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2018年8月の魚

ゴテンアナゴ Ariosoma meeki (Jordan and Snyder, 1900) (ウナギ目アナゴ科)

 ウナギ目アナゴ科 (Congridae) は世界では30属約200種が,日本では14属26種が知られ,三大洋の熱帯から温帯域に分布します(Nelson et al., 2016;Eschmeyer and Fong, 2018;波戸岡,2018).本科は鱗がなく通常は胸鰭をもつこと,背鰭と臀鰭が尾鰭を介して連続すること,側線が完全であることが特徴です(浅野,2006).アナゴ科はクロアナゴ亜科(Congrinae),チンアナゴ亜科(Heteroconginae),そしてホンメダマアナゴ亜科(Bathymyrinae)の3亜科に分類され,ゴテンアナゴが属するゴテンアナゴ属 (Ariosoma) はホンメダマアナゴ亜科に含まれます(Nelson et al., 2016).
 ゴテンアナゴはマアナゴ(Conger myriaster)よりもやや太短く,上下の顎は等長で頭がやや肥大します.また,眼の後縁に上下2個の濃褐色の斑点がある,尾鰭は白い,背鰭起部は胸鰭基底の上方か胸鰭中央の上方にあるなどの特徴をもちます(阿部,1989).本種は日本では房総半島から九州南岸の太平洋沿岸,瀬戸内海,新潟県から九州北西岸の日本海・東シナ海(散発的)の,浅海の砂泥底から砂底に生息します(波戸岡,2018).土佐湾でのおもな生息水深は20-30 mですが(遠山・堀川,1984),東シナ海における生息水深は100 m前後と深く,200 m付近からの漁獲例もあります(山田ほか,2007).さらに,東シナ海大陸棚縁辺などの深みには黒い胸鰭をもつ個体が多く,沿岸域の浅海では白色(生時には透明)の胸鰭をもつものが多い傾向にあることが報告されています(山田ほか,2007).
 ゴテンアナゴの学名は,以前には Anago anago (Temminck and Schlegel, 1847) が使用されていました.しかし,Conger anago Temminck and Schlegel, 1847のレクトタイプ (RMNH 3682b) の調査や原記載の検討の結果,C. anagoはハナアナゴに適用すべき学名であるとされています(Smith, 1989;波戸岡,2013).一方,ゴテンアナゴの学名については,文献調査からCongrellus meeki Jordan and Snyder, 1990が該当する有効で最も古いものと判明し,Congrellus Ogilby, 1898は Ariosoma Swainson, 1838の新参異名と判断されたことから,日本産魚類検索第二版以降,ゴテンアナゴの学名はAriosoma meeki (Jordan and Snyder, 1990) となっています(波戸岡,2013 ).
 写真個体は2008年3月9日に高知県御畳瀬漁港の沖合底曳き網漁(大手繰り網)で採集されました.ゴテンアナゴは東シナ海では底びき網で漁獲されますが,漁獲量はそれほど多くはありません.味はマアナゴには劣りますが,価格は安く,天ぷらや蒲焼などにして食べられます(阿部,1989;山田ほか,2007).実際にマアナゴとゴテンアナゴで食べ比べをしたいものです.

参考文献

阿部宗明.1989.原色魚類検索図鑑T,北隆館,東京.v+358pp.

浅野博利.2006.アナゴ科.岡村 収・尼岡邦夫(編),pp. 84−88.山渓カラー名鑑 日本の海水魚.第三版.山と渓谷社,東京.

Eschmeyer, W. N. and R. Fricke. 2018. Catalog of fishes: Species by family/subfamily: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/SpeciesByFamily.asp. Electronic version accessed 31 July. 2018.

Jordan, D. S. and J. O. Snyder. 1900. A list of fishes collected in Japan by Keinosuke Otaki, and by the United States steamer Albatross, with descriptions of fourteen new species. Proc. U.S. Natl. Mus., 23(1213): 335-380, pls. 9-20.

波戸岡清峰.2013.アナゴ科.中坊徹次(編),pp.279–287,1802−1806.日本産魚類検索 全種の同定,第三版.東海大学出版会,秦野.

波戸岡清峰.アナゴ科.2018.中坊徹次(編),pp.74−75.小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説. 小学館, 東京.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

Smith, D. G. 1989. Family Congridae. pp. 460–567 in E. B. Bohlke ed. Fishes of the western North Atlantic, pt. 9, Vol. 1. Mem. Sears Found. Mar. Res., I. Yale Univ., New Haven.

通山正弘・堀川博史.1984.土佐湾における底魚類分布の帯状構造.pp.69−79.昭和58年度漁業資源研究会議西日本底魚部会報,水産庁,東京.

山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次. 2007. 東シナ海・黄海の魚類誌. 東海大学出版会, 東京.Lxxiii+1263pp.

写真標本:BSKU 95349,*** mm TL,2008年3月9日,高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),幸成丸.

