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2024年10月の魚


ホシヒレグロハタ Epinephelus corallicola (Valenciennes, 1828)
(スズキ目ハタ科)  

 ハタ科アカハタ属魚類(Epinephelidae: Epinephelus)は背鰭棘数が11,臀鰭軟条数が通常8,腹鰭起部が基本的に胸鰭基底部の直下もしくは後方に位置する,そして口蓋骨歯があるなどの特徴から他属と概ね識別されます(Heemstra and Randall, 1993;瀬能,2013;中村・本村,2022).ただし,これらは日本産の本属と他属を識別できる形質であり,多様な形態をもつ本属魚類では,日本産種に限っても形態的特徴を定義することは困難とされています(中村・本村,2022).これまで Epinephelus にはマハタ属の標準和名が適用されていましたが,Craig and Hastings (2007) によって語幹となるマハタ Hyporthodus septemfasciatus (Thunberg, 1793)やマハタモドキ Hyporthodus octofasciatus (Griffin, 1926)の帰属が Epinephelus から Hyporthodus に変更されたため,中村・本村(2022)により Epinephelus に対して標準和名アカハタ属が提唱され,マハタ属には Hyporthodus が適用されました.アカハタ属魚類はおもにインド・太平洋の熱帯・亜熱帯水域に広く分布し,一部の種は東部太平洋や大西洋にも生息します(Parenti and Randall, 2020).本属には世界で約90種が,日本からは44種が知られています(Parenti and Randall, 2020;中村・本村,2022;本村,2024).

 ホシヒレグロハタ Epinephelus corallicola (Valenciennes, 1828)は,日本,台湾南部からフィリピン,パプアニューギニア,ソロモン諸島,オーストラリア北部までの西太平洋に分布します(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993; Heemstra et al., 2011;瀬能,2013; Hata, 2017).また,日本国内では和歌山県,高知県,日向灘,鹿児島県本土(薩摩半島),そして琉球列島(奄美大島,徳之島,沖縄島,西表島)から記録があります(三浦,2012;瀬能,2013;吉郷,2014; Iwatsuki et al., 2017; Nakae et al., 2018; Mochida and Motomura, 2018;桜井,2019;下瀬,2021;中村,2022;橘・遠藤,2023;大西,2024).

 本種は成長とともに色彩や形態が変化することが知られており,稚魚期(特に体長 30~60 mm)は,頭部体側と各鰭に瞳孔大かそれより大きな白色斑点が散在し,頭部と体側の白色斑点が濃褐色に縁どられるか,白色斑点の上下縁に小さな濃褐色斑点が2個連続するといった色彩的特徴を有しますが,この白色斑点は成長に伴い薄くなり,体長130~140 mmほどで消失します.それと並行して,頭部と体側全体に尾鰭側の上方から頭部側の下方にかけて斜めに配列する濃褐色斑点が形成されます(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993; Heemstra et al., 2011;瀬能,2013;橘・遠藤,2023).また,全長約140~150 mm以上になると,後鼻孔が伸長します(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993; Heemstra et al., 2011;橘・遠藤,2023).これらの特徴は,本種と同属他種を識別する形質となります.

 本種はヒレグロハタ Epinephelus howlandi (Gunther, 1873)と体側や各鰭の地色,体側に瞳孔より小さな褐色斑点が散在するなどの特徴で類似しますが,成魚では吻端が尖る(vs. 尖らず丸みを帯びる),体側の褐色斑点が斜めに配列する(vs. 一様に分布する),腹部,胸部,および胸鰭に褐色斑点がある(vs. ない),間鰓蓋骨と下鰓蓋骨の間に明瞭な欠刻がある(vs. ない),成魚では後鼻孔が伸長する(vs. しない)などの点から識別することができます(瀬能,2013;桜井,2014, 2019;橘・遠藤,2023).

 本種の種小名である「corallicola」は,ラテン語の corallum = corallium(サンゴ)とcolo(住む)の複合語で,「サンゴの住民」を意味しており,英名も「Coral grouper」と,いかにもサンゴ礁の環境に生息するようにみえます(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993; Heemstra et al., 2011;中坊・平嶋,2015).しかし,実際にはサンゴ礁のほかに沿岸浅所の泥底の岩礁や河口付近にも出現し,様々な環境を好むことが知られています(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993; Heemstra et al., 2011;瀬能,2013;吉郷,2014;橘・遠藤,2023). 本種は1993年に沖縄県那覇市公設市場で水揚げされた個体(IOP-3474, 224.7 mm SL)に基づいて,瀬能(1994)により標準和名「ホシヒレグロハタ」が提唱されました.この標準和名はヒレグロハタに似ており,かつ腹部にも斑点が見られるという色彩的特徴に由来します(瀬能,1994).

 近年,本種の分布は北上傾向にあり,昨年は高知県で,今年は和歌山県でそれぞれの初記録が報告され,いずれも越冬の可能性が示されました(橘・遠藤,2023;大西,2024,採集は昨年).そのため,今後はさらに北方の黒潮流域からも本種が記録される可能性があります. 上述のように,本種は和歌山県以南の太平洋や東シナ海沿岸で散発的に記録があるのみで,漁獲量も多くないため,一般にはあまり流通していません.しかし,アカハタ属魚類は食用としての需要が高く,野生個体の漁獲や種苗生産,養殖も盛んに行われているため(Randall and Heemstra, 1991; Heemstra and Randall, 1993; Craig et al., 2011),本種もおいしく頂けるのではないかと思われます.筆者も本種を食したことがないので,ぜひ味わってみたいものです. 無効分散により南方系の魚類が加入してくる秋がやってきました.今年も高知県西南部に足を運び,本属魚類をはじめとした南方系魚種を採集したいと考えています.どのような魚種に出会えるのか楽しみです.

引用文献

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写真標本:BSKU 134703,53.9 mm SL,2023年10月29日,高知県幡多地域,手網.採集・寄贈:難波拓登.展鰭・撮影:橘 皆希・松永 翼.

(橘 皆希)


2024年9月の魚



マメオニガシラ Ostracoberyx dorygenys Fowler, 1934
("スズキ目" オニガシラ科)

   マメオニガシラ Ostracoberyx dorygenysは北部ミンダナオ島沖から得られたホロタイプ標本と18個体のパラタイプ標本に基づき新科新属新種として記載されました(Fowler, 1934).Fowler (1934)は本種の新種記載に際して,露出した頭骨や鱗の状態,対鰭の位置,突出した下顎,そして臀鰭棘が3棘である点から,ヒウチダイ科魚類との類似性を認めました.属名のOstracoberyxはギリシャ語で貝殻や陶器を意味するOstrakonとキンメダイ属を指すBeryxの組み合わせに因みます(Fowler, 1934). その後,Norman (1939)は腹鰭が1棘5軟条,尾鰭主鰭条数が17で,そのうち15本が分枝している点からキンメダイ類とは遠縁で,次の特徴からスズキ科Serranidae(現在はハタ科)に含まれると考え,その中でも前鰓蓋骨の強力な棘からアラとの類似性を示しました:眼窩楔骨と上主上顎骨を欠く,よく発達した眼窩骨の床部をもつ,各側に2骨片よりなる後鎖骨がある,前部の肋骨は椎体から,後部の肋骨は側突起からそれぞれ発する,脊椎骨数が25 (10+15).松原(1955)は Norman (1939)にしたがい本種をスズキ科に含めたうえで,本属のみを含むオニガシラ亜科として扱っています.一方,片山(1984)や波戸岡(1993),Carpenter (1999),Nelson et al. (2016)は,オニガシラ科を復活させていますが,同時に松原(1955)がSerranidaeに含むと考えたハタ亜科やアカメ亜科,スズキ亜科もそれぞれが独立した科として扱われている点を鑑みれば納得のいく気はします.近年の分子系統仮説において,オニガシラ科はヤセムツ科やイシナギ科,ハタンポ科などと共に単系統群を形成するようです(Thacker et al., 2015;Davis et al., 2016;Mirande, 2016;Sanciangco et al., 2016;Ghedotti et al., 2018;Smith et al., 2022;Near and Thacker, 2024).しかし,その中での本科魚類の系統的位置は解析した領域によってまちまちで,ヤセムツ科と単系統群を形成する仮説(Ghedotti et al., 2018)やクシスミクイウオ科と単系統群を形成する仮説(Sanciangco et al., 2016),ホタルジャコ科と単系統群を形成するとする仮説(Thacker et al., 2015;Davis et al., 2016;Smith et al., 2022;Near and Thacker, 2024),そしてムツ科とヤセムツ科の単系統群の姉妹群に当たるとする仮説(Mirande, 2016)があり,今後も新たな系統仮説を注視していく必要がありそうです.

