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遺伝子機能解析学

研究室紹介

最近私達は、抗アルツハイマー病因子BRI2、BRI3を選択的にユビキチン化して分解へと導くNRBP1-ユビキチンリガーゼ複合体(NRBP1-E3)を発見しました。そこで、新規認知症治療薬の創出を目指して、NRBP1-E3の基質認識サブユニットNRBP1とBRI2/BRI3間の相互作用を特異的に抑制する阻害剤の開発に取り組んでいます。

研究内容

アルツハイマー病(AD)は認知症の原因疾患として最も頻度が高いが、根本治療法は存在せず、その開発が急務です。アミロイド前駆体タンパク質(APP)結合タンパク質であるBRI2とBRI3は、アミロイドβ(Aβ)の産生、分解、凝集、および糖尿病の発症と同病へのAD合併に深く関与する膵島アミロイドポリペプチド(IAPP; 別名アミリン)の分解、凝集、の複数の過程を制御することにより生理的な抗AD因子として機能します(図1の❶〜❺)。

また、BRI2遺伝子の片方のアレルの変異は、正常BRI2タンパク質量の減少によるAβ産生の亢進を招き、AD類似の臨床症状と神経病理学的所見を示す遺伝性の家族性英国型認知症(FBD)並びにデンマーク型認知症(FDD)の発症原因になります。さらに、AD発症初期患者の海馬においてもAPPと結合しているBRI2タンパク質量の減少が認められることから、ADの発症にもBRI2の抗AD機能の低下が関与している可能性が示唆されています。

最近私達は、NRBP1を基質認識タンパク質としてもつユビキチンリガーゼ複合体(NRBP1-E3)がBRI2とBRI3を選択的にユビキチン化してプロテアソームによる分解へと導くことを発見しました。また、神経系細胞におけるNRBP1の機能阻害が、細胞内BRI2/BRI3タンパク質量の増加と共にAβ産生量の有意な減少を誘導することを明らかにしました(Yasukawa T., Aso T. et al. Cell Rep. 2020)。以上より、NRBP1とBRI2/BRI3間の相互作用を特異的に阻害する化合物を開発すれば、両BRI因子の抗AD機能を人為的に活性化させることが可能となり、ADに対する根本治療薬の創製に資するのではないかと着想しました(図1)。

そこで私達は、新規AD治療薬の開発候補品の創出を目指して、(1)NRBP1とBRI2/BRI3間の相互作用を特異的に阻害する化合物の探索、(2)ヒット化合物を基盤にしたリード(新薬候補)化合物の探索および医薬品開発に向けた最適化、(3)ADモデルマウスを用いたリード化合物の有効性の検証、等の課題に取り組んでいます。以上の研究により、多様な作用機序に基づく抗AD作用を一括して活性化し、ADの発症・進行の抑制に加え、糖尿病におけるAD合併の抑制にも有効な画期的新薬の開発が可能となることが期待されます(表1)。

【現在の研究テーマ】

1) 抗アルツハイマー病因子BRI2/BRI3のユビキチン化阻害による新規認知症創薬

2) NRBP1-ユビキチンリガーゼの機能とアルツハイマー病の病態との関連の解析

スタッフ紹介

役職名・所属 氏名 詳細
教授 麻生 悌二郎 研究者総覧へ
講師 安川 孝史 研究者総覧へ
高知大学医学部 遺伝子機能解析学

高知大学医学部 遺伝子機能解析学

TEL:088-880-2279(2280・2579)

FAX:088-880-2281