(坂口夕貴)


2018年7月の魚



カゴカキダイ Microcanthus strigatus (Cuvier, 1831)(スズキ目カゴカキダイ科)

 スズキ目カゴカキダイ科(Microcanthidae)は,東インド・西太平洋に分布し,体高が高く,著しく側偏すること,口が小さくて尖り,両顎には櫛状の鋭い歯が帯状に並ぶことが特徴です(Nelson et al., 2016; 波戸岡,2018).本科にはAtypichthys,カゴカキダイ属 MicrocanthusNeatypus,そしてTilodonの4属5種が含まれ(Nelson et al., 2016),日本にはカゴカキダイ属のカゴカキダイ Microcanthus strigatus (Cuvier, 1831) のみが分布します(島田,2013).カゴカキダイ属には5名義種が知られ,現在はカゴカキダイMicrocanthus strigatus 1種のみが有効種として扱われています(Eschmeyer et al., 2018).
 カゴカキダイは黄色の体に5本の黒褐色のやや傾いた縦帯をもつこと,左右の鰓膜が峡部前方で癒合すること,稚魚期にトリクチス期幼生を経ないことなどが特徴です(島田,2013;波戸岡,2018).本種は東インド・西太平洋の浅海岩礁域に分布し(波戸岡,2018),日本周辺では青森から九州沿岸の日本海,東シナ海,太平洋沿岸,琉球列島,朝鮮半島南岸,済州島,台湾,中国の浙江省から広東省沿岸で見られます(島田,2013).稚魚や幼魚はタイドプールでも観察されます(波戸岡,2018).餌は小動物で,その小さな口でついばむように捕食します.
 島田(2013)はYagishita et al. (2002) に従い,「日本産魚類検索全種の同定 第3版」では,カゴカキダイ属をカゴカキダイ科としましたが,Nelson et al. (2016)の 「Fishes of the world 第3版」 では,イスズミ科(Kyphosidae)のカゴカキダイ亜科(Microcanthinae)に分類されています.ここでは島田(2013)に従い,カゴカキダイ科としました.
 写真標本は,高知市御畳瀬漁港の沖合底曳き(大手繰り網)で採集されました.御畳瀬漁港では時々カゴカキダイが水揚げされているのを見かけますが,まとまって漁獲されることはないため,他の魚と一緒に練り物の材料として扱われています.ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑によれば,本種は“究極の美味”とされています.私はまだ食べたことがないので,機会があれば食べてみたいものです.

引用文献

Cuvier, G. 1831. Des Pemphérides. in G. Cuvier and A. Valenciennes, eds., Historie Naturelle des Poissons. Vol. 7. F. G. Levraut, Paris, pp. i–xxix+1–531, pls.170–208.

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan. 2018. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp Electronic version accessed 15 June. 2018.

波戸岡清峰. 2018. カゴカキダイ科. 中坊徹次(編),pp. 319 小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

ぼうずコンニャク. 2018. カゴカキダイ.市場魚介類図鑑. :https://www.zukan-bouz.com/syu/カゴカキダイ.accessed 30 June 2018.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

島田和彦. 2013. カゴカキダイ科. 中坊徹次(編),pp.1076,2038. 日本産魚類検索 全種の同定,第三版.東海大学出版会,秦野.

Yagishita, N., T. Kobayashi and T. Nakabo. 2002. Review of monophyly of Kyphosidae (sensu Nelson 1994), inferred from the mitochondrial ND2 gene. Ichthyological Research, 49: 103-108.

写真標本: BSKU 112346, 152.4 mm SL,2014年1月23日,高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),幸成丸,土佐湾.

(丸山悠太)


2018年6月の魚


カナド Lepidotrigla guentheri Hilgendorf, 1879(スズキ目ホウボウ科)

 スズキ目ホウボウ科(Triglidae)魚類は,世界の熱帯から温帯海域に分布し,現在知られる9属126種のうち,日本からは3属19種が記録されています(山田・柳下,2013; 柳下,2018).本科魚類は,頭部が骨質の甲で被われ,吻棘をもちます.また,胸鰭上部が大きく,下部の3軟条が遊離していることなどが特徴です.胸鰭の遊離軟条の表皮には,味蕾に類似した細胞があり,これを指のように動かすことによって,海底に潜む餌を探査します(柳下,2018).また,ホウボウ科魚類は鰾に付随する発音筋を使って,音を出すことができます(Nelson et al.,2016; 都木,2017).