 Matsubara (1939)は駿河湾北東に位置する静岡県沼津市戸田漁港の底曳網において水揚げされた本科魚類2個体を,それぞれオニガシラOstracoberyx fowleri Matsubara, 1939とツノガシラ Ostracoberyx tricornis Matsubara, 1939なる和名と共に新種記載しています.Matsubara (1939)はオニガシラについて同属他種と比較して背鰭第1,2棘が短く,第4棘が背鰭第3棘よりも伸長する,主鰓蓋骨に3棘が認められることなどにより識別できるとしました.しかし,Quero and Ozouf-costaz (1991)はこれらのうち背鰭棘が破損しやすい上,種間の形態的な差異を反映していないため,分類形質として不向きであると評価しました.また,波戸岡(1993)はオニガシラのホロタイプであるFAKU 7272を再調査した結果,主鰓蓋骨の3棘について左体側には3棘を確認したものの右体側には棘がなく,分類形質としての有効性を疑問視しました.このため,オニガシラは種としての有効性を再検証する必要がありそうです.また,Matsubara (1939)はツノガシラO. tricornis について上後頭骨棘が発達することを識別形質に挙げましたが, Quero and Ozouf-costaz (1991)はこの形質を標準体長102 mm以下の小型個体がもつ特徴と判断し,O. dorygenys Fowler, 1934の新参シノニムと考えました.Kamohara (1943)は土佐湾からO. dorygenysを採集し,マメオニガシラの和名を与えました.一方で藍澤(1990)はKamohara (1943)が報告した種は O. dorygenys に類似するが明らかに異なると考え,ニュージーランド北方海域から得られた O. dorygenys に対して新たにホンオニガシラなる和名を与えました.現状として,O. dorygenys に対してマメオニガシラとホンオニガシラという2つの和名が存在しています. Quero and Ozouf-costaz (1991)は,オニガシラ属に西太平洋からインド洋にかけて広域に分布するマメオニガシラ(ないしはホンオニガシラ)と駿河湾のみに分布するオニガシラ,オーストラリア北東沖のみに分布するOstracoberyx paxtoni Quero and Ozouf-costaz, 1991の3有効種を認めています.

 本種は日本国内からは静岡県駿河湾,三重県熊野灘,和歌山県田辺沖,高知県土佐湾沖,鹿児島県甑島,沖縄舟状海盆,国外からは台湾,フィリピン,アンダマン海,ニコバル海,ニューギニア島,ニュージーランドにかけての西太平洋に広く分布するほか,インド南東沖,マダガスカルやザンジバルのインド洋から得られています(Fowler, 1934;Matsubara, 1939;Norman, 1939;Kamohara, 1943,1951,1952;Fourmanoir and Gue´ze´, 1967;山川,1985;大江,1986;藍澤,1990;Quero and Ozouf-costaz, 1991;福井,1999;Suntsov, 2007;Ramachandran et al., 2011;Satapoomin, 2011; Kumar et al., 2017;Koeda, 2019;Kawai et al., 2020;古?ほか,2021). 本科魚類の化石記録は一切知られていないものの,大江(1984)は本科の耳石の産出が期待できる産地として静岡県掛川層群の大日砂層などを挙げています.耳石(扁平石)の形態はほとんど円型に近く,前方の下嘴状突起(Restrum)が僅かに尖ることが特徴です(大江,1986;Kumar et al., 2017). 本属魚類の生活史についてはほとんど何もわかっていないといってよく,これまでの最小の体サイズは標準体長 13.5 mmで12月にニューギニア島北方沖から得られています(Suntsov, 2007). 最後に,本科魚類の大きな特徴ともいえる前鰓蓋骨の強大な棘と幼魚期に発達する上後頭骨の突起は,仔稚魚期のタキゲンロクダイ属やフエヤッコダイ属においても認められているほか,始新世のバートニアン期に棲息していた分類学的帰属不明の謎の魚の化石にも認められています(Carnevale and Bannikov, 2021).前述の現生種2属とオニガシラ科は系統上の近縁性は認められていないため,上記形質は多系統的に獲得され,捕食者から丸のみにされた際の防衛戦略として有効なのでしょう.

引用文献

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写真標本:BSKU 8898, 60.7 mm SL, 1960年3月寄贈,高知県高知市御畳瀬漁港水揚げ,採集:山本晋平,BSKU 134994, 103.4 mm SL, 2023年12月25日, 静岡県磐田市沖,愛知県蒲郡市西浦漁港で水揚げ,第八東海丸, 採集:尾崎行保, 展鰭・撮影:燉恬C真 

(高梨佑真)


2024年8月の魚



イトヒキガンゾウビラメ Taeniopsetta ocellata (Gunther, 1880)
(カレイ目ダルマガレイ科) 

 今月はカレイ目魚類の中では珍しく,背鰭と臀鰭の前方に長い華麗な鰭条をもつイトヒキガンゾウビラメTaeniopsetta ocellata (Gunther, 1880)についてご紹介します.本種はダルマガレイ科イトヒキガンゾウビラメ属に分類されます.ダルマガレイ科 Bothidae は世界の熱帯と温帯の浅海から深海域まで広く分布し,大陸棚の砂泥底に生息しています(尼岡,2016;片山,2022).本科魚類は世界に20属163種が知られ,日本にはまだ標準和名がないものも含めて15属44種が分布しています(尼岡,2016;Nelson, 2016;本村,2024).本科魚類は両眼が左体側にあり,腹鰭が左右不相称で,無眼側の腹鰭第1鰭条が有眼側の腹鰭第2〜4軟条の位置にあり,有眼側の腹鰭基底が無眼側よりも長い特徴をもつことで,近縁の他科と識別できます(中坊・土居内,2013;尼岡,2016;片山,2022).本科の多くの種では,両眼間隔幅や鰭の伸長などに二次性徴による性的二型が知られています(片山,2022).種や性別によっても形態や色彩が異なる種がたくさん含まれているので,とても興味深いグループです.

