高知大学農林海洋科学部・大学院総合人間自然科学研究科農林海洋科学専攻

学び360度! 先輩たちの声
大学での学び方や先生との関係、農学生生活、サークルなどなど……。
高校とは違う大学でのリアルな生活を先輩たちに聞いてみました。

特集記事−Feature article

高知だからできる陸と海の微生物研究最前線

大手企業と共同研究
環状ペプチドの生成に挑む

阪地満帆

農芸化学科4年(2018年度)
島村研究室所属

次世代の機能性物質、環状ペプチド

環状ペプチドとは、アミノ末端とカルボキシル末端とがペプチド結合で結ばれ、環状となったポリペプチド鎖のこと。健康食品や創薬などの分野で、新たな機能性物質として注目を集めています。
僕が研究として取り組んだのは、ある環状ペプチドをターゲットにして、それが食品中にどれくらい含まれるかを測定したり、食品中にどのように生じてくるのかを調べたり、生じてきた物質をいかに効率的かつ純度の高い状態で取り出すかという方法を探ることです。

ターゲット成分をいかに取り出すか

環状ペプチドはそもそも天然で存在している物質ではなく、食品の製造過程で熱を加えると生じてくる成分なので、食品中に含まれる量は非常にわずかです。
例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品といった保健機能食品にするためには、製造においても臨床試験・ヒト試験においてもある程度の量と純度が必要になりますが、そういった将来的な利用を見据えると、ターゲットを効率よく取り出すというのは大事な鍵となる技術と言えます。僕は特にその部分の試行錯誤を1年半かけて行い、目標数値を達成する手法を確立することができました。
実験はなかなか思い通りにはいかず、その原因を自分で考え、先生や先輩とも意見を交わしながら、別の実験でモデルケースを作って試してみたりと苦労しましたが、その分、手応えを得ることができたと感じています。

大学院の先輩の指導のもと、研究に取り組む

企業の研究者から大きな刺激を得る

この研究は、ある大手企業との共同研究として動いていました。僕も3年生後期に実験に参加するようになって以降、企業とのミーティングに参加させてもらいました。分析データを持っていってディスカッションするのですが、その場のスピード感が本当に凄すぎて、こんなのついていけるのかと最初は圧倒されました。相手は企業の研究員として第一線を走っている人たち。とにかく頭の回転が速くて、なんでこの話からその発想が浮かんでくるんだ?と驚くことも多く、とてもいい刺激をもらいました。

学生実験室には様々な機器が揃っている

実験を通じて、時間の大切さを実感

一方、実験の中で一番意識したのは、時間を無駄にしないということです。成分は目に見えないので、目標が達成されているのか失敗しているのかは最後の分析表を見ないとわかりません。分析の一サイクルも長いため、実験を始めてからは、効率よく時間を組めるよう考える努力をするようになりました。
うちの研究室の方針は、「9時から5時のデイタイムでいかに効率的に実験を進めるかを考える」です。指導してくれた島村先生や先輩たちもみんなそうなので、僕も朝きちんと早く来て、日中は集中して実験して、夕方は早く帰るというスタイルが自然と身につきましたね。

知識や技術だけでなく、研究への姿勢も受け継がれている

国際学会を目標に、大学院に進学

これまでの研究活動を通じて、機能性物質の魅力に惹きつけられたことと、自分自身で実験計画を立ててもっと深く研究に携わりたいと思ったことから、僕は4月から大学院に進学することを決めました。
大学院では一つ目標があります。それは、2020年にニュージーランドで開催される食品関係の国際学会で研究成果を発表することです。僕が修士2年の年にあたるので、博士課程に進む先輩と島村先生と3人で行こう!と話をしています。それまで精一杯努力し、国際学会での発表に値するような研究成果を出したいと考えています。

大学院の先輩方と一緒に