 ホウボウ科は,Prionotinae亜科,Pterygotriglinae亜科,Triglinae亜科の3亜科に分類され,カナガシラ属(Lepidotrigla)はTriglinae亜科に含まれます(Nelson et al.,2016). カナドが属するカナガシラ属(Lepidotrigla)は,鋭いとげのある骨質板が2つある背鰭全体にあることや,体と尾にある鱗が大きいこと,側線鱗の数が通常60よりも少ないこと,後頭部に通常深い溝があるなどの特徴から,他属と識別されます(Richards, 1999).カナガシラ属は現在,77名義種が存在し,そのうち54種が有効とされています(Eschmeyer et al.,2018).日本からは,次の10種が報告されています: イゴダカホデリ L. alata (Houttuyn, 1782),トゲカナガシラ L.  japonica (Bleeker, 1854),カナガシラ L. microptera Günther, 1873,カナド L. guentheri Hilgendorf, 1879,ソコカナガシラ L. abyssalis Jordan and Starks, 1904,オニカナガシラ L. kishinouyei Snyder, 1911,ヒメソコカナガシラ L. hime Matsubara and Hiyama, 1932,ヒレナガカナガシラ L. kanagashira Kamohara, 1936,ヒレホシカナガシラ L. punctipectoralis Fowler, 1938,ツラナガソコカナガシラL. longifaciata Yatou, 1981,およびボウズカナガシラ L. sp. (山田・柳下,2013).

 カナド L. guentheri はドイツの動物学者 Franz M. Hilgendorf 博士により,東京で得られた1標本に基づき1879年に記載されました.Hilgendorf 博士は日本に滞在した1873年から1876年に多くの標本を採集し,ドイツへ持ち帰っています.カナドのホロタイプは,Hilgendorf 博士が帰国後に働いたドイツのベルリン自然史博物館(ZMB)に現在も所蔵されています.種小名 guentheri は.大英自然史博物館の動物学者 Albert C. G. Günther博士 に献名したものです(中坊・平嶋,2015).本種は,背鰭第2棘が第1棘より著しく長いことや,胸鰭内側が下方の白色から青色の虫食い状の斑を含む大黒斑と中央部の黄緑色,縁辺の薄い赤褐色からなる模様などの特徴から,同属他種と識別できます(山田・柳下,2013;柳下,2018).本種は日本では青森県から九州南岸の各地沿岸,瀬戸内海,八丈島や東シナ海大陸棚域までの広い地域に分布し,水深60mから350mの貝殻混じりの砂底から貝殻・泥混じりの砂底に生息します(山田・柳下,2013;柳下,2018).

 写真個体は,2018年4月23日に高知市御畳瀬漁港の沖合底曳き網漁(大手繰り網)で採集されました.御畳瀬漁港では,本種の他にも日本でみられるホウボウ科魚類の多くを目にすることができ,本種も含め食用として,練り物などとして利用されます.本科魚類の大きな胸鰭の内側は,種によって様々な模様や色をしているので,目にする機会があれば確認して比べてみてください.

参考文献

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan. 2018. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 2 May. 2018.

中坊徹次・平嶋儀宏 2015.ホウボウ科. pp.146-147 日本産魚類全種の学名 語源と解説. 東海大学出版部,秦野.

Nelson, J.S., T.C. Grande and M.V.H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

Richards, W. J. 1999. Trglidae. Pages 2359-2382 in K. E. Carpenter and V. H. Niem, eds. The living marine resources of the western central Pacific. Volume 4, Bony fishes Part 2 (Mugilidae to Carangidae). Food and Agriculture Organization of the United Nations, Rome.

都木靖彰.2017.7章 鰾. 矢部 衞・桑村哲生・都木靖彰(編), pp.73-79.魚類学.恒星社厚生閣, 東京

柳下直己. 2018. ホウボウ科. 中坊徹次(編),pp.220-221.小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説. 小学館, 東京

山田梅芳・柳下直己.2013.ホウボウ科.中坊徹次(編),pp,720-726,1951.日本産魚類検索全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

写真標本:BSKU 123708,141.1 mm SL, 土佐湾,高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),2018年4月23日.

(溝脇一輝)


2018年5月の魚



ホウライエソ Chauliodus sloani Bloch and Schneider, 1801(ワニトカゲギス目ホウライエソ科)

 ワニトカゲギス目ホウライエソ科(Chauliodontidae)魚類は,世界中の中深層から漸深層に分布します.本科魚類はホウライエソ属(Chauliodus)のみを含み,これまでに17種が記載され,9種が有効とされています(Eschmeyer et al., 2018).また,日本からはホウライエソChauliodus sloani Bloch and Schneider, 1801とヒガシホウライエソChauliodus macouni Bean, 1890の2種が知られています(Gibbs, 1986;藍澤, 2018).本属は体が細長く,体側に5縦列の六角形の鱗状紋があり,体表が薄いゼラチン状の膜に覆われる,背鰭基部が臀鰭基部のはるか前方に位置する,背鰭第1棘が著しく伸長する,ひげがないか非常に短いなどの特徴をもちます.また,本属は口が大きく,前方には著しく長い牙状の歯をもち,上顎の後方には小さな櫛状の歯を有します(藤井, 1984;Gibbs, 1986;Harold, 1999).さらに,頭と顎が上へ跳ね上がるような構造になっており,その力を利用して捕らえた餌を飲み込みます(尼岡, 2009).また,本属は仔魚期には夜になると水面近くまで鉛直移動をすることも知られています(Gibbs, 1986;Harold, 1999).

