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全抗菌薬の年間AUDに対する特定抗菌薬の年間AUD比率と抗MRSA薬におけるTDM年間実施率

注射用抗菌薬のうち、特に耐性菌惹起しやすい広域スペクトルを有したカルバペネム系薬および院内感染の主要菌種であるMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)の感染症治療薬である抗MRSA薬を、当院では特定抗菌薬として指定し、厳密な管理を行っている。管理体制として、処方オーダー時に届出制を導入しており、感染制御部およびInfection Control Team(ICT)、病棟担当薬剤師が使用方法のモニターを行い、長期使用に伴う抗菌薬使用量増加の抑制ならびにPharmacokinetics/ Pharmacodynamics(PK/PD)理論に基づいた適正な使用方法の推進を行っている。
抗菌薬使用量サーベイランスとしてWHOが推奨するAntimicrobial use density(AUD)を用いて、全抗菌薬のAUDに対する特定抗菌薬のAUD年間比率を算出しており、この比率を10%以下にコントロールすることを病院の方針と定めている。この指標は、特定抗菌薬の使用量の抑制が出来ていることを示している。
さらに、抗MRSA薬においては治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)を実施することで、PK/PD理論に基づいた薬学的介入を行っている。有効性および安全性確保の観点から、患者個々に適正な抗菌薬治療を遂行するためにTDMは有用であり、TDM年間実施率90%以上を目指している。
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左縦軸に抗MRSA薬のTDM年間実施率(棒グラフ)、右縦軸に特定抗菌薬のAUD年間比率(折れ線グラフ)を年度別に示した。抗MRSA薬のTDM年間実施率として、90%以上を維持できていること、特定抗菌薬のAUD年間比率として、10%以下を維持できていることが、抗菌薬の適正使用推進に繋がるものと考える。

●測定方法

調査対象薬剤は当院採用の注射用抗菌薬であり、カルバペネム系抗菌薬は、イミペネム/シラスタチン、パニペネム/ベタミプロン、メロペネム、ドリペネムの4薬剤であり、抗MRSA薬は、バンコマイシン(VCM)、テイコプラニン(TEIC)、アルベカシン(ABK)、リネゾリド(LZD)、ダプトマイシン(DAP)の5薬剤である。
AUDは、当院採用の注射用抗菌薬の使用グラム数量にWHOで規定する1日平均使用量で除した数値を、月ごとの延べ入院日数で除して、全体に100を乗じた数値とした。特定抗菌薬のAUD年間比率は、全系統注射用抗菌薬の年間AUDに対するカルバペネム系抗菌薬および抗MRSA薬の年間AUDの割合(百分率)とした。
TDMの対象薬剤は、VCM、TEIC、ABKの3薬剤 とし、2日以下の短期投与症例、周術期予防投与および外用薬使用症例を除外した。TDM年間実施率は、年度毎の各薬剤の使用症例数に対するTDM実施件数の割合(百分率)とした。
参考文献
1. Noda K, Ueda A, Kuronuma H, Iwai S, Ito K, Saitoh Y, et al. Long-term monitoring and analysis for changing of selectivity and consumption of antimicrobial drugs estimated with AUD in our hospital I. Jpn J Environ Infect. 2009;24:332–6.
2. WHO Collaborating Centre for Drug Statistics Methodology. Use of ATC/DDD (Internet) 2012.http://www.whocc.no/atcddd/.
3. 日本化学療法学会抗菌薬TDMガイドライン作成委員会,日本TDM学会TDMガイドライン策定委員会―抗菌薬領域―:抗菌薬TDMガイドライン.日化療会誌(2012)60,393-445