 イトヒキガンゾウビラメ属 Taeniopsetta は現在2種のみを含み,日本にはイトヒキガンゾウビラメ T. ocellata が分布します(尼岡,2016;Fricke, 2024).本属魚類は本科の他属とは有眼側腹鰭第2鰭条が無眼側腹鰭第1鰭条に相対する(vs.他属では有眼側腹鰭第3-4軟条が無眼側腹鰭第1軟条),有眼側の腹鰭が峡部先端よりも後方から始まる(vs.峡部先端近く),峡部の先端と第1鰭条の幅が腹鰭基底長におおよそ等しい(vs.基底長より著しく短い),そして尾舌骨の下部先端が載形(vs.尖る)などの特徴から他属と識別される(尼岡,2016).また,本属魚類は写真のように背鰭と腹鰭前方の数鰭条が著しく長くなる特徴をもちます.

 イトヒキガンゾウビラメ T. ocellata は,ハワイ近海に分布する同属の Taeniopsetta radula Gilbert, 1905 とは,体高が低く,有眼体側の鱗が円鱗(vs.後者では櫛鱗)で,側線鱗数がやや少ない(95-113 vs. 140),背鰭と臀鰭が雌では伸びない(vs.後者では伸びる),背鰭と臀鰭の始部に白く縁取りされた黒斑がある(vs.ない)ことなどで識別できます(尼岡,2016).本種は体が卵円形で口が小さく,顎の後端が眼の前縁下に位置し,そして両顎には1列の小円錐歯が並びます(尼岡,2009,2016).体色の特徴として,有眼側では全体的に茶褐色で,背縁と腹縁に沿ってそれぞれ4個と3個の顕著なU字状の暗色斑が並び,無眼側では後半部のみが暗褐色から淡褐色へ次第に変わる特徴をもちます(尼岡,2016).本種の仔魚の体はほとんど円形で,背鰭と臀鰭の基部に沿って赤橙色の斑紋が並び,これらは眼の移動前に消失します(尼岡,2009).仔魚は体長60 mm前後で変態して稚魚となり,浮遊生活から底生生活に移行します(尼岡,2009,2016).

 本種は日本では駿河湾以南の太平洋岸,東シナ海,そして九州・パラオ海嶺,国外では台湾,インド・西太平洋,そしてオーストラリア西岸に広く分布し,水深183〜400 mの大陸棚の砂泥底に生息し,おもに底生性の小型動物を食べています(中坊・土居内,2013;尼岡,2016).主に小型底曳網で漁獲される種ですが,日本ではそれほど多く報告がありません(尼岡,2016).実際,高知市の御畳瀬漁港でも2009年以来で,久しぶりに採集された種となっています.本種は漁獲されるとおもに練り物の材料になるそうです(尼岡,2016).


 

 本種の性的二型のうち,鰭条の伸長が最も顕著で,背鰭の前から第12-20鰭条と臀鰭の第1-7鰭条が雄ではよく伸び,雌では伸びません(尼岡,2016).他にも雄は吻端に強い棘をもちますが,雌には棘がないかあっても著しく弱いことがあげられます(尼岡,2016).また,無眼側の体色は雌雄ともに前半部が乳白色ですが,後半部は雄では暗褐色で,雌では淡褐色でやや薄い違いもあります(尼岡,2016).

 本種の標準和名は“ガンゾウビラメ”を含みますが,ヒラメ科のガンゾウビラメPseudorhombus cinnamoneus (Temminck and Schlegel, 1846)とは系統的に大きく異なるため,ダルマガレイ科に分類されています.このように紛らわしい名前や,雄雌で大きく形態や色彩が異なることなど魅力的な魚ですね.さらに,本種の雄の鰭が伸びる形態や無眼側が暗色であることは,個人的にはダルマガレイ科の中でもかなりかっこいい魚だと思っています.ダルマガレイ科魚類にはこのように興味深い魚が他にもいるので,これを機に皆さんも本科の種について調べてみるとよいかもしれません.

参考文献

尼岡邦夫.2009.深海魚―暗黒街のモンスターたち―.ブックマン社,東京.223 pp.

尼岡邦夫.2016.日本産ヒラメ・カレイ類.東海大学出版部,平塚.229 pp.

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片山英里.2022.ダルマガレイ科.中坊徹次(編),pp. 456-457.小学館の図鑑Z 日本魚類館〜精緻な写真と詳しい解説〜.第6刷(補訂).小学館,東京.

本村浩之.2024.日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名.Online ver. 26. (https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/jaf.html) (2 July  2024)

中坊徹次・土居内龍.2013.カレイ目,pp. 1658-1698,2226-2234.中坊徹次(編)日本魚類検索 全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.


写真標本:BSKU 135230, 138.9 mm SL, 高知市沖(33°09′11″N,133°34′01″E),水深300 m,高知県高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),司丸,2024年2月18日,採集・撮影 熊木慧弥.(雄個体の表と裏) 比較写真標本:BSKU 43320, 149.5 mm SL, 高知県高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),幸成丸,1986年10月18日.(雌個体の表と裏)

(水本悠斗)


2024年7月の魚



メジナ Girella punctata Gray, 1835(スズキ目メジナ科)

 今月は釣り人に人気で見た目もカッコよく,食べても非常に美味しいメジナ Girella punctata   Gray, 1835 についてご紹介します.本種はスズキ目メジナ科メジナ属に分類され,鰓蓋後縁が黒くない,両顎歯が2〜3列,上唇が薄く,各鱗の基部に暗色点がない,そして尾柄部が高いことなどで,日本産の同科同属と識別できます(中坊・土居内,2013).因みに,鰓蓋後縁が黒く,両顎歯が1列で、尾柄部が低いものはクロメジナ Girella leonina (Richardson, 1849) に,厚い上唇と生時には体側に黄色い横帯があるものはオキナメジナ Girella mezina Jordan and Starks, 1907 に分類されます(中坊・土居内, 2013).本種は最大で体長60 cm ほどに達します(小西・中坊, 2007).本種を含むメジナ属は,日本では新潟県から九州南岸にかけての日本海と東シナ海沿岸,千葉県外房から九州南岸にかけての太平洋沿岸,瀬戸内海,朝鮮半島南岸,台湾,香港などの西太平洋と東太平洋,オーストラリア南岸,そして東大西洋(1種のみが北西アフリカ沿岸)の温帯から熱帯水域にかけて分布し,沿岸の岩礁に生息しています(中坊・土居内,2013;柳下,2022).

 メジナは全国で呼び方が様々であり,関東では「メジナ」、関西や四国では「グレ」,そして九州では「クロ」と呼ばれます.1960年代に愛媛県西海でクロメジナ釣りが始まり、関西のクロメジナに憧れる釣り人が「尾長グレ」と呼び,従来のメジナを「口太グレ」と呼んだことから,各地方ではクロメジナが「オナガ」,メジナが「クチブト」と呼ばれるようになったとされています(小西・中坊,2007).

 筆者が魚に興味を持ったきっかけがメジナであり,半年ほど前に鮮魚店で購入し捌いた際には内臓に脂肪がべっとり付いており,刺身で食べると油のノリが良く、白子やアラまでとても美味しく頂くことができ、魚の魅力に気づかされた思い出のある魚です。また,スタイリッシュで漆黒のかっこいい姿が筆者に刺さり,今でもお店で見つけたら買ってしまいます。こんなに美味しいメジナですが,季節によっては磯臭さがあり,昔は刺身ではなく味噌漬けなどで食べられていました.しかし,釣り人がオキアミを撒き餌として利用していたことから、海藻類から動物を食べるようになったため,そのままの刺身でも非常に美味しくなったと考えられています(小西・中坊,2007).

参考文献

小西英人・中坊徹次.2007.釣り人のための遊遊さかな大図鑑-釣魚写真大全.エンターブレイン,東京.400 pp.