 ホウライエソは西地中海で採集された1標本に基づき,Bloch and Schneider(1801)によって記載され,同時に本種をタイプ種としてSchneider(1801)がホウライエソ属Chauliodus を設立しました.本種のホロタイプは発見当初,Shaw and Nodder(1798)により誤ってカワカマス属の1種 Esox stomias と同定されていました(Eschmeyer et al., 2018).

 日本産の2種では,ホウライエソはヒガシホウライエソと比較して,前上顎骨の第3歯が第4歯より短く,眼後発光器が円形という特徴から区別されます(藍澤・土居内,2013).本種は地中海を含む三大洋に広く分布し,日本では北海道から琉球列島までの太平洋沖,小笠原諸島近海,オホーツク海,沖縄舟状海盆などから報告されています(藍澤・土居, 2013).

 日本産魚類検索第3版によるとホウライエソ属はホウライエソ科(Chauliodontidae)に含められていますが,Nelson (2006) やNelson et al. (2016) では,ワニトカゲギス科(Stomidae)ワニトカゲギス亜科(Stominae)のホウライエソ族(Chauliodontini)と分類されています.ここでは日本産魚類検索第3版に従い,ホウライエソ科としました.

 ホウライエソは長く鋭い歯,上へ跳ね上がる顎,六角形の鱗状紋などをもち,英名ではViperfish(毒蛇の魚)と呼ばれるほどの厳つい風貌をしています.本種はおもに小型の魚類や甲殻類を捕食しますが,同海域に生息するキンメダイなどの胃内容物から度々見つかります(東京都島しょ農林水産総合センター, 2011).また,体が脆く特徴的な鱗状紋も網で引き上げられる際には,ほとんど皮膚と一緒に取れてしまいます(Harold, 1999).一度は傷のない綺麗な個体を見てみたいものです.

参考文献

藍澤正宏. 2018. ホウライエソ科. 中坊徹次(編),pp. 142-143. 小学館の図鑑Z 日本魚類館
-精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

藍澤正宏・土居内龍. 2013. ホウライエソ科. 中坊徹次(編),pp. 385, 1839.日本産魚類検索 全
種の同定 第3版.東海大学出版会,秦野.

尼岡邦夫. 2009. 深海魚 暗黒街のモンスターたち.ブックマン社,東京.223pp.

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan. 2018. Catalog of fishes: genera, species, reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Electronic version accessed 2 May. 2018.

藤井英一. 1984. ワニトカゲギス科.益田 一・尼岡邦夫・荒賀忠一・上野輝彌・吉野哲夫 (編),pp. 48−49, pl. 50.日本産魚類大図鑑.東海大学出版会,東京.

Gibbs, R. H., Jr. 1986. Family No. 68; Chauliodontidae. Pages 230-231 in M. M. Smith and P. C.
Heemstra, eds. Smiths' Sea Fishes. Macmillan, South Africa, Johannesburg.

Harold, A. S. 1999. Chauliodontidae. Pages 1909-1910 in K. E. Carpenter and V. H. Niem, eds. The living marine resources of the Western Central Pacific. Volume 3. Batoid fishes, chimaeras and bony fishes part 1 (Elopidae to Linophrynidae). FAO, Rome.

Nelson, J. S. 2006. Fishes of the world, 4th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xix+601pp.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and
Sons, Hoboken. xli+707pp.

東京都島しょ農林水産総合センター.2011.東京おさかな図鑑, 珍魚採集報告第130号 ホウライエソ:http://www.ifarc.metro.tokyo.jp/27,15198,55,228.html. (参照日 2018-05-02).

写真標本: BSKU 113950, 147.2 mm SL,2014年4月23日,高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),幸成丸,須崎沖,水深 350-365 m.

(小泉雄大)


2018年4月の魚



バケオニカクレウオ Pyramodon lindas Markle and Olney, 1990(アシロ目カクレウオ科)

 アシロ目カクレウオ科魚類は三大洋の温帯から熱帯の浅海から深海域に広く分布し,世界では8属35種が,そのうち日本では6属13種が知られます(Markle,1999;藍澤・土居内,2013; Nelson et al., 2016; Eschmeyer and Fong, 2018).本科は体が細長く,上主上顎骨を欠くこと,背鰭と臀鰭の基底が長いこと,肛門が体の前方に位置することなどが特徴で,仔魚期(ベクシリファー期)には著しく伸長した背鰭第1鰭条をもちます(Markle, 1999;遠藤,2018).本科魚類は“カクレウオ”の名のごとく,ナマコやヒトデ,二枚貝類の体内を棲み処とする種と,自由生活をする種を含みます(Markle,1999). また,本科魚類は英名でPearlfishesと呼ばれ,面白いことに,養殖真珠用の二枚貝であるシロチョウガイの内部から,真珠層にコーティングされたカクレウオ科の一種 [ホソシンジュカクレウオOnuxodon fowleri の可能性が高い] が報告されたこともあります(林ほか,2004).

