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2018年1月の魚


ボウズカジカ Ebinania brephocephala (Jordan and Starks, 1903) (スズキ目ウラナイカジカ科)

 ウラナイカジカ科 (Psychrolutidae)は世界で8属約38種が知られ,日本からは6属11種が報告されています (中坊・甲斐, 2013; Nelson et al., 2016). そのうち,アカドンコ属 Ebinania Sakamoto, 1932 には6種が含まれ,日本近海にはボウズカジカ E. brephocephala (Jordan and Starks, 1903)とアカドンコ E. vermiculata Sakamoto, 1932 の2種が分布します (Jackson and Nelson, 2006; 中坊・甲斐, 2013). Ebinania を設立した“Sakamoto”は,松原喜代松博士です(1932年に阪本から松原へ改姓).Sakamoto (1932) の原記載で,本属の和名はエビナカジカ属に,種の和名はエビナカジカにされましたが,後にアカドンコ属とアカドンコへ変更されています(松原, 1955).タイプは岩手沖で岩手水産試験場により採集された1標本で,属名の“Ebina”は標本入手に関係した水産講習所(現,東京海洋大学)動物学教室の海老名謙一博士(後に東京水産大学名誉教授)に献名されたものです.

 ボウズカジカは頭部に小皮弁がないこと,頭部や体側に顕著な斑紋がないこと, 胸鰭鰭条数が17〜19であることで容易にアカドンコと区別できます (矢部, 1983; 中坊・甲斐, 2013). また, アカドンコは体長が30 cm以上にもなる大型種であるのに対し,ボウズカジカは大型個体でも体長15 cm程度にしかなりません (矢部,1984). 本種は海底に依存した底生性魚類で, 本科魚類は生息深度の幅が広く,水深100mほどの浅海から1,600mまでの深海にかけて底曳き網で採集されます (Nelson, 1986). 本種は日本近海のみに分布し, 福島県から高知県にかけての太平洋沿岸, 九州沿岸, および東シナ海から報告され, 高知市御畳瀬魚市場でもしばしば採集されます (矢部, 1983; Shinohara et al., 2005; 目黒•本村,2011; Motomura et al., 2015). 一方,近縁のアカドンコは北日本の太平洋岸沖からの採集例が多く知られています(矢部, 1983).ボウズカジカの採集水深帯は, 福島県から高知県より, 東シナ海でより深く, 本種は分布域が低緯度になるほど, 適水温を求めてより深場へ生息することが示唆されています (目黒•本村, 2011).

 ボウズカジカはその名の通り, つるつるとした坊主頭と, なんとも愛くるしい顔立ちが印象的な深海魚で, 最近では水族館でも飼育され, そのかわいさから水族館での人気者となっているようです(石垣, 2013). 標本とはまた違った, 生きた姿でしか味わえないかわいさを, 一度は観に行きたいものです.

参考文献

石垣幸二. 2013. 深海生物〜奇妙で楽しいいきもの〜. 笠倉出版社, 東京.

Jackson, K. L. and J. S. Nelson. 2006. Ebinania australiae, a new species of fathead sculpin from southern Australia (Scorpaeniformes: Psychrolutidae). Records of the Australian Museum, 58: 37-42.

Jordan, D. S. and E. C. Starks. 1903. Description of a new species of sculpin from Japan. Proceedings of the United States National Museum, 26 (1326): 689-690.

松原喜代松.1955.魚類の形態と検索 II.石崎書店,東京.791-1605pp.

目黒昌利・本村浩之.2011. 鹿児島県野間池沖から得られたボウズカジカ Ebinania brephocephala (カサゴ目:ウラナイカジカ科)の記録. Nature of Kagoshima, 37: 27-29.

Motomura, H., A. Habano, Y. Arita, M. Matsuoka, K. Furuta, K. Koeda, T. Yoshida, Y. Hibino, B. Jeong, S. Tashiro, H. Hata, Y. Fukui, K. Eguchi, T. Inaba, T. Uejo, A. Yoshiura, Y. Ando, Y. Haraguchi, H. Senou and K. Kuriiwa. 2015. The ichthyofauna of the Uji Islands, East China Sea: 148 new records of fishes with notes on biogeographical implications. Memoirs of the Faculty of Fisheries, Kagoshima University, 64: 10-34.

中坊徹次・甲斐嘉晃. 2013. ウラナイカジカ科. 中坊徹次 (編), pp.1189, 2067. 日本産魚類検索全種の同定. 第3版. 東海大学出版会, 秦野.

Nelson, J. S. 1986. Family No. 160: Psychrolutidae. Page 491 in M.M. Smith and P. C. Heemstra. Smiths' Sea Fishes. Macmillan South Africa, Johannesburg.

Nelson, J.S., T.C. Grande and M.V.H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

Sakamoto, K. 1932. Two new genera and species of cottoid fishes from Japan. Journal of the Imperial Fisheries Institute, 27(1): 1-6.

Shinohara, G., T. Sato, Y. Aonuma, H. Horikawa, K. Matsuura, T. Nakabo and K. Sato. 2005. Annotated checklist of deep-sea fishes from the waters around the Ryukyu Islands, Japan. Deep-sea fauna and pollutants in the Nansei Islands. Monographs of the National Science Museum Tokyo, (29): 385-452.

矢部衛. 1983. ウラナイカジカ科. 尼岡邦夫・仲谷一宏・新谷久男・安井達夫 (編), pp. 156-157. 東北海域・北海道オホーツク海域の魚類. Fishes from the north-eastern Sea of Japan and Okhotsk Sea off Hokkaido. 日本水産資源保護協会, 東京.

矢部衛. 1984. ウラナイカジカ科. 益田一・尼岡邦夫・荒賀忠一・上野輝彌・吉野哲夫 (編), pp. 315-316. 日本産魚類大図鑑. 東海大学出版会, 東京.

写真標本:BSKU 94520,  107.6 mm SL, 2008年4月16日, 高知市御畳瀬魚市場, 幸成丸 (大手繰り網), 高知市南方沖, 水深約 270m.

(山本祥代)


Copyright (C) Laboratory of Marine Biology, Faculty of Science, Kochi University (BSKU)