中坊徹次・土居内龍.2013.メジナ科.中坊徹次(編),pp. 1077, 2039.日本魚類検索 全種の同定. 第三版. 東海大出版会,秦野.

柳下直己.2022.メジナ科.中坊徹次(編),pp. 324-325. 小学館の図鑑Z-日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説-.第6刷(補訂).小学館,東京.

写真標本:BSKU 131232, 91.7 mm SL,  2021年11月21日,高知県香南市塩谷海岸(手結) 水深 0.5-1 m ,手網 ,採集者:井上裕太・熊木慧弥. 

(玉田健太郎)


2024年6月の魚

ナガミミズハゼ種群未同定種 2 Luciogobius sp. 16 sensu Shibukawa et al. (2019)
(ハゼ目ハゼ科)

 ミミズハゼ属 Luciogobius Gill, 1859は,東亜とその近傍に固有のハゼ科魚類であり,体が細長い蚯蚓状で,第1背鰭およびその担鰭骨を欠く(稀にあっても痕跡的),第2背鰭と臀鰭の起点が体の後半部にある,体が無鱗,眼が退縮して小さいといった点を標徴とします(渋川ほか,2019;岡村ほか,2024).本属魚類はおもに海岸や河川に堆積した砂礫の間隙に生息し,これまでに17有効種が記載され,さらに多くの未記載種が知られます(渋川ほか,2019;岡村ほか,2024). ナガミミズハゼ種群未同定種 2 Luciogobius sp. 16 sensu Shibukawa et al. (2019)は,磯に注ぐ細流の礫中を選好し(是枝ほか,2022;岡村ほか,2023),静岡,和歌山,高知,愛媛,宮崎,鹿児島県の各県から記録があります(渋川ほか,2019;是枝ほか,2022;岡村ほか,2023).本種は背鰭総鰭条数が10-13(通常11),臀鰭総鰭条数が12-14,胸鰭軟条数が10-13(通常11か12),胸鰭上部に遊離軟条が発達しない(稀にあってもごく短い)などのことから定義されます(渋川ほか,2019).しかし,これらの計数形質や体色には地域変異があります(是枝ほか,2022;岡村ほか,2023).また,体形や鰭の形状,脊椎骨数等はヒイロナガミミズハゼ Luciogobius sp. 14 sensu Shibukawa et al. (2019)やナガミミズハゼ種群未同定種 1 Luciogobius sp. 15 sensu Shibukawa et al. (2019)に類似するため,本種の分類学的扱いについてはさらなる検討が必要です(渋川ほか,2019).

引用文献

是枝伶旺・古橋龍星・山下龍之丞・本村浩之.2022.九州南部と屋久島から採集された分布南限を更新するナガミミズハゼ種群未同定種 2 Luciogobius sp. 16 sensu Shibukawa et al. (2019) の記録.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 25: 13-26. LINK

岡村恭平・山上竜生・井上裕太・野村彩恵・遠藤広光.2023.高知県から得られたハゼ科7種の記録.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 35: 20-27. LINK

岡村恭平・山上竜生・高橋弘明・甲斐嘉晃・遠藤広光.2024.高知県におけるイドミミズハゼ種群の分布・生息状況および形態的・遺伝的特徴.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 43: 20-37. LINK

渋川浩一・藍澤正宏・鈴木寿之・金川直幸・武藤文人.2019.静岡県産ミミズハゼ属魚類の分類学的検討(予報).東海自然誌,12: 29-96. LINK

写真標本: BSKU 133713,40.6  mm SL,高知県幡多地域,円匙,2023年5月21日,採集・撮影:岡村恭平・山上竜生・橘 皆希.

(岡村恭平・橘 皆希) 


2024年5月の魚

カガミダイ Zenopsis nebulosa (Temmink and Schlegel, 1845)
(マトウダイ目マトウダイ科)

 マトウダイ目マトウダイ科 Zeidae は三大洋に分布し,マトウダイ属 Zeus Linnaeus, 1758とカガミダイ属 Zenopsis Gill, 1862の2 属からなり,7 有効種が認められています(Fricke et al., 2024).本科魚類は体が側偏して体高が高く,口が大きく斜位で前方によく伸び,背鰭と臀鰭の基底には棘状板が並び,臀鰭棘数が3,腹鰭の棘数と軟条数の合計が6,背鰭鰭条が9-10棘で22-26軟条といった特徴をもちます(池田・中坊,2015 ; 和田ほか,2021).また,本科の臀鰭鰭条数はマトウダイ属では4棘20-23軟条に対しカガミダイ属では3棘24-26軟条ですが,側線鱗を除いて鱗がない,背側の骨質棘状板列の始部が背鰭棘条部の後方下部に位置する,上擬鎖骨腹側末端部が深く分枝するなどの特徴で,マトウダイ目の他科と識別されます(Nelson et al., 2016;和田など,2021).
 
 マトウダイ科のうち,カガミダイ属は全世界で5有効種が認められ,日本からはカガミダイ Zenopsis nebulosa (Temmink and Schlegel, 1845)とイトヒキカガミダイ Zenopsis filamentosa Kai and Tashiro, 2019 の2種が知られています(Fricke et al., 2021).また,カガミダイはイトヒキカガミダイとは鰭条数などの計数形質の変異幅が重複しますが,体長に対する吻長の割合(カガミダイでは13.9-17.9 % vs. イトヒキカガミダイでは17.9-20.4 %),背鰭前長の割合(31.5-37.6 % vs. 38.3-45.0 %),最長背鰭鰭条鰭膜の長さ(39.4-128.4% vs.体長の2倍以上に伸長),そして体長 100 mm 以上の個体の腹鰭に3-4 本の黒色横帯(ない vs. ある)などの特徴で識別できます(Kai and Tashiro, 2019;和田など, 2021).さらに,カガミダイは同科のマトウダイ Zeus faber Linnaeus, 1758と比べて,体側の斑紋(目立った斑紋がないvs. マトウダイでは顕著な1個の大型の黒色円形斑紋がある),頭部背縁(湾入する vs.凸状),そして臀鰭棘数(3 vs. 4)で異なります(小西・中坊,2007).

 カガミダイの体は一様に銀色で,頭部背縁が褐色,生時は暗色斑が散在しますが,釣りあげると数十秒ほどで消えて中央の不明瞭な暗色斑1つのみが残ります(石川,2010;池田・中坊,2015).幼魚のうちは体が円形で,体側には暗色斑点が散在します(小西・中坊,2007).写真の個体は体サイズも小さく,多数の暗色斑のある幼魚で,臀鰭と背鰭基底沿いの体側には鋭い棘状板をもちます(池田・中坊,2015). カガミダイは水深 40-800 m の大陸棚から大陸棚縁辺に生息し,日本では北海道から九州南岸の日本海・東シナ海沿岸,瀬戸内海西部,東シナ海大陸棚縁辺,九州-パラオ海嶺に分布する普通種で,国外では北はピーター大帝湾,東はハワイ諸島から天皇海山,南はオーストラリアやニュージーランドまでの太平洋から記録されています(中坊・甲斐,2013).おもに魚類を捕食し,イカ類やエビ類も食べます(波戸岡,2015). カガミダイはカガミ(関東),ギンマト(関東),カガミウオ(高知),キンダイ(福島,富山),シリガサ(富山),そしてギンマテ(静岡)などの地方名で呼ばれます(石川,2010).