 カクレウオ科はPyramodontinae亜科,Carapinae亜科,そして Tetragondacninae亜科の3亜科に分類され,オニカクレウオ属PyramodonはPyramodontinae亜科に含まれます(Nelson et al., 2016).オニカクレウオ属は,鋤骨に1本の大きな犬歯をもつこと,腹鰭があること,背鰭起部が臀鰭起部の直上かその前方に位置すること,そして稚魚期には著しく細長くないことなどが特徴です(Markle, 1999).現在本属には,次の4有効種が含まれます:オニカクレウオPyramodon ventralis Smith and Radcliff, 1913, P. punctatus (Regan, 1914), バケオニカクレウオP. lindas Markle and Olney, 1990, P parini Markle and Olney, 1990.バケオニカクレウオは,Markle and Olney (1990) によって,北西オーストラリアの水深約300−326 mで得られた5標本に基づき記載され,胸鰭鰭条数が21−25であること,背鰭と臀鰭の縁辺が黒いこと,臀鰭起部より前方の背鰭鰭条数が11−18であることなどの特徴から,同属他種と識別されます(Machida and Okamura, 1993;Markle, 1999).本種は,自由生活をする種で,これまでのところ,インドのマンナール湾,オーストラリア北岸,南シナ海,そして土佐湾から知られるのみです(Markle and Olney, 1990; Machida and Okamura, 1993; Markle, 1999, 2000;藍澤・土居内,2013; Joshi et al., 2016).日本からは,Machida and Okamura (1993) によって土佐湾から得られた7標本が報告されて以来,本種の採集記録はないようです(Machida and Okamura, 1993; 藍澤・土居内, 2013)さらに,バケオニカクレウオは,成長に伴い腹鰭起部と肛門中央部までの間隔が著しく長くなることで,臀鰭起部が体の後方へ移動するという面白い特徴をもっています(Machida and Okamura, 1993).

 写真個体は,1983年11月8日に高知市御畳瀬漁港の沖合底曳き網漁(大手繰り網漁)で採集されました.採集当時,本標本はオニカクレウオP. ventralisに同定されていましたが,Machida and Okamura (1993) によって 土佐湾で採集された7標本に基づきバケオニカクレウオPyramodon lindas として報告されました.以前は高知市の御畳瀬漁港でバケオニカクレウオが稀に採集されていたようですが,最近では見かけることがありません.

引用文献

藍澤正宏・土居内龍.2013.カクレウオ科.中坊徹次(編),pp. 525-528, 1880-1881.日本産魚類検索全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

遠藤広光.2018.アシロ目.中坊徹次(編),pp. 164-165.小学館の図鑑Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

Eschmeyer, W. N. and J. D. Fong. 2018. CAS - Catalog of Fishes - Species by Family. (http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/SpeciesByFamily.asp#Table2). Online Version accessed 6 April. 2018.

林 公義・市村道明・藍澤正宏.2004.カクレウオ類の珍しい標本.2004年度日本魚類学会講演要旨 Advance Abstracts for the 37th Annual Meeting, 2004.日本魚類学会,東京.

Joshi, K. K., K. Kannan, P. U. Zacharia, J. A. Johnson and G. George. 2016. First record of Pyramodon lindas (Markle and Olney, 1990) (Ophidiforms: Carapidae) from Indian Seas. Marine Biodiversity Records, 9: 45-48.

Machida, Y. and O. Okamura. 1993. The sympatric occurrence of the carapid fishes Pyramodon ventralis and P. lindas in Japanese waters. Japanese Journal of Ichthyology, 40: 153−160.

Markle, D. F. 1999. Carapidae. Pages 10-21 in J. G. Nielsen, D. M. Cohen, D. F. Markle and C. R. Robins, eds. FAO Species catalogue. Volume 18. Ophidiiform fishes of the world (Order Ophidiiformes). An annotated and illustrated catalogue of pearlfishes, cusk-eels, brotulas and other ophidiiform fishes known to data. FAO Fisheries Synopsis. No. 125. FAO, Rome.

Markle, D. F. 2000. Carapidae. Page 596 in J. E. Randall and K. K. P. Lim, eds. A checklist of the fishes of the South China Sea. The Raffles Bulletin of Zoology Supplement, No. 8.

Markle, D. F. and J. E. Olney. 1990. Systematics of the pearlfishes (Pisces: Carapidae). Bulletin of Marine Science, 47: 269-410.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

写真標本:BSKU 39669, 328 mm SL, メス,1983年11月8日,高知市御畳瀬漁港(大手繰り網).

(水町海斗)


2018年3月の魚



シャチブリ Ateleopus japonicus Bleeker, 1853(シャチブリ目シャチブリ科)

 シャチブリ科 (Ateleopodidae) は4属11種が知られ,カリブ海を含む東大西洋やインド・西太平洋,そしてパナマやコスタリカ沖の東太平洋沿岸から水深600mの深海域に広く分布します (Nelson et al., 2016). シャチブリ属 Ateleopus は,背鰭鰭条数が8–10,胸鰭鰭条数が12–14, 臀鰭と尾鰭の合計鰭条数が96–131,鰓耙数が0+8–11,脊椎骨数が113–136(腹椎骨数 26–29 + 尾椎骨数 86–107),上顎に1–3列の小歯が並ぶ,眼の後縁に突出した大きな1棘がある, 腹鰭の先端が広がり丸みを帯びる,尾鰭が長い (73–83 % SL) などの特徴により,他属と識別されます (Kaga, 2016).

