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2015年1月の魚


マツカサウオ Monocentris japonica (Houttuyn, 1782) (キンメダイ目マツカサウオ科)

 マツカサウオ科魚類はインド洋・太平洋の熱帯から亜熱帯域に分布し,沿岸から沖合のおよそ水深300mまで出現します.本科にはマツカサウオ属 Monocentris Bloch and Schneider, 1801のマツカサウオM. japonica (Houttuyn, 1782), M. neozelanicus (Powell, 1938), そしてM. reedi Schultz, 1956の3種と,1属1種のCleidopus gloriamaris De Vis, 1882(オーストラリア東西沿岸)の合計2属4種が知られています.そのうち,
日本周辺にはマツカサウオM. japonicaのみが分布します.本科は最大でも体長30 cm 程で,頭と体は鎧のような黄色の硬い鱗に覆われ,鱗の縁辺と頭部の模様が黒色であり,一目でそれとわかる特徴です.名前の通りの容姿で,英名はpinecornfish “マツボックリウオ”です.また,強大な一対の腹鰭棘と互い違いに倒れる背鰭棘には,基部にロック機構を備え,棘が起きてロックした状態を解除するにコツがいります(少し押しながらひねる).

 マツカサウオ属は,下顎先端の下面に1対の小発光器をもち,そこに発光バクテリアを共生させて,その光を利用する発光魚として有名です.ただし,その光はかなり弱く,黒色色素胞の伸縮で明滅する仕組みになっています.一方,C. gloriamaris も同様の共生発光ですが,その発光器は大型で下唇の両側に一対あり,赤色のフィルターで覆われています.口を開けると発光器が露出して光が見え,閉じると上唇で覆われるので光が遮られる仕組みで,マツカサウオ属に比べて光も強いようです.

 マツカサウオは高知県では西部沿岸の底びき網でよく漁獲されますが,売り物にはならず捨てられています.マツカサウオは普通種ですが,よく採集のついでにそれらを集めて持ち帰ります.鱗が付いたまま焦げる程両面を焼いて,鱗を剥がし,少し醤油を垂らして食べれば,意外にも美味しい白身の魚です.機会があれば,試してみて下さい.


参考文献

羽根田弥太.1986.発光生物.恒星社厚生閣,東京.318pp.

林 公義.2013.マツカサウオ科.中坊徹次 (編), p. 594, 1899. 日本産魚類検索 全種の同定. 第三版. 東海大学出版会, 秦野.

Nelson, J. S. 2006. Fishes of the world, 4th ed. Wiley and Sons Inc., Hoboken. 601pp.


写真標本: BSKU 94642, ca. 120 mm SL, 2008年4月25日,高知市御畳瀬魚市場(大手繰り網),幸成丸,採集・写真撮影:中山直英.

(遠藤広光)




Copyright (C) Laboratory of Marine Biology, Faculty of Science, Kochi University (BSKU)