高知大学総合科学系生命環境医学部門

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応用微生物学、酵素学、物質生産、発酵食品、機能性食品、遺伝子組換え、酵母、乳酸菌、黒酵母

高知野生酵母(ヤマモモ酵母、Saccharomyces cerevisiae YMb309my)

永田 信治 ながたしんじ (写真右)

[専門領域] 応用微生物学、遺伝子工学、
      酵素化学、発酵醸造学、発酵化学
[研究テーマ] 
●黒酵母β-1,3-1,6-グルカン生産菌の探索と食品利用
●β-1.3-1,6-グルカン分解酵素の探索と定量分析
●香気性に優れた有用酵母の育種と醸造利用
●黒潮圏に生息する野生酵母の探索と製パン利用
●動物の消化器官系に由来する乳酸菌群の探索と分離
●未利用バイオマス由来の乳酸菌群の探索と餌料開発
[研究のモットー]
「温故知新。百聞は一見にしかず。日々是新。明珠在掌。」

村松 久司 むらまつひさし (写真左)

[専門領域] 微生物学、酵素学
[研究テーマ] 
●有用微生物や有用酵素の探索と機能解析
●微生物や酵素の産業利用
[研究のモットー] 「よく学び、よく遊べ」

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環境中には、カビや酵母、乳酸菌やその他の細菌など、様々な微生物が存在しています。レーウェンフックが微生物を顕微鏡で観察して約300年、パスツールが微生物は生命だと言い始めて約150年経ちますが、それよりもはるか以前、実に数千年以上の昔から微生物は我々人間の衣食住を支える大切なパートナーでした。
その代表例が発酵食品です。人間は、穀類や蔬菜類、魚類などの身近な食材を微生物で醸して、消化性・嗜好性・保存性に優れた多彩な食文化を築いてきました。発酵食品は長い人類の歴史を通じて生み出されたバイオテクノロジーによる地域の食文化の成果であり、微生物の有効利用は、人々の健康や地球の生態系を維持し、未来の健康問題や健康課題を解決する鍵でもあります。
そこで我々の研究グループでは、高知というフィールドに生息する様々な微生物を研究し、お酒やパンなど発酵食品、未利用な生物資源や廃棄物の発酵利用によって、地域産業の活性化とより良い暮らしや食生活の向上を目指しています。

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βグルカンとは多糖類の一種。免疫機能の活性化など高い健康増進効果があります。我々は黒酵母を利用してより効率的なβグルカンの生成方法を確立し、同時に安全性の評価も行っています。現在、産官学連携で実用化・商品化が始まったところ。“メイドイン高知大学”の意外な製品が、続々と登場しています!

【やさしいゆず酒】 
高知大学が地元企業と共同研究した機能性多糖「黒酵母β-グルカン」と特産品のユズで、味わいやさしく健康にもやさしいお酒が完成!
(製造販売:高木酒造株式会社)

【くるり。】
生地とクリームに「黒酵母β-グルカン」を使用することで、味や食感はより美味に、カロリーは大幅ダウン。健康的でおいしいスイーツとして注目されています。
(製造販売:菓子工房コンセルト)

【微生物多糖による環境・バイオを実体験する教材】
黒酵母培養液を利用して汚水処理を実体験する環境学習キット。汚れた水があっという間にきれいなる驚き体験で、小・中・高の児童・生徒の環境意識も倍増?!
(制作:独立行政法人科学技術振興機構 協力:(財)日本宇宙少年団)

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トマトやーコンなどの植物素材は、酵母が生育するのに有利な糖度を維持するだけでなく、乳酸菌が生育するのにも有効な栄養素やオリゴ糖に富んでいます。そこで、トマトやヤーコンから分離した発酵力に優れた野生酵母を用いて、それらの分離源であるトマトやヤーコンで発酵させた酵母種で作る製パン法を確立するに至りました。これらは酵母の特性と、それらが生息した植物性素材の特性を利用した、味や香りに個性的な特徴を持つ食品開発といえます。
これらの成果は、酵母も含めて地場産の原料を用いるだけでなく、安価な生産工程に工夫をこらした付加価値を持つ食品開発でもあります。)

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【酵素を利用した有用物質生産法の開発】
立体異性体といって、化学物質の中には一見よく似た構造をもっていますが、3次元空間では重ね合わすことのできないものがあります。立体異性体の関係にある化学物質同士はよく似ているので、それぞれを高い純度で合成するのは難しいといわれています。特に、製品に高い純度が要求される医薬品合成分野などでは、このような化学物質を作り分ける技術が必須です。例えば、医薬品原料として有用なフェニルセリンという化学物質には4種類の立体異性体が存在します。私達は、この4種類の立体異性体のうち1種類だけを作る新しい技術を開発するために微生物酵素の探索を行い、土の中からD-フェニルセリンデアミナーゼという新しい酵素を持った細菌を発見しました。この微生物酵素を利用して、フェニルセリンの4種類の立体異性体のうちD-threo-フェニルセリンだけを作る微生物発酵法を開発しました。
(特許公開2010-187658、Appl. Microbiol. Biotechnol., 90(1), p.159-72, 2011)

【酵素を利用したバイオセンサーの開発】
様々な物質が含まれている細胞の中で、酵素は特定の化合物だけに作用します。つまり、酵素は化合物の形を厳密に識別できるということです。。この性質から、酵素をセンサーとして利用することもできます。例えば、血糖値を測定するためにグルコース脱水素酵素やグルコース酸化酵素がグルコースセンサーとして実用化されています。

微生物を分離するための試料採取

私達は、食品や血液に含まれる抗酸化物質であるエルゴチオネインの新しい定量分析法を開発するために微生物を探索し、土に棲む細菌からエルゴチオナーゼという酵素を発見しました。この酵素をバイオセンサーにして、食用キノコや血液中に含まれるエルゴチオネインの量を測定する新しい方法を開発しました。
(特許公開2012-65591、Appl. Microbiol. Biotechnol., in press)


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酵素は細胞内の様々な物質の中から決まった物質にのみ作用し、別の物質に変化させます。また、多くの酵素反応は常温常圧で促進されます。つまり、酵素の力を借りれば、比較的温和な反応条件で目的の反応だけを促進させることができるため、化合物を効率よく生成できます。このすばらしい酵素の能力を応用して、人々の食や健康、暮らしに役に立つ次世代のものづくりを進めていくのが我々の使命。豊かな自然に恵まれた高知には、まだまだたくさんの未知の微生物や有用酵素が眠っているはずです。それらを探し出して有効活用していきたいと考えています。

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