 日本周辺に分布するシャチブリ属は, これまでシャチブリ A. japonicus Bleeker 1853, ムラサキシャチブリ A. purpureus Tanaka 1915, タナベシャチブリ A. tanabensis Tanaka 1918,そしてシログチシャチブリA. sp. の4種とされてきました(藍澤・土居内,2013).本属魚類は体がゼリー状で柔らかく,破損しやすいことから分類が難しく,山田・伊東(1982)が東シナ海から2未同定種を,望月(1982)が九州−パラオ海嶺から2未同定種 [1種はのちにシログチシャチブリの和名が提唱され(望月, 1984),もう1種はシャチブリ(Kaga et al., 2015)と判明] を,岡村(1985)が沖縄舟状海盆から1未同定種を報告しています.

 最近,Kaga et al. (2015) は,シャチブリ,ムラサキシャチブリとタナベシャチブリの分類学的再検討を行い,これら3種の重要な識別形質とされた上顎歯の有無や胸鰭長(臀鰭起部に達しないものから,これを超えるものまで),腹鰭長,背鰭鰭条数,鰓条骨数,および体色などにも,明瞭な差異がないことが判明しました.さらに,ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域の解析も形態形質による結果を支持し,ムラサキシャチブリとタナベシャチブリはシャチブリの新参異名であることが確実となりました.また,Kaga (2016)はシログチシャチブリを A. edentatus Kaga, 2016として新種記載し,Kaga (2017)は南アフリカ沖から知られる A. natalensis Regan, 1921をシャチブリの新参異名としています.このように本属の分類は,まだまだ再検討の余地がありそうです.

 シャチブリは体がゼラチン質でぶよぶよとしており, いかにも深海魚といった風貌です. 本種は土佐湾などの太平洋沿岸, 日本海沿岸, 瀬戸内海, 沖縄舟状海盆などの水深約150–500mの砂泥底に生息します(藍澤・土居内,2013). しかし,神奈川県立生命の星・地球博物館の魚類写真資料ベースには,静岡県の伊豆半島において水深約30 mで撮影された水中写真が登録されています.普段から採集のためによく訪れる高知市御畳瀬漁港においても,しばしばその姿を見かけますが, 長い体をくねらせながら遊泳する姿を私もぜひ一度見てみたいものです.

参考文献

藍澤正宏・土居内龍. 2013. シャチブリ科. 中坊徹次 (編), pp. 410–411, 1845–1846. 日本産魚類検索 全種の同定. 第三版. 東海大学出版会, 秦野.

Bleeker, P. 1853. Nalezingen op de ichthyologie van Japan. Verhandelingen van het Bataviaasch Genootschap van Kunsten en Wetenschappen. 25 (7): 1­56, pl. 1.

Kaga, T., M. J. P. van Oijen, Y. Kubo and E. Kitagawa. 2015. Redescription of Ateleopus japonicus Bleeker 1853, a senior synonym of Ateleopus schlegelii van der Hoeven 1855, Ateleopus purpureus Tanaka 1915, and Ateleopus tanabensis Tanaka 1918 with designation of a lectotype for A. japonicus and A. schlegelii (Ateleopodiformes: Ateleopodidae). Zootaxa, 4027 (3): 389–407.

Kaga, T. 2016. A new jellynose, Ateleopus edentatus, from the western Pacific Ocean (Teleostei: Ateleopodiformes: Ateleopodidae). Zootaxa, 4083 (4): 562–568.

Kaga, T. 2017. Redescription of Ateleopus japonicus Bleeker 1853, a senior synonym of Ateleopus natalensis Regan 1921 (Teleostei: Ateleopodiformes: Ateleopodidae). Zootaxa, 4238(4): 583-592.

望月賢二.1982.シャチブリ科.岡村収・尼岡邦夫・三谷文夫(編), pp. 114–117, 343–344.九州−パラオ海嶺ならびに土佐湾の魚類: 大陸棚斜面未利用資源精密調査.日本水産資源保護協会,東京.

望月賢二.1984.シャチブリ科.益田一・尼岡邦夫・荒賀忠一・上野輝俑・吉野哲夫(編), pp. 438–441, 653–654. 日本産魚類大図鑑. 東海大学出版会, 東京.

Nelson, J.S., T.C. Grande and M.V.H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

岡村収.1985.シャチブリ科.岡村収(編), pp. 438–441, 653–654. 沖縄舟状海盆及び周辺海域の魚類II :大陸棚斜面未利用資源精密調査.日本水産資源保護協会, 東京.