 我々が採集の時にお世話になっている高知市の御畳瀬漁港では,ギンマトウと呼ばれます(石川,2010).底曳網で漁獲され,フライや練り物,刺身,惣菜物として利用されます(石川,2010;波戸岡,2015). カガミダイは筆者が初めてさばいた思い出深い魚です.その時にカガミダイの骨の硬さから,私物のセラミック製の包丁を台無しにしてしまい,泣く泣く近くのスーパーにキッチン用のハサミを買いに行きました.カガミダイは様々な調理法で食べることができますが,筆者が特に気に入っているのは塩焼きで,淡白な味でふわふわとした食感は絶品です.


引用文献

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and R. van der Laan (eds.). 2024. Eschmeyer’s catalog of fishes: genera, species, references: https://researcharchive.calademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp.(参照;2024-05-07)

波戸岡清峰.1998.マトウダイ属.小西英人(編),pp. 186-187,釣魚検索.週刊釣りサンデー,大阪.

波戸岡清峰.2020.マトウダイ系マトウダイ目マトウダイ科.中坊徹次(編),p. 180,小学館の図鑑Z日本魚類図鑑〜精緻な写真と詳しい解説〜.小学館,東京.

池田博美・中坊徹次.2015.南日本太平洋沿岸の魚類.東海大学出版部,秦野.xxii+597 pp.

石川皓章.2010.海の魚大図鑑.釣り情報社,東京.400 pp.

小枝圭太.2020. カガミダイ. 小枝圭太・畑 晴陵・山田守彦・木村浩之(編),p. 135 大隅市場魚類図鑑.鹿児島大学総合研究博物館,鹿児島.

小西英人・中坊徹次.2007.釣り人のための遊遊さかな大図鑑-釣魚写真大全.エンターブレイン,東京.400 pp. 

中坊徹次・甲斐嘉晃.2013.マトウダイ科,中坊徹次(編),pp. 600,1901-1902.日本魚類検索 全種の同定.第3版.東海大出版会,秦野.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed John Wiley and Sons, Hoboken. xli+707 pp.

和田英敏・伊藤正英・木村浩之,2021.薩摩半島南西沖から鹿児島県初記録のイトヒキカガミダイおよび近縁種であるカガミダイの標徴の再評価.Ichthy, Natural History of Fish of Japan, 13: 43-49.

写真標本:BSKU 135679,73.6 mm SL,2024年4月5日,高知県高知市御畳瀬漁港,底曳網(大手繰り網),司丸,採集:熊木慧弥,写真撮影:肥後寛太郎.

(肥後寛太郎)


2024年4月の魚


サクラダイ Sacura margaritacea (Hilgendorf, 1879) (スズキ目ハナダイ科)

 4月頭の高知大学朝倉キャンパスでは満開のヤマザクラ Cerasus jamasakura,そしてソメイヨシノ Prunus x yedoensis が咲き乱れ,期待に胸を膨らませた一回生を迎えました.今回はそんな桜の名を和名に冠する魚を紹介します.

 サクラダイ属Sacura Jordan and Richardson, 1910 は体の前方が側扁し,背鰭棘条数が10,背鰭軟条数が14-18,臀鰭棘条数が3,臀鰭軟条数が7,胸鰭軟条数が16-18,側線有孔鱗数が26-30,舌上に歯板を欠き,背鰭棘条部中央が背鰭軟条より低い,腹鰭先端が伸長する,尾鰭が三日月型で上下の端が伸長する,標準体長に対する体高の割合が41-50%,および第1鰓弓下枝の鰓耙数が22-30などの特徴の組み合わせで容易に同科他属と区別されます(Heemstra and Randall, 1979;瀬能,2013).そして,日本国内にはサクラダイ Sacura margaritacea (Hilgendorf, 1879) のみが標本に基づき報告されています(瀬能,2013;本村,2024).また,サクラダイ属は従来ハタ科に属していましたが,近年の分子系統学的研究により,現在はハナダイ科に含められています(中村・本村,2022).

 サクラダイは日本,韓国,台湾,ニューカレドニアから知られ,日本国内からは茨城県,相模湾(タイプ産地)から鹿児島県の太平洋沿岸,種子島,伊豆大島,八丈島,小笠原諸島,京都府伊根町から北九州北西岸の日本海沿岸から報告されています(Hilgendorf, 1879;田中,1921; 蒲原,1950;菅野ほか,1980;瀬能,2013;田代ほか,2017;Koeda, ,2019;Kim et al., 2020;岩坪,2022など).高知県では古くから漁や釣りの外道として親しまれ,オタマコロシ(須崎),オウキダイ(柏島),ウミキンギョ(白崎),そしてキンギョウオ(田邊)と,地域によって様々な地方名が付けられています(蒲原,1950).

 ハナダイ科魚類は雌性成熟の性転換を行うことが知られ,多くの種では雌雄で体の模様が大きく異なることから容易に性別が判定できます.サクラダイも例外ではなく,雄のサクラダイは体の地色が紅色で,真珠色の桜の花弁の様な斑紋が散在し,背鰭の第3棘条と第3軟条が伸長し,腹鰭が赤い特徴をもちます.一方,雌のサクラダイは体の地色が淡い桃色で,背鰭棘条部の後半に黒色斑があり,腹鰭の先端が赤く縁取られることで容易に見分けられます.しかし,雌雄間での顕著な模様の差違から,雌雄がそれぞれ別種と考えられていた時代もあり,雄がサクラダイ S. margaritaceaに,雌がオオゴンサクラダイ Sacura pulcher (Steindachner and Do¨derlein, 1883) にそれぞれ分類されていました.(田中,1921;黒田,1931).Okada (1965a, b)は生殖腺の組織学的研究により,駿河湾から得られた合計421個体のうち,標準体長が110 mm 以下の個体のほとんどが雌,110 mm 以上の個体のほとんどが雄,そして110 mm から120 mm までの個体が雄雌の中間型と報告しました.加えて,本種の生殖腺における性転換は,産卵後の性休止が進む間に,卵巣内の卵子を含む卵巣薄板が退化し,それと同時に卵巣内に存在していた精巣原基が成長して精巣が卵巣腔を埋めて進行すること解明しました.また,Okada (1965a, b)は本種が性転換を行う時期を初夏としましたが,その後鈴木ほか(1974)はスクーバ潜水の調査でその時期を12月から4月までと推定しました.自然下おいて,サクラダイは水深15-48 m に生息し,少数の大型の雄と多数の雌,ごく少数の中間型からなる発達した群れを作ります(鈴木ほか,1974).この非常に美しい姿から,サクラダイはダイビングや水族館での人気が非常に高く,ハナダイ科の中では普通種であるため,出会う可能性が高い種といえるでしょう.筆者自身もこの美しいサクラダイを自宅で鑑賞するため,冬の相模湾に出向いた懐かしい記憶があります(写真).

 この春に高知大学周辺で咲いた桜は,開花日の翌日から降り続く雨により儚く散って行きました.しかし,魚研では偶然もちこまれた1匹のサクラダイにより美しい桜を鑑賞することができました.皆様も水族館やダイビングでサクラダイを見かけられた際には,桜の花弁を身に宿しながら海中を泳ぐ美しいサクラダイに花見の思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

参考文献

舟橋正隆.1998.茨城県沿岸の魚類相.茨城県自然博物館研究報告,(1): 75-96.

Heemstra, P. C. and J. E. Randall1979.A revision of the anthiinae fish genus Sacura (Perciformes: Serranidae) with descriptions of two new species. J. L. B. Smith Institute of Ichthyology Special Publication, (20): 1-13.

