ、その中身は、良い意味で想像していたものと違っていました。
一つは、研究テーマについて、既存の学問分野からアプローチするだけではなく、「地域協働学」という学問の独自性を追求するということ。そして、もう一つは、多様な地域課題について、体験的に協働的に学びを深めることができるということです。「地域の核となる図書館」の可能性を探究する私にとっては、うってつけの場と考えています。
地域課題の解決に挑む人にとって、他では得難いリスキリングの機会になること、間違いなしです。
(※2023年執筆)
研究テーマ:限界集落の集落活動停滞要因に関する考察
【現地での挑戦が研究を生きたものにする】
私は今、中山間地域の限界集落での集落機能の停滞の現状・要因について研究をしています。
地域協働学専攻の魅力は、思いっきり現地に入り、いろんな挑戦ができることです。いろんな境遇の地域、人を見て「協働」の必要性を実際に感じながら研究を進めることができます。
私自身は大豊町といの町の集落をフィールドにしており、実際に聞き取り調査を行なったり、いろんな活動に参加させていただいたりしています。その中で限界集落、集落機能の停滞と重いテーマに向き合い、自分の無力さも時に感じながら、課題解決に向けて研究を行っています。多くの学びが得られるのはもちろんのこと、そこで培った信頼関係は一生物だと感じます。
大学の中では様々な専門を持つ先生方から少人数の授業でより深く学び、大学外では実際にフィールドに出て現状を自分の目で見て、実践を通して課題解決に取り組める環境があります。
このような恵まれた環境で、協働とは何か一緒に向き合ってみませんか?
(※2023年執筆)
地方創生の最前線で思いっきり研究をという希望を叶えられるのが、地域協働学専攻の1番の魅力です。私は現在、空き家の研究をしています。自分で地域を歩き、課題を見つけ、先生、仲間とともに研究を進めています。
大学を一歩出れば、海、山、川、壮大な自然が目の前に広がります。それも、今の日本では目にすることの少ない手付かずの自然です。そこに暮らす人々の営み、都会との関係性、地域が抱える課題、ひいては日本が直面する問題を自分の目線で、何が問題なのか、なぜ問題なのか、解決するためには何が必要かを一生懸命、考えなければなりません。決して楽なことではありませんが、その分達成感はひとしおです。
地域協働学専攻に興味を持ってくださっている皆さんに私がお伝えしたいことは、まずは迷わず飛び込んで欲しい、ということです。きっと自分の想像以上に素晴らしい研究ができますよ。
(※2022年執筆)