Temminck, C. J. and H. Schlegel 1846. Pisces. Part 14. Pages 245–268 in P.F. de Siebold, ed. P.F. de Siebold’s Fauna Japonica, sive descriptio animalium quae initinere per Japoniam suscepto annis 1823–30 collegit, notis observationibus et adumbrationibus illustravit P.F. de Siebold. Lugduni, Batavorum [Leiden].

山田梅芳・伊東弘.1982. 以西漁場の魚類について.昭和56年度漁業資源研究会議西日本底魚部会会議報告,pp. 59–70.

写真標本:BSKU 36542, 570 mm SL, 土佐湾(高知市御畳瀬漁港で採集),大手繰り網,1982年2月27日.

(泉 幸乃)


2018年2月の魚



トサヒメコダイ Chelidoperca tosaensis Matsunuma, Yamakawa and Williams, 2017(スズキ目ハタ科)

 ハタ科(Serranidae)は世界で75属約560種が知られ,日本からは34属141種が報告されています(瀬能,2013; Nelson et al., 2016; Eschmeyer et al. 2018).そのうち,ヒメコダイ属Chelidoperca Boulenger, 1895には10種が含まれ,国内からはヒメコダイC. hirundinacea (Valenciennes, 1831),ホシヒメコダイC. pleurospilus (Günther, 1880),ミナミヒメコダイ“C. santosi Williams and Carpenter, 2015”,トサヒメコダイの4種が報告されています(瀬能,2013;Matsunuma et al., 2017).なお,ミナミヒメコダイの学名はこれまでC. margaritifera Weber, 1913とされていましたが(赤崎,1972;瀬能,2013),本種に適用すべき学名については今後の検討が必要です.Chelidoperca margaritiferaのホロタイプと同種と同定される追加標本はこれまでのところ知られておらず,原記載以降のC. margaritiferaの記録はすべてC. santosiC. tosaensisなど近似種との誤同定の可能性が高いことが指摘されています(Matsunuma et al., 2017).

 トサヒメコダイは側線有孔鱗数がやや少ないことや色彩的特徴で同属他種から識別されます.また,日本産同属他種のうち,トサヒメコダイは側線から背鰭棘条部の基底までの鱗列が3枚であることでミナミヒメコダイと似ますが,前者は前鰓蓋骨後縁の鋸歯状棘が少ないことや吻に黒斑を欠くことなどで後者と識別されます.トサヒメコダイのホロタイプは高知県の御畳瀬漁港で採集され,本種の種小名は土佐湾に因みます.国内においてトサヒメコダイは,高知県のほかに静岡県,和歌山県,山口県,大分県,長崎県や鹿児島県からも記録されており,国外ではフィリピンにも分布します.標本はおもに底びき網で水深60–302 mから採集さています.ヒメコダイ属魚類は2013年以降,4新種が相次いで記載されており,今後も本属の種数はさらに増える見込みです.

 トサヒメコダイは,駿河湾で採集された個体が静岡県内の水族館で飼育されています.普段,目にする機会のない魚の美しい姿を観察することができるでしょう.


参考文献

赤崎正人.1972.日本産ヒメコダイ属魚類の分類学的再検討.魚類学雑誌,19 (4): 274–282.

Eschmeyer, W. N., R. Fricke and R. van der Laan (eds). 2016. Catalog of fishes: genera, species, references. http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp.

Matsunuma, M., T. Yamakawa and J. T. Williams. 2017. Chelidoperca tosaensis, a new species of perchlet (Serranidae) from Japan and the Philippines, with geographic range extension of C. stella to the northwestern Pacific Ocean. Ichthyological Research, DOI: 10.1007/s10228-017-0604-5

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

瀬能 宏.2013.ハタ科.中坊徹次(編),pp. 757–802, 1960–1971.日本産魚類検索 全種の同定 第3版.東海大学出版会,秦野.

写真標本:BSKU 53312, 82.8 mm SL, ホロタイプ,土佐湾(高知市御畳瀬漁港で採集),大手繰り網,2001年1月21日.

(松沼瑞樹)


2018年1月の魚



ボウズカジカ Ebinania brephocephala (Jordan and Starks, 1903) (スズキ目ウラナイカジカ科)

 ウラナイカジカ科 (Psychrolutidae)は世界で8属約38種が知られ,日本からは6属11種が報告されています (中坊・甲斐, 2013; Nelson et al., 2016). そのうち,アカドンコ属 Ebinania Sakamoto, 1932 には6種が含まれ,日本近海にはボウズカジカ E. brephocephala (Jordan and Starks, 1903)とアカドンコ E. vermiculata Sakamoto, 1932 の2種が分布します (Jackson and Nelson, 2006; 中坊・甲斐, 2013). Ebinania を設立した“Sakamoto”は,松原喜代松博士です(1932年に阪本から松原へ改姓).Sakamoto (1932) の原記載で,本属の和名はエビナカジカ属に,種の和名はエビナカジカにされましたが,後にアカドンコ属とアカドンコへ変更されています(松原, 1955).タイプは岩手沖で岩手水産試験場により採集された1標本で,属名の“Ebina”は標本入手に関係した水産講習所(現,東京海洋大学)動物学教室の海老名謙一博士(後に東京水産大学名誉教授)に献名されたものです.