Hilgendorf, F. M. 1879. Einige Beitra¨ge zur Ichthyologie Japan’s. Sitzungs-berichte der Gesellschaft Naturforschender Freunde zu Berlin, 1879: 78-81.

岩坪洸樹・伊東正英・山田守彦・本村浩之(編).2022.薩摩半島沿岸の魚類.鹿児島水圏生物博物館,枕崎市.鹿児島大学総合研究博物館,鹿児島市.329 pp.

蒲原稔治.1950.土佐及び紀州の魚類.高知県文教協会,高知.288 pp.

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中村潤平・本村浩之.2022.ハタ科 Serranidae とされていた日本産各種の帰属,および高次分類群に適用する標準和名の検討.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 19: 26-43.

Okada. Y. K.1965a.Sex reversal in the serranid fish, Sacura margaritacea. I. Proceedings of the Japan Academy, Series, 41(8): 737-740.

Okada. Y. K.1965b. Sex Reversal in the Serranid Fish, Sacura margaritacea. II. Proceedings of the Japan Academy, Series, 41(8): 741-745.

Reinboth, R. 1963. Naturlicher Geschlechteswechsel bei Sacura margaritacea (Hilgendorf) (Serranidae). Annotationes Zoologicae Japonenses, 36 (4): 173-178.

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田中茂穂.1921.日本産魚類図説 第31巻,pp. 559-582, pls. 142-144.丸善,東京.

田城文人・鈴木啓太・上野陽一郎・船越裕紀・池口新一郎・宮津エネルギー研究所水族館・

甲斐嘉晃.2017.近年日本海南西部海域で得られた魚類に関する生物地理学 的・分類学的新知見―再現性を担保した日本海産魚類相の解明に向けた取り組み ―.タクサ,(42): 22-40.

写真標本:BSKU 133926, 101.1 mm SL, 2023年6月18日,高知県室戸市佐喜浜沖,釣獲:饗場空璃, 展鰭・撮影:饗場空璃,BSKU 133932, 83.5 mm SL, 2023年6月18日, 高知県室戸市佐喜浜沖, 釣獲:饗場空璃, 展鰭・撮影:饗場空璃

(饗場空璃) 


2024年3月の魚  

アカササノハベラ Pseudolabrus eoethinus (Richardson, 1846) (スズキ目ベラ科)

 スズキ目ベラ科(Labridae)はおよそ76属675種を含み,日本では約50属150種が記録されています(馬渕,2022;Fricke et al., 2024).本科は魚類の中では多様性の高い科のひとつとして知られ,世界の熱帯から温帯海域に広く分布しています(馬渕,2022;Fricke et al., 2024).本科魚類には身近な種も多く,釣りで簡単に採集されるほか,多くの種が刺身や焼き物,煮付けなど様々な料理方法で食すことができます(小西,2007).今回紹介するアカササノハベラ Pseudolabrus eoethinus (Richardson, 1846) もその例外ではなく,釣りの対象や食用魚として親しまれています(小西,2007).

  ササノハベラ属魚類(Pseudolabrus)は日本ではアカササノハベラ P. eoethinusとホシササノハベラ P. sieboldi Mabuchi and Nakabo, 1997の2種が知られ,アカササノハベラは頭部最下部の暗色縦線が胸鰭基部に達する,成魚の体側には明瞭な白色点がないことからホシササノハベラと識別できます(島田,2013).これらの2種はもともとササノハベラ1種として扱われていましたが,Mabuchi and Nakabo (1997) により2種に分けられ,ホシササノハベラが新種として記載されました.アカササノハベラは岩礁を好み,伊豆から小笠原諸島,館山から屋久島の太平洋沿岸,福井県から九州西岸の日本海と東シナ海沿岸.済州島,そして中国シナ海沿岸に分布しています(馬渕,2022).

 アカササノハベラは,釣魚としては普通種で,経験の浅い筆者でも釣ることができました.その個体は標本にしたため食べることはできませんでしたが,ベラ科の中では味が良くホシササノハベラとともに西日本では食べられているようです(小西,2007).今度手に入れる機会があれば,私も食べてみたいと思います.

参考文献

Fricke, R., W. Eschmeyer and J. D. Fong. 2024. Catalog of fishes. https://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/SpeciesByFamily.asp

小西英人.2007.釣り人のための遊遊さかな大図鑑‐釣魚写真大全.エンターブレイン,東京.400 pp.

Mabuchi, K. and T. Nakabo. 1997. Revision of the genus Pseudolabrus (Labridae) from the East Asian waters. Ichthyological Research, 44: 321-334.

馬渕浩司.2022.ベラ亜目ベラ科.中坊徹次(編),pp. 330-339.小学館の図鑑Z日本魚類館.補訂.小学館,東京. + 524 pp.

Richardson, J. 1846. Report on the ichthyology of the seas of China and Japan. Report of the British Association for the Advancement of Science, 15th meeting, 1845: 187-320.

島田和彦.2013.ベラ科.中坊徹次(編),pp. 1088-1136, 2045-2056.日本産魚類検索全種の同定,第3版.東海大学出版会,秦野.

写真標本:BSKU 133298, 147.7 mm SL, 土佐湾赤岡沖,釣り,2023年4月11日,採集者 熊木慧弥・松永 翼・津野義大.

(澤入圭吾)


2024年2月の魚 

ギス Pterothrissus gissu Hilgendorf, 1877(ソトイワシ目ギス科)

 ギスは最大で体長60 cmに達する深海魚で,千島列島太平洋沖および樺太南岸のオホーツク海,北海道周辺から本州,九州までの日本海側と四国を含む太平洋側,東シナ海,台湾,そして九州パラオ海嶺に分布し,およそ水深200 mから1,000 mに生息します(山田ほか,2007;Shubin et al., 2014;畑ほか,2017;波戸岡,2018;Dyldin and Orlov, 2021).ギスは頭が尖って眼が大きく,口は下付きで,細長い体がくすんだ銀色の鱗に覆われています(畑ほか,2017;波戸岡,2018).本種は鱗が剥がれやすいため,底曳き網で漁獲されると写真個体のように,ほとんどの鱗が落ちて体が白くなります.ギスの姿はスズキ目キス科のシロギスに似ていますが,系統的には両者は遥かに遠く離れています.ギスでは胸鰭が体の下方で,腹鰭が体の中央あたりに位置し,真骨魚類の中でも原始的なグループの特徴をもちます.また,ギスの背鰭は1つで基底がとても長く,背鰭が2つに分かれるシロギスとは異なります.

 ギスが含まれるカライワシ類(Elopomorpha)は,近年の分子系統解析によりレプトセファルス幼生(葉形仔魚)をもつことが共有派生形質になると判明し,カライワシ目,ソトイワシ目,ソコギス目,そしてウナギ目の4目は単系統群とされています(Dornburg et al., 2015; Betancur-R et al., 2017).ギスが属するソトイワシ目 (Albuliformes)の単系統性は以前から議論され,最近の分子系統仮説ではソトイワシ属 Albula とギス属 Pterothrissus が側系統群であることが示されました(Dornburg et al., 2015).その系統仮説に従うなら,カライワシ類内の他の3目との系統関係から,ギス科はソトイワシ目には含めずに,独立のギス目に分類することになります.ギス属 Pterothrissus Hilgendorf, 1877は現在1属1種とされ,以前に同属とされ東大西洋に分布するNeoossis belloci (Cadenat, 1937)は別属に分けられました(Hidaka et al., 2017).ギス属にはよく似た特徴をもつ絶滅属 Istieus Agassiz, 1844が知られ,これを有効属としてPterothrissus Hilgendorf, 1877の古参異名とみなす研究者もいます(例えば,Nelson et al., 2016).しかし,この異名関係は多くの研究者に支持されず,Pterothrissus は現在も有効属として使用されています(藍澤・土居内,2013;Dornburg et al., 2015;Fricke et al., 2024).

 カライワシ目とソトイワシ目の葉形仔魚は大きく二叉した尾鰭をもち,ソコギス目とウナギ目のものとは明瞭に異なります(望岡,2014).ギスの葉形仔魚は最大で標準体長194.5 mmの個体が報告され(通常は 180 mm 程度),カライワシ類では中程度の大きさです(塚本,1998;Tsukamoto, 2002;望岡,2014;望岡・小嶋,2014).ソトイワシ科の葉形仔魚は情報が少ないようですが,ギスの仔魚はソトイワシ属とは筋節数(ギスでは101から110 vs. ソトイワシ属では68から78)で識別できます(Tsukamoto, 2002;望岡,2014).ギスの仔魚から稚魚への変態期では,体長がおよそ80 mmまで体が一旦縮み,成魚と似た体型の稚魚になるとふたたび体が大きくなります(塚本,1998;望岡・小嶋,2014).

 ギスはドイツ人の動物学者で古生物学者でもあるフランツ・マルティン・ヒルゲンドルフ博士(Franz Martin Hilgendorf, 1839-1904)により,東京市場で採集された1標本をもとに新属新種として記載されました(中坊・平嶋, 2015).ヒルゲンドルフ博士は,明治時代の1873年に来日し,1876年まで第一大学区医学校(翌年に東京医学校と改称)で博物学を担当し,日本で初めて動物学を講義した「御雇外国人教師」のひとりで,日本の魚類学にも大きく貢献した人物です(矢島,1997;磯野,2007).日本産魚類の36種を記載し(4新属新種と2新亜属新種を含む),そのうち25種が有効とされています(坂本・阿部,1997;Nakae and Matsuura, 2022).ギスの属名Pterothrissusのpteroは翼(=鰭)+ thrissos魚の一種の組み合わせで,東京市場での呼び名(東京近郊の地方名)が種小名gissuと標準和名になっています(中坊・平嶋,2015).

 土佐湾では,ギスは高知市御畳瀬漁港の大手繰り網で稀に漁獲されます(蒲原,1950).神奈川県の小田原では,江戸時代から明治にかけて,相模湾で大量に漁獲されたギス(地方名ではオキギス)が高級蒲鉾の主要な原料となっていました(岡田,2008).それ以降にギスの資源量が激減したようですが,相模湾では現在も延縄漁で専門漁師が漁獲しています(LINK 1: 鈴廣のウェッブページ内, LINK 2).近年では千葉県や福島県で多く漁獲されていました(山田ほか,2007).現在はどうでしょうか?一度,土佐湾産のギスのすり身の天ぷらを試してみたいところです.

引用文献

藍澤正宏・土居内龍.2013.ギス科.中坊徹次(編), pp. 236, 1781.日本産魚類検索全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

Betancur-R, R., E. O. Wiley, G. Arratia, A. Acero, N. Bailly, M. Miya, G. Lecointre an G. Orti. 2017. Phylogenetic classification of bony fishes. BMC Evol. Biol., 17: 162 (40 pp.) DOI: 10.1186/s12862-017-0958-3

Dornburg, A., M Friedman and T. J. Near. 2015. Phylogenetic analysis of molecular ad morphological data highlights uncertainty in the relationships of fossil and living species of Elopomorpha (Actinopterygii: Teleostei). Mol. Phylogenet. Evol., 89: 205-218. LINK

Dyldin, Yu. V. and A. M. Orlov. 2021. Annotated list of ichthyofauna of inland and coastal waters of Sakhalin Island. 1. Families Petromyzontidae―Salmonidae. J. Ichthyol., 61: 48-79.

Fricke, R., W. N. Eschmeyer and R. Van der Laan. 2024. Catalog of fishes: genera, species, reference: https://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/catalog/fishcatmain.asp. Accessed 29 February 2024. 

畑 晴陵・岩坪洸樹・本村浩之.2017.奄美大島から得られたギス科魚類ギス.Nat. Kagoshima, 44: 37-40.

波戸岡清峯.2018. ギス科.中坊徹次(編), p. 63. 小学館の図鑑Z 日本魚類館.小学館,東京.

Hidaka, K., Y. Tsukamoto and Y. Iwatsuki. 2017. Neoossis, a new genus for the eastern Atlantic long-fin bonefish Pterothrissus belloci Cadenat 1937 and a redescription of P. gissu Hilgendorf 1877 from the northwestern Pacific. Ichthyol. Res., 64: 45-53.

磯野直秀.2007.第1章 日本における動物学の黎明期.毛利秀雄・安来貞雄(編),pp. 9-29.日本の動物学の歴史.日本動物学会(監),シリーズ21世紀の動物科学.培風館,東京.

蒲原稔治.1950.深海の魚族.日本出版社,大阪.204 pp.

望岡典隆.2014.葉形仔魚(カライワシ目,ソトイワシ目,ソコギス目,ウナギ目),カライワシ目,ソトイワシ目,ソトイワシ科.沖山宗雄(編),pp. 2-5. 日本産稚魚図鑑 第2版.東海大学出版会,秦野.

望岡典隆・小嶋純一.2014.ギス科.沖山宗雄(編),pp. 5-7. 日本産稚魚図鑑 第2版.東海大学出版会,秦野. 

中坊徹次・平嶋義宏.2015.日本産魚類全種の学名 語源と解説.東海大学出版部,秦野.xvi + 372 pp.

Nakae, M. and K. Matsuura. 2022. Ichthyology and collection building in Japan. Pages 33-60. K. Kai, H. Motomura and K. Matsuura, eds. Fish diversity of Japan. Evolution, Zoogeography, and conservation. Springer, Singapore.

Nelson, J. S., T. C. Grande and M. V. H. Wilson. 2016. Fishes of the world. 5th ed. John Wiley and Sons, Hoboken. xli + 707 pp.

岡田 稔.2008.かまぼこの科学,新訂.成山堂書店,東京.ix + 283 pp.

坂本一男・阿部宗明.1997.第3章 大学の誕生―御雇外国人教師と東京大学の創設.ヒルゲンドルフが記載した日本産魚類.東京大学創立120周年記念東京大学展.学問の過去・現在・未来 第一部 学問のアルケオロジー.https://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/1997Archaeology/03/30500.html

Shubin, A. O., N. S. Vanin and A. A. Koinov. 2014. Larvae of Pterothrissus gissu (Albilidae) in temperate waters of the northwestern part of the Pacific Ocean. J. Ichthyol., 54: 223-232.

塚本洋一.1998.カライワシ目魚類(Elopiformes)の変態様式と葉形仔魚型変態における進化的位置.魚類学雑誌,45: 65-75.LINK 

Tsukamoto, Y. 2002. Leptocephalus larvae of Pterothrissus gissu collected from the Kuroshio-Oyashio transition region of the western North Pacific, with comments on its metamorphosis. Ichthyol. Res., 49: 267-269. 

矢島道子.1997.第3章 大学の誕生―御雇外国人教師と東京大学の創設.ヒルゲンドルフと日本の魚類学.東京大学創立120周年記念東京大学展.学問の過去・現在・未来 第一部 学問のアルケオロジー.https://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/Publish_db/1997Archaeology/03/30400.html

写真標本:BSKU 92882, ca. 340 mm SL, 土佐湾,高知市御畳瀬漁港(大手繰り網),幸成丸,2007年12月17日,採集・撮影 中山直英,.