 ボウズカジカは頭部に小皮弁がないこと,頭部や体側に顕著な斑紋がないこと, 胸鰭鰭条数が17〜19であることで容易にアカドンコと区別できます (矢部, 1983; 中坊・甲斐, 2013). また, アカドンコは体長が30 cm以上にもなる大型種であるのに対し,ボウズカジカは大型個体でも体長15 cm程度にしかなりません (矢部,1984). 本種は海底に依存した底生性魚類で, 本科魚類は生息深度の幅が広く,水深100mほどの浅海から1,600mまでの深海にかけて底曳き網で採集されます (Nelson, 1986). 本種は日本近海のみに分布し, 福島県から高知県にかけての太平洋沿岸, 九州沿岸, および東シナ海から報告され, 高知市御畳瀬魚市場でもしばしば採集されます (矢部, 1983; Shinohara et al., 2005; 目黒•本村,2011; Motomura et al., 2015). 一方,近縁のアカドンコは北日本の太平洋岸沖からの採集例が多く知られています(矢部, 1983).ボウズカジカの採集水深帯は, 福島県から高知県より, 東シナ海でより深く, 本種は分布域が低緯度になるほど, 適水温を求めてより深場へ生息することが示唆されています (目黒•本村, 2011).

 ボウズカジカはその名の通り, つるつるとした坊主頭と, なんとも愛くるしい顔立ちが印象的な深海魚で, 最近では水族館でも飼育され, そのかわいさから水族館での人気者となっているようです(石垣, 2013). 標本とはまた違った, 生きた姿でしか味わえないかわいさを, 一度は観に行きたいものです.


参考文献

石垣幸二. 2013. 深海生物〜奇妙で楽しいいきもの〜. 笠倉出版社, 東京.

Jackson, K. L. and J. S. Nelson. 2006. Ebinania australiae, a new species of fathead sculpin from southern Australia (Scorpaeniformes: Psychrolutidae). Records of the Australian Museum, 58: 37-42.

Jordan, D. S. and E. C. Starks. 1903. Description of a new species of sculpin from Japan. Proceedings of the United States National Museum, 26 (1326): 689-690.

松原喜代松.1955.魚類の形態と検索 II.石崎書店,東京.791-1605pp.

目黒昌利・本村浩之.2011. 鹿児島県野間池沖から得られたボウズカジカ Ebinania brephocephala (カサゴ目:ウラナイカジカ科)の記録. Nature of Kagoshima, 37: 27-29.

Motomura, H., A. Habano, Y. Arita, M. Matsuoka, K. Furuta, K. Koeda, T. Yoshida, Y. Hibino, B. Jeong, S. Tashiro, H. Hata, Y. Fukui, K. Eguchi, T. Inaba, T. Uejo, A. Yoshiura, Y. Ando, Y. Haraguchi, H. Senou and K. Kuriiwa. 2015. The ichthyofauna of the Uji Islands, East China Sea: 148 new records of fishes with notes on biogeographical implications. Memoirs of the Faculty of Fisheries, Kagoshima University, 64: 10-34.

中坊徹次・甲斐嘉晃. 2013. ウラナイカジカ科. 中坊徹次 (編), pp.1189, 2067. 日本産魚類検索全種の同定. 第3版. 東海大学出版会, 秦野.

Nelson, J. S. 1986. Family No. 160: Psychrolutidae. Page 491 in M.M. Smith and P. C. Heemstra. Smiths' Sea Fishes. Macmillan South Africa, Johannesburg.

Nelson, J.S., T.C. Grande and M.V.H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Weily and Sons, Hoboken. xli+707pp.

Sakamoto, K. 1932. Two new genera and species of cottoid fishes from Japan. Journal of the Imperial Fisheries Institute, 27(1): 1-6.

Shinohara, G., T. Sato, Y. Aonuma, H. Horikawa, K. Matsuura, T. Nakabo and K. Sato. 2005. Annotated checklist of deep-sea fishes from the waters around the Ryukyu Islands, Japan. Deep-sea fauna and pollutants in the Nansei Islands. Monographs of the National Science Museum Tokyo, (29): 385-452.

矢部衛. 1983. ウラナイカジカ科. 尼岡邦夫・仲谷一宏・新谷久男・安井達夫 (編), pp. 156-157. 東北海域・北海道オホーツク海域の魚類. Fishes from the north-eastern Sea of Japan and Okhotsk Sea off Hokkaido. 日本水産資源保護協会, 東京.

矢部衛. 1984. ウラナイカジカ科. 益田一・尼岡邦夫・荒賀忠一・上野輝彌・吉野哲夫 (編), pp. 315-316. 日本産魚類大図鑑. 東海大学出版会, 東京.

写真標本:BSKU 94520,  107.6 mm SL, 2008年4月16日, 高知市御畳瀬魚市場, 幸成丸 (大手繰り網), 高知市南方沖, 水深約 270m.

(山本祥代)


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