(遠藤広光) 


2024年1月の魚


ナンヨウボウズハゼ  Stiphodon percnopterygionus Watson and Chen, 1998
(ハゼ目ハゼ科)

  ハゼ科ボウズハゼ亜科Sicydiinaeは三大洋のおもに熱帯から亜熱帯の島嶼域から9属100種以上が知られ,河川の上流から中流域に生息します(瀬能ほか, 2021;前田,2018).本亜科魚類は両側回遊魚で,左右の腹鰭が癒合した吸着力の強い肉質の吸盤をもつことが特徴です(前田,2018). その語幹を為すボウズハゼ属 Sicyopterus Gill, 1860のボウズハゼ Sicyopterus japonicus (Tanaka, 1909)は,高知県出身の日本魚類学の父・田中茂穂博士により,高知県産の標本を基に新種記載された種です.標準和名は土佐弁「ぼうずごり」に由来し,草食で吻が丸いという特徴がよく捉えられています.

 ナンヨウボウズハゼ属 Stiphodon Weber, 1895は,成魚の体長2〜6 cm 程度と小型の種が多く,上顎に細かいへら状歯が密に並び円錐状歯がないのが特徴で,インド太平洋に30種以上,本邦にはコンテリボウズハゼ S. atropurpureus (Herre, 1927),トラフボウズハゼ S. multisquamus Wu and Ni, 1986,カキイロヒメボウズハゼ S. surrufus Watson and Kottelat, 1995,ナンヨウボウズハゼ S. percnopterygionus Watson and Chen, 1998,ハヤセボウズハゼ S. imperiorientis Watson and Chen, 1998,ヒスイボウズハゼ S. alcedo Maeda et al., 2012,ニライカナイボウズハゼ S. niraikanaiensis Maeda, 2013の7種が分布します(Keith et al., 2015;Maeda et al., 2015;前田,2018;瀬能ほか,2021).

 ナンヨウボウズハゼ S. percnopterygionus は日本,台湾,および中国からフィリピンやミクロネシアにかけて分布し,本邦ではおもに南西諸島と小笠原諸島でみられるほか,浮遊仔魚期に黒潮によって分散するため,日本本土でも静岡県以南の太平洋沿岸各地から散発的に記録されています(Yamasaki et al., 2007;明仁ほか,2013;前田,2018;瀬能ほか,2021).本種は河川の中流域や渓流域下部に生息し,流れの緩やかなところを好み,淵や平瀬の転石上に群がります(瀬能ほか, 2021).沖縄島での産卵期は5月から12月で,孵化後の仔魚は降海して99±16日の浮遊期を送り,約1.2〜1.4 cmで遡上して着底し,約 2 cmで成熟すると推測されています(Yamasaki et al. 2007;前田,2018).雄の体色は変化に富み,婚姻色の雄は頭部が空色に輝き,体は小型個体が黒色と空色,大型個体は多くの場合には橙色です(前田,2018).

 「ナンヨウ」ボウズハゼはインドネシアやマレーシアにまでは分布せず,同属他種に比べればさして南方系の種ではありませんが,「南洋」という語の響きと,その名への期待を裏切らない鮮やかな体色に惹かれた人は多いはずです.四国でも高知県幡多郡や徳島県海部郡といった黒潮の影響を強く受ける地域では,夏から秋にかけて無効分散と考えられる個体が出現します(渋谷・高橋,1999;大塚ほか,2010;井藤ほか,2021).我々も去年は3個体,一昨年は約10個体を観察することができました(岡村ほか,2023a;岡村,未発表).本種の魅力はむしろ,その長い浮遊仔魚期から本属魚類で最も北に流れ着き,温帯に住む我々がもつ,南洋への憧憬の念を満たしてくれることにあるのではないでしょうか.四国の南端で小川の淀みに青い輝きを見出したとき,「あぢまさ(ビロウヤシ)の島も見ゆ」とお詠みになられた仁徳天皇や(「古事記」参照),伊良湖岬で椰子の実を拾った柳田國男(島崎藤村「椰子の実」参照)と同じ思いを馳せることができます.

 そして,黒潮に洗われる土佐の地では,大海原を介して南洋さらには南溟の島々とつながっている以上,これからも未知の南方系ハゼが流れ着く夢を見ることができるでしょう.たとえばこの一年ほどの筆者らの調査では,高知県から南方系を中心とした10種のハゼが追加で記録されました(岡村ほか,2022,2023a,2023b).今年も新たなハゼとの邂逅に期待したいものですね.「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 沙魚(はぜ)の仔一つ 波に幾月」.


引用文献

明仁・坂本勝一・池田祐二・藍澤正宏.2013.ハゼ亜目.中坊徹次(編),pp. 1347-1608, 2109-2211.日本産魚類検索 全種の同定.第3版.東海大学出版会,秦野.

井藤大樹・難波拓登・庄野耕生.2021.徳島県初記録のナンヨウボウズハゼ.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 15: 10-16.

Keith, P., C. Lord and K. Maeda. 2015. Indo-Pacific sicydiine gobies. Biodiversity, life traits and conservation. Socie´te´ Francaise d’Ichtyologie, Paris. 256 pp.

前田 健.2018.ボウズハゼ類.中坊徹次(編),pp. 396-401.小学館の図鑑 Z 日本魚類館 精緻な写真と詳しい解説.小学館,東京.

Maeda, K., H. D. Tran and H. H. Tan. 2015. Discovery of a substantial continental population of the subfamily Sicydiinae (Gobioidei: Gobiidae) from Vietnam: taxonomic revision of the genus Stiphodon from the western South China Sea. Raffles Bulletin of Zoology, 63: 246-258.

岡村恭平・津野義大・冨山陽聖・遠藤広光.2022.高知県初記録のカマヒレマツゲハゼ.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 27: 7-10.

岡村恭平・津野義大・冨山陽聖・遠藤広光.2023a.高知県大月町から得られた北限を含む四国初記録の南方系通し回遊魚 4 種(タニヨウジ,セスジタカサゴイシモチ,タネカワハゼ,アカボウズハゼ).Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 29: 1-8.

岡村恭平・山上竜生・井上裕太・野村彩恵・遠藤広光.2023b.高知県から得られたハゼ科 7 種の記録.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 35: 20-27.

大塚高雄・野村彩恵・杉村光俊.2010.四万十川の魚図鑑.ミナミヤンマ・クラブ,東京.163 pp.

瀬能 宏・鈴木寿之・渋川浩一・矢野維幾.2021.新版日本のハゼ.平凡社,東京.584 pp.

渋谷雅紀・高橋弘明.1999.高知県で採集されたナンヨウボウズハゼ.伊豆海洋公園通信,10 (1): 5.

Yamasaki, N., K. Maeda and K. Tachihara. 2007. Pelagic larval duration and morphology at recruitment of Stiphodon percnopterygionus (Gobiidae: Sicydiinae). Raffles Bulletin of Zoology Supplement, 14: 209-214.

写真標本: BSKU 134802,21.9 mm SL,雄,高知県幡多地域,手網,2023年11月12日,採集・撮影:橘 皆希・岡村恭平・松永 翼:BSKU 134631,24.6 mm SL,雌,高知県幡多地域,手網,2023年10月18日,採集・撮影:岡村恭平・和田一歩. 
 
(岡村恭平)

 

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